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海の幸と山の幸に恵まれた三崎で、旬を味わう

  • 2023.9.11
左/左から、タイ風の甘酸っぱいサラダ、、ベトナムの333ビール、茗荷とトマトの肉豆腐 右/〈朝めし あるべ〉のたまごかけごはん定食

朝めし あるべ

早朝から三崎を楽しむなら、朝ごはんは欠かせない。三崎漁港から目と鼻の先にある〈朝めし あるべ〉に行けば、魚を使った朝定食が6時から食べられる。ほかほかの炊きたてごはんに、脂の乗ったアジやサバなどの魚料理、三浦野菜をたっぷり使った日替わりの小鉢に汁物。三崎の海の幸と山の幸をいっぺんに味わえる定食だ。

朝めし あるべの定食
定食の基本セットはあるべ米の他、日替わりの汁物、野菜付け合わせ、酢の物・漬物。この日はトマトと油揚げの味噌汁、トマトと玉ねぎのごまポン和え、塩昆布とおかかのポテサラ、三浦野菜のあるべだし、梅干し。メインは魚を中心に8品から選ぶ。こちらはあじのひもの定食1,000円。
朝めし あるべのたまごかけごはん定食
三浦市にある山本養鶏場の卵を使った、たまごかけごはん定食800円。味付け海苔と一緒に。
朝めし あるべのまぐろのホホのひもの定食
希少なまぐろのホホ肉のみりん干しは、地元の干物屋から仕入れている。まぐろのホホのひもの定食(小さめ)1,000円。

小鉢の“だし”には三崎では定番の野菜、コリンキー入り。生でも食べられるかぼちゃの一種で、ポリポリとした食感とほのかな甘味が特徴だ。“あるべ米”と呼んでいる噛みごたえのあるごはんは、千葉の農家から取り寄せた五分づき米と白米を混ぜて炊いているという。魚料理のいちばん人気は、なかなかお目にかかれない「まぐろのホホのひもの」。噛むとジュッと旨味が溢れ出し、ごはんが進む。

カウンターで腕をふるうのは、三崎生まれ三崎育ちの店主、菊地未来さん。昔から地元を盛り上げたかった菊地さんは、自分に何かできることはないか考え、人を呼ぶために空き家を使った宿泊施設を増やそうと考えた。大学院まで建築を学び、修了後は鎌倉のゲストハウスで2年間修業。横須賀市役所で設計の仕事を担当したのち、三浦市のトライアルステイ事業の交流会に参加したことで、「移住支援」という新たな目標に出合った。

店主の菊地未来さん。合同会社MISAKI STAYLEの代表として三崎に点在する空き家、空き店舗、空き蔵の有効活用を考え、移住者の相談やサポートを行う。

市役所を辞め、1960年代に建てられた簡易船員宿を借り、1カ月のお試し移住を始めた。1階の台所は飲食を始める人のためのトライアルキッチンとしても貸し出した。予約の入らない早朝に朝ごはんを出してみようと思い立つ。

「せっかく三崎に泊まっても、素泊まりだと朝食を食べる場所がない。だからちょうどいいと思ったんです。自分が生まれ育ってずっと食べてきた地元の家庭料理にしようと思って、干物やマグロ、新鮮な野菜をたっぷり使った定食を作ることにしました。実は三浦は江戸時代から農業が盛んな土地なんですよ。海風による自然のミネラルが土壌を育てるのか、畑は年中動いているんです」

元簡易船員宿だった店舗。その昔、三崎ではマグロ漁に赴く漁師たちのために、あらかじめ自宅に船員用の部屋を用意し、期間限定で貸し出すしくみがあったのだという。2階の客室で1カ月のお試し移住ができ、1階中央のキッチンは滞在者だけでなく三崎で飲食業を始める方々のトライアルにも貸し出し、間借り営業が可能だ。

生まれ育った街を活気づけるべく、活動を続ける菊地さん。まもなくシェアハウスもオープンする予定だという。

「三崎は半島の先っちょということもあって、各地からいろんな人が集まってくるんですよね。港町だから昔から人の出入りも多いし、人間関係はさっぱりしていて、適度な距離感があると思います。自由度も高いし、何か新しいことを始めるにはぴったりな場所だと思います。新しく三崎にやってくる人たちを応援しています」

Information

朝めし あるべ

住所:神奈川県三浦市三崎5-1-10
TEL:046-876-8492
営:6:00~10:00
休:月・火

3204bread&gelato

海辺で食べるデザートはまた格別。花暮岸壁沿いにあるジェラートショップで、トロピカルミックスとミックスベリーのジェラートをダブルで注文し、カンカン照りのなかで食べるのも良し。

左は白桃をアニスとシナモンでコンポートにした白桃スパイス。右はマンゴー、パッションフルーツ、パイナップル、バナナを混ぜたトロピカルミックス。ダブルで550円。

ひとすくい食べれば、果物の甘みがじゅわっと広がる。ここ〈3204bread&gelato〉は、ミシュランガイドのビブグルマンに選ばれたこともある鎌倉のビストロ〈OSHINO〉と、三崎口駅近くに店を構える三浦半島を代表するパン屋〈充麦〉がタッグを組んだ人気店だ。常時ミルクやココナッツ、アールグレイ、白桃スパイスなど約12種類のジェラートを揃えており、どのフレーバーも素材の味ががつんと感じられる濃厚さ。

