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そもそも「ファインミネラル」ってなんですか?〈USK MINERALS〉代表・内田佑介に聞く

  • 2023.9.10
ファインミネラルのイラスト

Q1 どんなものが「ファインミネラル」と呼ばれますか?

鉱物は、地球の悠久の歴史の中で奇跡的に産出されます。その鉱物に学術的、科学的な資料という側面からアプローチするだけではなく、優れたアート作品のように、芸術性の高さと美しさ、稀少さに価値を見出すコレクションの文化があります。そうしたコレクションの対象となる鉱物が「ファインミネラル」と呼ばれます。

まるで人の手で作られたような造形やビビッドな色合い、共生する鉱物とのバランスによって独自の世界観を凝縮したかのような標本は、文化や年代を超えて人々の心を強く魅了し、近年世界的に人気が高まっています。

Q2 どんな鉱物種が多いですか?

鉱物の種類は、現在約5000種。毎年新しい鉱物が発見され認定されています。中でもルビー、エメラルド、サファイアなどのカラフルな宝石鉱物や金、銀などの誰もが知る鉱物の結晶は特にファインミネラルとしても人気が高いです。ほかにもクォーツ、フローライト、カルサイトなど世界中で産出される鉱物は結晶のバリエーションや色が豊かで世界中のコレクターに人気です。鉱物は結晶にほかの鉱物が内包されることもあり、それらも人気があります。

キラキラした鉱物のイラスト

Q3 どのような造形美が好まれますか?

何をもって美しいとするかは人それぞれなので主観的になってしまいますが、ファインミネラルと呼ばれる標本にはある特徴があります。それはマトリックスと呼ばれる母岩と結晶とのバランスです。

母岩に結晶がどのように配置されているかや、共生する鉱物や、色のコントラストが見どころになる立体的な芸術作品のような標本は特に評価が高く、美しいものとされます。また鉱物の結晶系は種類によってある程度規則性がありますが、イレギュラーな形で産出されることもよくあり、あえてそうしたものを選んで集めていく、というコレクターもいます。

紫の鉱物のイラスト

Q4 発色には、どんなクオリティが求められますか?

一般的に強く明るい色が出ているものは特に評価が高くなります。鉱物に色がつく要因は様々ですが、一例としてその化学組成の中の元素から来ていることがあります。例えば、ロードクロサイトはマンガンを含むことにより赤い色になり、アズライトは銅により青い色になります。同じトルマリンという鉱物でも含まれる元素により、様々な色彩を見せるのもコレクターにとって魅力的です。また一見暗く見えてもライトで照らすことで中に驚くほどの色が隠れているのがわかることもあります。多色性や変色性のある鉱物も人気です。

Q5 結晶の質感などのポイントは?

鉱物の種類によって異なりますが、クォーツ、フローライト、宝石鉱物などは結晶が光を反射する光沢が標本にとってとても重要です。これは「テリ」とも呼ばれ標本の価値を大きく左右します。

また、ガラスのような透明感があればさらに価値は高まります。ダイヤモンドのような透明度についての統一された規格がないので、言葉での説明が難しいのですが、透明感があり色が強く出ている標本は特に美しいとされます。こうした感覚は、標本を数多く見ていくと次第に違いがわかってくると思います。特に人の手で作られたかのようなシャープな結晶面が出ている標本はとても魅力的です。

Q6 サイズはどのようなものが好まれますか?

大きく迫力のある標本は確かに価値がありますが、ファインミネラルは大きい=価値がある、とは限りません。現在のマーケットではサムネイルサイズと呼ばれる2.54㎝角に収まるサイズの標本が特に人気があります。近年、有名なコレクターが引退してコレクションを放出して市場を賑わせた影響もあり、小さくてもハイクオリティな標本に世界中で人気が高まっています。

Q7 標本のコンディションで気をつけるべきことは?

結晶に欠けや傷などのダメージのない標本はより価値があります。傷に関しては、結晶の成長過程でコンタクトと呼ばれる何らかの干渉があってできたものか、人工的に採掘時につけられたものか、判断は非常に難しいですが、ルーペなどで観察してみてください。自然界で完璧なものを求めるのは難しいですが、そこを追求するのも醍醐味です。

近年は、母岩に人為的に接着されたものやリペアされたもの、削って成形されたものも多く出回っています。ラベルなどに記載してあれば問題ないのですが、こうしたものには注意が必要です。

カラフルな鉱物のイラスト

Q8 ラベルの重要性とは?

鉱物標本にとってラベルはとても重要です。鉱物の種類や産地の情報だけでなく、前の所有者の履歴やヒストリーがその価値を高めます。ヨーロッパの市場では古い標本が流通していることも多く、100年以上前の標本を見つけることもできます。そのような標本には手書きのラベルがついていることも多く何世紀にもわたって大切に保存されてきたものもあります。

有名なコレクターのラベルはそれだけで価値があることも多く、ラベルを見ながらその標本が辿ってきた歴史に思いを馳せるのも楽しい時間です。アメリカの鉱物専門誌『ミネラロジカルレコード』のサイトには、世界の有名なコレクターのレーベルアーカイブのページもあり参考になります。

鉱物標本のラベル

Q9 産地は評価に影響しますか?

鉱物は「原産地標本」と呼ばれる、その種が最初に発見された産地の標本の価値が高くなることがあります。例えば、エルバイトと呼ばれるトルマリンはイタリアのエルバ島で最初に発見され命名されたことから、エルバ島産のものは人気が高くなります。ナミビアのツメブ鉱山も同様の標本が多くコレクターに人気が高いです。また特定の鉱山やエリアで別格に素晴らしい標本が産出した場合も人気が高くなります。それらは「クラシック」と呼ばれ評価されます。スイスのクォーツや、アメリカ・コロラド州スイートホーム鉱山のロードクロサイトはその一例です。

レアなエリアでの産出があった標本もコレクターの間で人気があります。例えば、エメラルドは南米コロンビア産が有名ですが、ロシアのウラル山脈やザンビアでごく限られた時期に産出された良質な標本は特に人気があります。また、Mindatという世界中で産出される鉱物と産地が登録されているデータベースがあるので、いろいろ調べてみると面白いと思います。コレクターから研究者までが愛用する必見のサイトです。

profile

内田佑介

内田佑介(〈USK MINERALS〉代表)

うちだ・ゆうすけ/世界トップクラスのファインミネラル標本からファインジュエリー用原石までを取り扱う。今年、代官山に予約制のサロンをオープン。2015年より東京国際ミネラルフェアのディレクターとして企画・運営にも携わっている。
Instagram:@yusuke_uchida_minerals

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