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【四季を楽しむ花木】見直したい伝統の庭木「サルスベリ」

  • 2023.9.8
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暑い夏の日差しが照りつける時期に、ピンクや白の花をたわわに咲かせる樹木、サルスベリ。街路樹としても見かける機会が多く、夏を象徴する花木です。日本で長く愛されてきたサルスベリは、花が長期間咲くうえ品種のバリエーションも増えていることから近年、洋風ガーデンでも人気上昇中。そんなサルスベリの魅力について、ガーデンプロデューサーの遠藤昭さんが解説します。

サルスベリとは

サルスベリ
Matthewshutter/Shutterstock.com

夏の花木と言えば代表格はサルスベリ。近年は、さまざまな品種が出回っていて、洋風ガーデンにも人気が復活していることをご存じでしょうか。花が長期間(100日間も!)咲くので百日紅と書き、サルスベリと読ませますが、ヒャクジツコウとも呼ばれます。幹がスベスベしているので、猿が昇っても滑るのでサルスベリとも言われますね。

サルスベリとシジュウカラ

我が家のサルスベリには巣箱を設置し、シジュウカラが毎年、巣作りをして雛が飛び立つ樹木です。

花の色は主に赤、ピンク、紫、白の4色ですが、近年、交配品種の登場によって他の色も誕生しているので、今後もますます楽しみな花木です。

サルスベリ
koro / PIXTA

赤花の代表的な品種である、‘カントリーレッド’。

サルスベリ

そして、昔ながらのサルスベリの代表的なピンクの花。

サルスベリ
drsuntzu/Shutterstock.com

そして最近、人気急増の紫系の花。

サルスベリ
Flyingbird YF /Shutterstock.com

純白花は、夏に涼しげです。

海外でも人気のサルスベリ

サマーパティオ
サルスベリが咲き誇るサマーパティオ。Olesia Bilkei/Shutterstock.com

さて、このサルスベリ、海外でも近年人気ですが、英名はCrape myrtleで、Monkey slipperとは言わないようです。そう、先進国で猿がいるのは日本だけで、欧米にはいないようです。Crapeは、夏のリラックスウェアでもあるステテコにもよく使われている素材のクレープのことで、つまりシワシワを表しています。花弁がシワシワのmyrtle=ギンバイカと言ったところでしょうか。

サルスベリ
dtateiwa/Shutterstock.com

花期が長く、なかなか優れた花木だと思うのですが、サルスベリ(百日紅)という日本での呼び名がイケテナイのか、今ひとつお洒落感に欠ける印象があるかもしれません。もともとをたどると中国の花木です。海外では、カリフォルニアのディズニーランドやスペインのグラナダでも見たことがあります。「Crape myrtle」と検索すると、欧米ではなかなかに有望視されている花木と見てとれます。

サルスベリ
Linda Jensen/Shutterstock.com

特に画像検索で「Crape myrtle」を検索すると、我々が、持つサルスベリのイメージが変わるかも知れません。植物のネット検索は日本名だけでなく、英名や学名で検索すると、素敵で新鮮な画像に出会えたりします。

日本では平凡なヤツデやアオキ、そしてモミジが海外で人気なのと同じように、サルスベリも国内よりも海外での評価が高いように見受けられます。

以前、カリフォルニアのディズニーランドでサルスベリを見かけた時は驚きました。

サルスベリ

そして、こちらがスペインのグラナダ・アルハンブラ宮殿の庭園でもかけたサルスベリ。素敵な剪定です。まさかスペインでサルスベリに遭遇とは驚きでした。日本だとサルスベリというと、コブを作る剪定が多いですが、スペインではこんな素敵な剪定をするんですね。サルスベリは混雑すると枝が曲がると言われていますが、その性質をうまく利用した素晴らしい剪定です。

アルハンブラ宮殿
サルスベリが咲くアルハンブラ宮殿。Sergii Figurnyi/Shutterstock.com

海外旅行で、日本の伝統植物に出会うと、なんだか嬉しいですね。

サルスベリのプロフィール

学名:Lagerstroemia indica
英名:Crape myrtle
和名:サルスベリ(百日紅)
科名:ミソハギ科
属名: サルスベリ属
原産地:中国南部、世界の熱帯各地に分布

原産地が中国南部で世界中の熱帯地方に分布していることから察せられますが、常緑樹ですが耐寒性もあり、日本や温帯地域では落葉する性質です。春に出る新芽はやや遅く、熱帯花木の名残が感じられます。

