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花井祐介やバリー・マッギーが柿落とし。日本のカルチャーを紹介する〈T&Y GALLERY〉がLAにオープン

  • 2023.9.13
花井祐介やバリー・マッギーが柿落とし。日本のカルチャーを紹介する〈T&Y GALLERY〉がL.Aにオープン

日本のカルチャーの発信を標榜するギャラリーがLAダウンタウンに

BRUTUS

LAのアートディストリクトにギャラリーをオープンさせたきっかけから教えてください。

栗田裕一

自分のカルチャーや嗜好とリンクするLAで、いつかアートギャラリーをやりたいと思っていたんです。そもそも僕は洋服からアートへ傾倒していったので、アートの捉え方がファッションっぽいんです。価格はまるで違うけどフォトTの延長みたいに。日本のアーティストやカルチャーをもっとカジュアルに、LAの人たちに見てもらいたいというのが、そもそものきっかけですね。

花井祐介

そうだったんだ!そこまでとは思ってなかった(笑)。栗田くんから、いいギャラリーをLAでつくるんで、やらない?って誘われて、「じゃあ、やりましょうか」って、そんな感じ。

T&Y GALLERY LA
ロサンゼルスには珍しいレンガづくりの倉庫をリノベした〈T&Y GALLERY〉はダウンタウンのアートディストリクトに位置する。
ハービー・フレッチャーによるサーフボード作品
ハービー・フレッチャーによるサーフボード作品。ハワイのクラシックボードをモダンにリファインさせたデザインで。
サーフシャックは花井祐介の展示には欠かせないアイコンのひとつ
サーフシャックは花井祐介の展示には欠かせないアイコンのひとつ。フィギュアのとなりのサーフボードはバリーによるもの。

栗田

ギャラリーはいいスペースと立地というのは大事です。ボクはギャラリストとしての経験も少ないので、スペースで価値が決まると思ってました。小さなギャラリーだと、アーティストもやりたいとは思わないだろうし。そういう意味ではアートディストリクトのこの物件に巡り会えたのはラッキーでしたね。

花井

大きいとは聞いていたんですが、去年の6月に仕事のついでに下見に来たら、ものすごくデカくて、埋まるかなって感じでした。これだけの空間は日本にはないスケールですから。最初はボク一人でやってくれって言われたんですが、こんな広いところ埋められないから、ハービー(・フレッチャー)さん(西海岸のサーフレジェンドにして、アートマスター)を誘って2人展にしようかって話になったんです。

花井祐介+ハービー・フレッチャー+バリー・マッギー、ストリートアイコンによるトリプルワークス

トリプルワークスによる作品
トリプルワークスによる作品は4本のペイントされたサーフボードとエントランスに飾られた、オープニングの象徴とも言える描き下ろし。
トリプルワークスのイメージソースとなったフライヤー
トリプルワークスのイメージソースとなったフライヤー。展示は「SHAPESHIFTER」と名付けられた。日本語で“妖怪”だが、特に深い意味を込めたわけではないという。
ハービー・フレッチャーのインスタレーション バリー・マッギーのシグネチャーともいえるコラージュ
左/壊れたサーフボードで作ったハービー・フレッチャーのインスタレーション。右/バリー・マッギーのシグネチャーともいえるコラージュ。Courtesy of the artist and perrotin
ハービー・フレッチャー
ハワイ・ワイメアの波をイメージして、ワイメアビーチの赤土でそめたハービーの作品。誰かに北斎の「神奈川沖浪裏」といわれ、「ほんとだ」ってことに。

栗田

僕は花井くんがファーストコールだったんで、もちろんソロでいいと思っていたんです。なのであとは丸投げ(笑)。でも、気がついたらハービーさんに、バリー・マッギーさんまで加わって、とんでもないメンバーが集まって、夢みたいな話ですよね。2人ともカリフォルニアを代表するアーティストで、これ以上ない流れになっていったんです。

花井

ハービーさんに声をかけらたら、「おお、いいね!じゃあ、バリーも呼ぼうか」ってあっさり言うんです。「俺が頼めば大丈夫だ」って。西海岸のタテ社会にびっくりです(笑)。僕はそもそもバリーの大ファンで、憧れのアーティスト。サンフランシスコに住んでいた2003年〜2004年は、街中にバリーのグラフィティがあって、見かけるたびに写真を撮っていたくらいですから。

メインアーティストの花井祐介と〈T&Y GALLERY〉主宰の栗田裕一。トリプルワークスの作品を囲んで。〈SHAPESHIFTER〉とは妖怪。

BRUTUS

3人の競作というと、どの作品になるんですか?

