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「今日は映像なしで声だけで」と言いながらウェブ会議の最後に入ってくる…若手の微妙なマナー違反を直す秘策

  • 2023.9.11

ビジネスマナーができていない若手社員はどう指導すればよいのか。人材育成コンサルタントの松崎久純さんは「会社に取り組む意思があれば、対策を講じるのは難しくない。若手社員には、ビジネスマナーの研修として、本来のやり方はこうですと、演習を交えて説明することになる」という――。

オンライン打ち合わせの態度が悪い

長いパンデミックの期間を経て、社会人(特に若手の人材)のビジネスマナーの質が低下した気がします。たとえば、打ち合わせをオンラインで済ませるのは当たり前という態度。まだこれは許せるとしても、開始時、終了時のあいさつや、打ち合わせ中の振る舞いには、合格点を出せない人が多くなったと思います。このように感じる私は古いのでしょうか――50代の管理職の方からのご相談です。

パンデミックの間は、それまで毎年行われていた(新入社員研修などの)階層別研修も見送りになることが多かったのですが、実施された際には、「Web会議システムを使ったオンラインでの打ち合わせ」のマナーの指導を……という依頼が数多くありました。

どうやら会社内の多くの人たちから、研修の担当者に、そうした要望が相次いでいたようです。

どんな点が気になるのかを尋ねると、次々に例が挙げられます。

カメラに自分の姿を正面から映さず、斜め45度くらいから映して、聞くときも話すときも(自分のPCの画面を見たままで)、カメラの方を見ない人がいる。
話しながら平気で頭を掻いたり、到底仕事中に使うものと思えない巨大なマグカップで何かを飲み出す人がいる。
カメラに向いたまま、遠慮なくあくびをする人がいる。

一番若い社員が、ミーティングに最後に入ってきて、「私、今日は映像なしで、声だけで……」と言い、他の従業員が「???」となったことがある、等々。話は延々と続きます。

あくびをする女性
※写真はイメージです
例外的に許されていたことが今も残っている

オンラインで打ち合わせなどをする慣行は、あっという間に一般的になりました。そして、同時にマナーに反する使い方も随分と横行しました。

パンデミックが終わった現在も、オンラインで打ち合わせをする慣行は引き継がれています。そして、「パンデミックの期間中、多くの人がオンラインでの打ち合わせに不慣れだとして、許されていたマナーの悪さ」も、残念ながら残ったままのようです。

今年度(2023年度)は、パンデミックがはじまった2020年以降に入社した社員向けに「オンラインでの打ち合わせマナー講座」を研修メニューに加えてほしいという依頼が多くあります。

パンデミックの間に入社し、入社当初からオンラインで仕事をするのが当たり前だった社員が、パンデミック期間中に例外的に許されていたこととわからず、不適切な振る舞いを続けている。そんなことが多いからです。

録音、録画への意識が気になる

「オンラインでの打ち合わせマナー講座」の内容は、ごく基本的なことが中心になります。時間を厳守すること、姿勢、話し方、打ち合わせの準備に関することなどです。

実際のところ、対面での打ち合わせのマナー講座と、大きく変わることはありません。

しかしながら、オンラインでの業務に関連したことで、私個人も気になることに、若手人材の「録音、録画に関する意識の持ち方」があります。

オンラインの打ち合わせは、簡単に録画でき、当日参加していない人のために、録画されていることも多いわけです。

そのためパンデミックの期間中は、録画(あるいは録音)を当然してもよいことのように扱っていた職場も多いのですが、そのために「録画、録音は行ってよいもの」と勘違いしている若手の人材が多いように見受けられます。

本来そうしたことは、映像に映る人たちに、録画する理由や録画後の管理の仕方などを説明した上で、事前に許可を得て行うものですが、平気で無許可で行ってしまう。その後の管理のことなどは、何も考えていないように見えることがあります。

あまりに意識が低く思えるのですが、なぜかそれを平然と行う人がいるのです。

それに対して、「ちょっと待ってください。これはなぜ録画が必要なのですか」と尋ねるのも、はばかられる雰囲気のことも多いのです。

勝手に録音や録画をすることは、たいへんに失礼なことです。

良識のある人なら、パンデミックの間でも無許可でやっていたことではありません。しかし、近年の混乱で、そんな行為が間違っていないことのように見えていた面がありました。

面倒だからと説明を割愛したり、許可など求めない人も存在したのです。

そんな悪しき習慣を継続している。これはパンデミック後にビジネスマナーの質が低下したと感じる一つの例です。

タブレット画面上に映るビジネスマン
※写真はイメージです
ビジネスメールの書き方のマナーが直らない

パンデミックの期間中に乱れ、現在も直っていないことには、他にもたとえば、ビジネスメールの書き方のマナーがあります。

2020年以降に入社した社員の中には、上司や先輩から指導を受けていなかったことが原因で、ビジネスメールの使い方に不適切な点の目立つ人が多いように見えます。

長い間、マナーを身につけることなく、業務に携わってしまったことから、少し指導すれば大丈夫というレベルではなく、一から学び直さなくては改善が難しいと思えるケースもあります。

対面でないと注意がしにくい場合も…

文章の書き方はもちろんですが、それ以前の問題に思えることも多いのです。

一通のメールの中に、いくつもの異なるフォントが使われている。受取人の宛名や、あいさつ文などを、他の複数のメールからコピー&ペーストしてきて、フォントはそれぞれそのままにしているようなケースです。