サルスベリ
2階から撮った我が家のサルスベリ。

我が家には30年近くになるサルスベリが3本ありますが、夏中咲いてくれて、丈夫な優等生です。夏は屋外の草花の手入れが大変ですが、サルスベリのような花木は手入れがほとんどいらず、楽な点もいいですね。植えて30年近く経ち、今ではすっかり大きくなって2階から花が楽しめます。

サルスベリ
ユーカリの木を背景にしたサルスベリもおしゃれ。

樹齢30年の我が家のサルスベリ

30年前というと私は、まだオージープランツにも手を出しておらず、ガーデニング初心者でした(30年前はガーデニングという言葉すらなかったですね。「ガーデニング」は1997年の流行語大賞です!)。まあ、園芸初心者。ちょうど庭づくりを始めた頃で、植木屋さんで勧められたのが、このサルスベリです。現在ある我が家のその他の庭木は自分で植えたのですが、このサルスベリだけは植木屋さんに植えてもらいました。

サルスベリ

30年も経過すると周りの樹木も変化して風景が変わり、面白いものですね。上写真の左は、ネグンドカエデ、サルスベリ、ユーカリですが、下写真の右側は手前にレモンの葉、右にジャカランダの葉が見えます。いずれも2階からの風景です。2階から楽しめるのもサルスベリの魅力。

サルスベリ

すっかり大きくなって、お隣に飛び出しそうな枝は切って壺に活けています。ただし、サルスベリは花弁が散りやすいので、屋内に飾るのは避けたほうがいいです。我が家では玄関の外に置いています。

サルスベリ
花屋に売っていない、自宅で咲いた枝ものを飾ることができるのもガーデニングの醍醐味。

サルスベリの花

サルスベリ

街路樹などのサルスベリは、遠くてよく見えないですが、近寄って観察してみましょう。上写真は房咲きのサルスベリですが、近づくと間につぼみがあります。

サルスベリの花

花弁は6枚、黄色く一見雄しべに見えるのは「餌雄しべ」と言われ、昆虫を引き付ける役割をし、さらに受粉効果のある長い雄しべが6本、そして雄しべに紛れて、雌しべが1本です。面白い花ですね。

サルスベリの四季の移り変わり

サルスベリ

サルスベリは花だけでなく紅葉もきれいです。秋の青空に映えるサスルベリも風情があります。上写真は9月20日撮影。7月に咲き始め、本当に100日近く咲き続けます。

サルスベリの紅葉

さらに2カ月も経った11月20日頃には紅葉します。

そして写真下のように12月には落葉し、実が残ります。この実も魅力的で、クリスマスリースなどにも使用できます。

サルスベリの実
サルスベリの実
冬の実のアップ。
サルスベリ
弥七 /PIXTA

そして、冬は幹の美しさが目立ちます。猿が滑るほどの滑らかさなので、光沢感もあり、ともすると寂しい冬の庭の景色の中で、ひときわ幹の美しさが目を引きます。

冬のサルスベリ
我が家の冬のサルスベリ。

サルスベリの栽培ポイント

サルスベリ
Feng Cheng /Shutterstock.com

ご紹介してきたように夏の花に限らず、一年中魅力があるサルスベリですが、最近は、街路樹にも多く利用されています。大きく育つとサルスベリの並木道も素敵になるでしょうね。

サルスベリ
神奈川県某所の街路樹。

では実際に、庭木として育てるとどうでしょう。私が30年間育ててきた経験では、地植えして大きくなった成木は2月に剪定をするくらいで、特に水やりも施肥も不要です。

鉢植えでも育てていますが、日当たりの良い場所に置き、表土が乾いたらたっぷり水やりを忘れずに。鉢植えの場合は、施肥は2月に寒肥を施します。

うどんこ病
うどんこ病が発生したバラ。Bunina Darya /Shutterstock.com

病害虫で、一つ注意したいのは、バラやキュウリにも発生するうどん粉病です。

6月頃に発生することが多いので、風通しを良くして用心しましょう。もし、発生したら、早めに殺菌剤を散布するとよいでしょう。

サルスベリ
Noel V. Baebler/Shutterstock.com

サルスベリの知っているようで知らなかった発見があったでしょうか。一年中楽しめて、優雅で丈夫で長持ち。ぜひ、お気に入りのサルスベリの花の色を見つけて、貴庭の仲間に入れてあげてください。きっと、これから長年にわたって、素敵でおしゃれな庭風景を演出してくれますよ。

Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -

えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。

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