3204bread&gelato 外観
花暮岸壁の角にある、「3204」(サンニーゼロヨン)の暖簾が目印。
3204bread&gelato 店内
イートインスペースも完備。コーヒーやアイスティーの他に、ワインやエルダーフラワーなども揃える。
〈充麦〉のパン
〈充麦〉のパンも購入できる。小麦の香りを味わいながら、ひと口ずつ噛み締めて食べたい。

なかでもイチオシは〈充麦〉のデニッシュにピスタチオのジェラートをサンドしたデニッシュ コン ジェラート。ピスタチオのコクに、デニッシュの小麦の風味と、練り込まれたオレンジピールが絶妙に合う。さっくり焼き上げたデニッシュはオーダー時に温めてくれるので、アツアツとひんやりの組み合わせも楽しい。とろけるジェラートをすくいながら食べよう。

デニッシュ コン ジェラート760円。噛むたびに小麦が香るデニッシュ生地はさすが〈充麦〉。シチリア島プロンテ産ピスタチオのコクも最高。

Information

3204bread&gelato

住所:神奈川県三浦市三崎3-12-10
TEL:046-854-4642
営:月・木 12:00~17:30、金〜日 11:30~17:30
休:火・水

たべごとや みなと

港近くの路地裏を覗くと、古びた一軒家に〈たべごとや みなと〉のネオンサイン。暖簾をくぐると一見小料理屋のようだが、ショーケースには多国籍なおばんざいがズラリと並んでいる。ここは姉の柴崎朱里さんと妹の岩崎楓さんが営むアジア料理店。三浦の食材を使った、オリジナルのアジア料理が食べられる。

おばんざいが鮮やかなショーケース
カウンターから連なる、おばんざいが鮮やかなショーケース。
食べごとや みなと 店内
かつてはおばんざい屋やマグロ料理店だった店内。〈食べごとや みなと〉の店名は、「食べごと」は“食べること全般”を指し、「みなと」は二人の地元がみなとみらいで、今も港町に住んでいるから。

ふたりは横浜出身。三崎との縁ができたのは、祖母が三崎の老人ホームに入ったのを機に、母が近所に移住したことだった。

「私もしょっちゅう通うようになって、すごくいいところだなあと。それで〈朝めし あるべ〉さんのトライアルキッチンを使って間借りの料理屋を始めたら、『お店を始めちゃえば』と背中を押してくれて、この物件を紹介してくれたんです」

まず朱里さん(左)が三崎に越し、楓さん(右)も遅れてやってきた。二人が好きな台湾やベトナムなどのアジア料理を織り交ぜ、レシピを考えている。

そう話す朱里さんは、いつか自分で店を持ちたいと考えていた。姉妹それぞれアジア系のレストランのキッチンで働いていたこともあり、一緒にアジアテイストの店を開くことにした。10年間にわたり空き家だった店舗を〈朝めし あるべ〉のオーナーで創業支援などの活動も行っている『misaki stayle』に改装してもらい、店内の家具や装飾は都立大学にある〈TOKYO DANCE.〉にセレクトしてもらった。2022年に店舗をオープン。ベースにしているのは日本の家庭料理だという。

「アジアと日本の家庭料理をかけ合わせたら面白いんじゃないかと思ったんです。三崎って下町で、おじいちゃんやおばあちゃんが多いので、完全にアジアに振ってしまうと入りにくいかなというのもあって、和に寄せて、地元の人に愛される感じにしたいなあって。使っている野菜はほとんど三浦のものです。安くて豊富だし、今は夏野菜がとってもおいしいんですよ」

左から、タイ風の甘酸っぱいサラダ、、ベトナムの333ビール、茗荷とトマトの肉豆腐
左から、タイ風の甘酸っぱいサラダ、トウモロコシのソムタム550円。ベトナムの333ビール750円。三浦牛と三浦豆腐を使った茗荷とトマトの肉豆腐750円。
ピーマンとちくわのレモングラスオイル和え、小アジのナンプラー南蛮、ジャックコーラ
給食の時間にならったメニューをアレンジしたという、ピーマンとちくわのレモングラスオイル和え550円。ナンプラーの風味に玉ねぎとセロリのシャキシャキ感がたまらない、小アジのナンプラー南蛮650円。熟成酒かす入りのクラフトコーラで作るジャックコーラ850円。
ドリンクメニューもバラエティに富んでいる。メニューの紙は知り合いのデザイナーに作ってもらったオリジナル。

トウモコロシのソムタムも、茗荷とトマトの肉豆腐も、どの料理も、直売所や知り合いの農家から仕入れた地の野菜をふんだんに使っている。アジア料理の素材になることで、三浦野菜のひと味違う魅力が引き出されている。

移住から1年が過ぎたが、食を通じて横の繋がりが生まれた。三崎の街を盛り上げようとご近所の飲食店やアタシ社のミネさんと共に夜のイベントを計画したり、三浦や湘南エリアの美味しい野菜の魅力を伝えるクラブ活動「seaside vegetable club」もこっそり動いている。海には魚、山には野菜が溢れる、恵みの街。新たな食の担い手が増えた今、三崎はこれからもおいしくなり続ける。

Information

たべごとや みなと

住所:神奈川県三浦市三崎2-16-3
TEL:046-876-6370
営:木~土 11:30~14:00、18:00~22:00 水 18:00~22:00
休:日~火
Instagram:@tabegotoya_minato

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