文字の級数もバラバラになっているなど、まったく会社からの指導を受けていないと思える文章の書き方をする若手の人材が目につきます。

上司や先輩も、毎日事務所で顔を合わせていれば、アドバイスもしやすいのですが、在宅勤務でオンラインでのコミュニケーションがほとんどとなると、なかなか指導も難しくなります。

マナーを知らない新人に指導をしようとしても、たとえば、その新人があまり素直に話を聞くタイプでなかったり、あるいは理解がわるかったりすると、少なくとも対面でなくては、話もしにくくなるわけです。

そうした経緯もあり、上司や先輩からの指導は、どうしても疎かになりがちでしたが、その中でビジネスメールの書き方も、多少の間違いがあっても仕方のないこととして扱われてきたように見えます。

そして、パンデミックが終わってからも、多くの若手社員がビジネスメールのルールやマナーを学ぶことなく業務にあたっています。

メールマーケティングの概念
※写真はイメージです
上司や先輩がどう感じているのかを伝える

こうした問題について、会社組織として取り組める改善策を考えてみましょう。

まずは上記のような現象をパンデミックの期間中、あるいはパンデミック後にできた問題として、シリアスに捉え、向き合います(改善活動では、このような組織による「コミットメント」が必要になります)。

そして、ビジネスマナーに問題のある若手社員に、上司・先輩が何をどのように感じているかを伝えます。

この取り組みは、特に難しいことでないにしろ、片手間では片づけられないのを認識したいところです。

会社では、たとえば外線からの電話に出たときに、まずは「お電話ありがとうございます」と述べるという取り決めすら、全員に順守させるのは容易でないことが多いのです。

簡単そうに見えることでも、実施して定着させるには、それなりの労力が必要になります。

まずは気になる点の洗い出しを

社内で研修を行うのがお勧めですが、その際には「準備」が大切になります。

まずは上司・先輩たちが、ビジネスマナーの教育を十分に受けていない若手社員について、気になる点を洗い出して、取りまとめます。

この際には、担当者がメールでアンケートを取り、それをまとめるという安易な方法ではなく、しかるべき人たちが集まって話し合いをします。挙げられた点をあいさつ、電話応対、ビジネスメールの書き方、ミーティングでの態度などのテーマに分類することになるでしょう。

そして、それらに改善のテーマとして扱う際の優先順位をつけていきます。

こうした段階から外部業者に協力を依頼する場合でも、丸投げすることなく、十分に相談をしましょう。

上司や先輩たちには、さまざまな想いがあっても、研修の担当者が熱心でないケースもありますから、要注意です。

「○○さんが、これが大事と言っていたのでカバーしてください」「○○課長は○○にこだわっていたので、これも」と、皆が話し合って決めたはずの「改善の全体像」を無視して注文してくる人もいます。

それだと本筋から外れてしまうとか、時間が足りなくなると説明しても、「何とか、どうにかしてください」の一点張り。こんな担当者はめずらしくありません。

一般的な階層別研修と異なり、カスタムメイド的なつくり込みが必要ですから、このあたりは丁寧に進めたいところです。

男性社員からの研修を受ける女性社員
※写真はイメージです
例を用いた演習が効果的

会社に取り組む意思があれば、対策を講じるのは難しくありません。

若手社員には、ビジネスマナーの研修として、本来のやり方はこうですと、演習を交えて説明することになります。

その研修のために、コツをご紹介しましょう。

それは前出の「選出したテーマ」それぞれについて、(パンデミック中に会社内で実際にあった)例を用いて演習を行うことです。

たとえば、ビジネスメールの書き方では、上司や先輩が気になったものを(書き手の許可を得て)、受講者全員に見せます。

前出のフォントや文字級数が統一されていないメール文は、皆に見せると、自ずと彼ら自身が、おかしいと思う点を指摘しはじめます。すべてを正しく指摘できるとは限りませんが、これが最も効果を期待できるやり方です。

間違っているところ、修正の仕方を一方的に教えるのではなく、受講者にグループを編成してもらい、各グループで話し合い、発表してもらいます。

これをすることで、誰がどんな理解をしているかも把握できるものです。

また、このグループワークは団体行動を上手にするための訓練になります。これがパンデミックの間に実施できなかったことでもありますから、このグループワークから学ぶことは多いはずです。

これに付け加えるとすれば、受講者である若手社員からは、ふんだんに質問を受け付け、上司や先輩からは、十二分な受け答えをすることでしょう。

改善策は必ずある

パンデミックの期間中は、皆が几帳面にマスクをしたり、外出も自粛するといったルールにしたがって、人々のモラルが向上したように見えていたのに、パンデミックが終わると、逆に「あれっ」と思うことがある。

「人と直接接しない」期間が終わったら、その期間中にでき上がった「好ましくない習慣」が残ってしまった。

このように感じることのある人は、少なくないようです。

ほとんどは、もともとマナーを守れない人がしていることかもしれませんが、パンデミック中に根づいた「好ましくない習慣」が直らないとすれば、それはあまりに残念なことです。

社会人のビジネスマナーについては、改善策は存在しているものです。ぜひ相談者の方の懸念も解消されることを願っています。

松崎 久純(まつざき・ひさずみ)
サイドマン経営・代表
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』『英語で学ぶトヨタ生産方式』など多数。

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