栗田

エントランスの展示タイトル横に飾った絵画作品とサーフボードです。サーフボードはハービーさんがシェイプしたもの。花井くんはボードに直接絵を描き、バリーはディケール(和紙に手描きしたものをグラスファイバーでコーティング)を手掛けました。

花井

3人でやるんだから、サーフボードに絵でも描こうかっていう、いたって西海岸的な感じでした。エントランスの絵はイベントのポスターみたいに競作できないかってことだったので、ボクが左側をポスター通りに描いて渡したら、あとは2人が好き勝手にやりはじめて、全くコントロール不能でしたね。あっ、会場に作ったビーチハウスも新作で競作でした。ボクが作った小屋にハービーさんがビーチハウスから持ってきた流木やヤシの葉などの材料をあしらって、小屋の中のコラージュは友達の作品を飾ったものです。仕上げにバリーさんが持ってきた古いサーフボードを置いて完成。

自由に見てもらうことで空想が膨らむ花井祐介作品

ギャラリーのオープニング用の新作は全部で11点。自身のライフワークともいえるシリーズ「オーディナリー・ピープル」で。

栗田

花井くんには、特定のお題を投げたりしませんでした。自由に好き勝手に描いてもらいたかったんですよね。結果、上がってきた作品はギャラリーの大きさに合わせて、F100号(1,303×1,620mm)、S120号(1,940x1,940mm)とかなりの大きいものになりましたね。

花井

ボクの作品はいつものオーディナリー・ピープルというか、これといってギャラリーのオープニングを意識したテーマとかはないですが、11点すべて新作です。

栗田

オープニングだからって肩肘張らない。そんな花井くんの姿勢が居心地がいいんです。そもそもギャラリーに来てくれるお客さんには普段の花井くんを見せたいですし。

花井

自由に見てもらうことが、ボクにとってはいちばん嬉しいことなんです。なので、ボクは自分の作品をあまり説明したくないんです。作品にタイトルもつけませんし。絵を見る楽しみがなくなるような気がするんですよね。知らない方が想像も膨らみますし。実際、ボクもそうやって空想しながら絵を楽しむ方ですから。

BRUTUS

おふたりの今後の予定とかあれば聞かせてください。

栗田

このオープニング展のあとは、ノグチ・イサムのヴィンテージの〈AKARI〉を使ったインスタレーションを予定しています。

花井

展示の予定はちょこちょこ入っていますが、もうちょっとサーフィンができればと(笑)。バリーさんは、今マリブにサーフィンに行ってて、まだ戻ってこないんだけど。そんな感じでやれればと。

栗田

パーティまでに戻ってくるかな?

花井

心配だね(笑)。

オープニングパーティはLAのストリートカルチャーの奥深さを見せつけるように大盛況のうちに終了した。その中にはポートレート・ドローイングのリッチ・ジェイコブス、ミュージシャンでありアーティストでもあるティム・カー、そして日本から駆けつけた藤原ヒロシの姿もあった。マリブでのサーフィンを終えたバリー・マッギーはパーティにはぎりぎり間に合ったものの、サインを求めるファンたち、ひとりひとりに丁寧に対応するあまり、ギャラリー内に入れぬままパーティは終了。いかにも西海岸らしい結末の夜となった。

ポスターにサインするハービー・フレッチャー
ポスターにサインするハービー・フレッチャー。
アーティスト3人競作のサーフボードをしげしがと眺めるパーティに集ったゲスト
アーティスト3人競作のサーフボードをしげしげと眺めるパーティに集ったゲスト。
アーティストのティム・カー
パーティに現れたミュージシャンでアーティストのティム・カー。この作品のモデルとなっている。
花井祐介、藤原ヒロシ、栗田裕一、ハービー・フレッチャー、バリー・マッギー
右から花井祐介、藤原ヒロシ、栗田裕一、ハービー・フレッチャー、バリー・マッギー。バリーはサインを求めるファンへの対応でパーティ会場には辿り着かなかった。

Information

T&Y GALLERY

住所:821-823 E 3rd Street,Los Angeles,CA 90013 U.S.A.
営:11:00〜18:00
休:日・月曜休
HP:www.tandygallery.com/

profile

花井祐介(アーティスト)

はない・ゆうすけ/1978年、神奈川県生まれ。カウンターカルチャーとサーフカルチャーに傾倒した作風と独自の筆致で日常の一場面を切り取る世界観を確立。VANS、NIXONなどのグローバルなクリエーションでも活躍。

profile

栗田裕一(T&Y GALLERY代表)

くりた・ゆういち/1977年、東京都生まれ。ビームスを経て、アパレルをベースに活動する中で、アートに傾倒する。2021年東品川・寺田倉庫に〈T&Y Projects〉を主宰後、2023年8月ロサンゼルスに〈T&Y GALLERY〉をオープン。

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