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〈大橋会館〉はいかにして生まれたのか?仕掛け人に聞く、コンセプトを決めないプロジェクトのつくり方

  • 2023.9.8
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複合施設〈大橋会館〉_館内の様子

1年ほど前、“コンセプトを決めない”という方針でプロジェクトを立ち上げたのは、クリエイティブチーム〈301〉の大谷省悟さん。

「最初に全体のコンセプトを決め、それを基に空間をチームに割り振っていくのが通常のやり方だと思いますが、その流れだとコンセプト大喜利的になり、プレーヤーが自由に考えることを制限してしまう。まずはプロジェクトに関わる全員がどんな場所にしたいか、どういう人たちがこの建物に集まってくるのがいいか、というような抽象的な事柄をやりとりしながら、人を主体とした関係性を築いていく。戦略を立てずに、誰がどういうふうにその熱量に巻き込まれていくのかをデザインしていくような感覚ですね。複合的なコミュニティというのは、建物や街というスケールと、人との関わり、その延長線上に立ち上がっていくものだという考え方を起点にしています」

担当者もフロアや機能で分けず、全体について全員で議論し、共有しながら進めることで、一つの施設として理想的なコミュニティを立ち上げられるのではないかと考えた。第一に、1階にパワーのある飲食店を入れること、そこを街とつながる入口にして、さらに人と人とが縦に交ざり合っていく仕組みをどのように作るか。

当初20人ほどでプランが白紙の状態から話し合いを始め、プロジェクトを進めるうちにローカルなカルチャーを担う人たちも巻き込みながら、街に独自の施設として成長させていったという。結果、約50年前の空間に2023年の要素を上書きしたようなデザインにも、コンセプト主導でないからこその予期しないアイデアが取り入れられた。

「同時期に同じ方法で手がけた代々木上原の〈CABO〉は、洗練された街のイメージに馴染むものになりましたが、それと比べて〈大橋会館〉は、様々な個性が混じり合って融合したような、ミックスカルチャーのある池尻らしいアウトプットになったと思います。

どちらもローカルのチームを巻き込んだことが、街らしさを反映する鍵を握った部分はありますね。今後ほかのプロジェクトでも、こうした複合施設の立ち上がり方が参照され、それぞれの街にポジティブな影響を与えられたらと考えています」

複合施設・大橋会館の内観
建物内の交差点となる2階のラウンジスペース。常駐のコミュニティ・ディレクターが人と人をつないでくれる。
〈Overview Coffee〉のコーヒーとペイストリー
施設と街をつなぐ入口は、朝は〈Overview Coffee〉のコーヒーとペイストリー、昼から夜は様々な国の料理とワインが楽しめる〈Massif〉。
『CEKAI DESIGN FIGHTERS』
作品展示やイベントを行う〈CEKAI 大橋会館〉では、9月3日までオリジナルTシャツを展示販売する『CEKAI DESIGN FIGHTERS』が開催されている。
シェアオフィスの様子
個人から40人規模のチームまでが利用するシェアオフィス。入居者が使える共有ラウンジも。全22室ある個室は、月額賃料253,000円~。
ホテルとレジデンス機能を併せ持つ客室内の様子
1泊から宿泊できる「泊まるプラン」と、長期滞在が可能な「住むプラン」があり、ホテルとレジデンス機能を併せ持つ。
ホテルとレジデンス機能を併せ持つ客室内の様子
共有のキッチンやランドリーのほか、4名まで同時に利用可能なプライベートサウナも備えている。シングル1泊1室9,000円~。サウナは一般利用も可能。

Information

大橋会館

大橋会館

池尻大橋周辺のコミュニティのハブとなるべくオープンした複合施設。カフェ・ワインバー・レストラン、ストア&スペース、オフィス、ホテルレジデンス、サウナを備える。

住所:東京都目黒区東山3−7−11
HP:ohkk.jp/

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大谷省悟

大谷省悟

おおたに・しょうご/デザインやブランディングを手がけるクリエイティブカンパニー〈301〉代表。代々木上原〈CABO〉内に飲食空間とオフィスを融合させたコンセプトスペース〈No.〉を展開。

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