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ドイツ・マンハイムで開催中! ドイツ最大のガーデンショーをレポート! 2

  • 2023.9.7

近年の気候変動の実感と問題意識の高まりと共に、ヨーロッパでは最低限の水やりとローメンテナンスで維持する夏のガーデニングが注目されています。そうしたアイデアを見つけるには、実際にガーデンやガーデンショーを訪れるのもいい方法。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんによる、ドイツで開催中のガーデンイベントBUNDESGARTENSCHAU(BUGA:連邦園芸博覧会)2023のレポート第2回では、前回紹介しきれなかったもう一つのエリア、スピネッリパークをご案内します。

BUGA2023の体験レポート第2弾!

BUGA
Daniela Baumann/Shutterstock.com

現在ドイツ・マンハイムで開催中のドイツ最大のガーデンイベント、BUNDESGARTENSCHAU(BUGA)。BUGA2023は、マンハイム市とその周辺地域における持続可能な生活の質とライフスタイルを向上させることをコンセプトに行われていて、178日間という長期の開催期間中には、さまざまなテーマのガーデンが見られることに加え、フラワーショーや文化交流、レジャーやスポーツといったアクティビティーなど5,000以上のイベントも企画されています。

ちなみにBUGAは2年に1度、ドイツのどこかの街で開催されるのですが、今回BUGAの会場となったマンハイムには、BUGAのエリアのほかにも魅力的なガーデンがあります。例えばオーグステンパークのウォータータワー。今回宿泊した、BUGAの会場から徒歩10分ほどのホテルの目の前にあり、BUGAへ向かうまでにも。楽しい時間を過ごすことができました。

BUGA2023のもう一つのエリア、スピネッリパークへ

BUGA2023の会場には、大きく分けてルイーゼンパークとスピネッリパークの2つのエリアがあります。ルイーゼンパークをご紹介した前回に続き、第2回となる今回は、前回はご紹介できなかったスピネッリパークをご案内しましょう。

BUGA
Daniela Baumann/Shutterstock.com

印象的で魅力的なBUGAの前半部分で、大きな木々やしっかりした植物、多くの建物があるルイーゼン公園をしっかり堪能した後、ケーブルカーに乗っていざスピネッリパークへ。ネッカー川にかかるこのケーブルカーが、ルイーゼンパークとスピネッリパークを結んでいます。ケーブルカーからは市民農園やネッカー川、古い農家の建物とたくさんの野菜畑があるロマンチックな農場、本物の芝生の上に大きなサッカー場があるスポーツエリア、小麦畑を一望でき、美しい景色を眺めながらBUGAの会場を巡ることができます。空中の旅を楽しみながら、7分ほどで広く開けた目的地に到着。遠く離れたコーナーにマンハイム・タワーが見え、他の方角には片側にネッカー川が、その反対側にはマンハイムの住人のための高層居住区があります。BUGAのケーブルカーのよい所は、ケーブルカー料金が既に入場料金に含まれていること! 歩き疲れた後にぴったりですし、ケーブルカーに乗るだけでも楽しいので、もしもっと時間があったら、もう一度乗りたいくらいでした。

BUGA
Ingrid Balabanova/Shutterstock.com

スピネッリパークの8つのエリア

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Daniela Baumann/Shutterstock.com

スピネッリパークはかつての軍事基地跡地の、およそ80ヘクタールの敷地につくられたガーデンです。建物のいくつかは保存され、カラフルな花や展示のための場所としてリモデルされて利用されています。スピネッリパークのエリアをご案内しましょう。

1.ウェルカムエリア
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Daniela Baumann/Shutterstock.com

ここでは、シャトルバスや公共交通機関、自転車、徒歩などで南エントランスから入場してきた人々を迎えます。南ウェルカムガーデンには、気候耐性の強いムギワラギクやサルビア類、スターチス、ユーフォルビアの仲間などを生かしたボーダーガーデンがあり、ジニアやケシの花が咲くエリアもありました。

ユーフォルビア
乾燥や直射日光に強く、種類豊富なユーフォルビア。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Vazquez, Domingo
ムギワラギク
カサカサとした花弁のムギワラギクとカラフルなチガヤの組み合わせ。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
ケシ
カラフルな花を咲かせるケシ。日本でもよく栽培される花ですが、品種によっては日本で栽培が禁止されているものもあります。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Mann, Dirk
2.U-HALL
BUGA
Ingrid Balabanova/Shutterstock.com

21,000㎡のエリアに19の小さなホールが、アルファベットのUの形に並ぶこのエリアが、BUGAの中心部。その形から、U-HALLと呼ばれています。

フラワーショーの中でも重要なハートピースで、さまざまなテーマのホールはクリエイティブで見るべきものがたくさんあり、天気が悪い日にゆっくり楽しむのにも最適です。休憩スペースやグルメも充実していますよ。

U-Hallの周囲には、武骨な建造物をカバーするつる植物がたくさん植わり、グラス類やさまざまなサイズのワイルドフラワーも植栽されています。

クレマチス
クレマチスなどのつる植物は構造物のカバーにぴったり。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Niemela, Brigitte
グラスガーデン
細長い葉が周囲の花を引き立てるグラス類。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

フラワーショーやガーデンなど屋外の空間は、天気や訪れるタイミングによって印象が大きく異なるものです。私の知人の一人、花やガーデンの愛好家が、春にBUGAを訪れたそうなのですが、彼女の感想は私のものとは全く違いました。まだ植物が小さかったため、全体に植物の量が少なく見えて、あまり満足できなかったそうです。

春の庭
株もまだ小さい春の庭は、花が咲いていても少し寂しい印象も。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

植物にとっては太陽光や暖かさ、十分な水と時間がパフォーマンスを発揮するために必要ですが、春はまだ気温が上がらず、水が不足することもあって、春のガーデンで生き生きとした植物たちの姿を見るのはなかなか難しいもの。そのため、彼女の印象は私とは異なるものになったのでしょう。

ガーデン
頼りなかった苗も、夏にはしっかりと茂ってくれます。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

幸い、私が訪れた時期は、少々暑すぎではあったものの、ベストな天候の時期。植物たちはよく管理されて最盛期の姿を見せてくれました。

3.トライアルエリア

トライアルエリアでは、BUGAの4つのメインテーマである、気候、環境、エネルギー、食料安全保障をテーマにした展示が見られます。

4.SDGsガーデン

いまやSDGsに配慮することはすっかり定着しましたが、BUGA2023でもSDGsは重要な課題。ここでは、17のトライアルガーデンが、それぞれSDGsの17のゴールを表しています。それぞれのガーデンルームはブナの生け垣で区切られていて、テーマとなったSDGsの目標とガーデンの解釈についての説明がイラストを用いて示されています。例えば「健康」のテーマは、ハーブガーデンで表現。時にはポイントを理解するのに相当想像力をたくましくさせなくてはいけないこともあります。

5.未来の木

ナーセリーのように長い列になって木々が並ぶエリア。これらの木は、BUGAの終了後には市全体に植えられる予定です。

6.クライメイトパーク

スピネッリパークの中にある、およそ62ヘクタールの広大なクライメイトパークは、新鮮な空気が感じられる都会のオアシスでもあります。都市の気候を大幅に改善し、都市住民に広々としたオープンスペースを与えてくれる場所です。このエリアの一角は、いわゆるステップ地帯風になっていて、栄養の乏しい草原を再現していますが、その部分は野生生物、昆虫、トカゲ、その他の小動物にとっても重要な場所になっています。

BUGA
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Wothe, Konrad
7. パノラマビュースポット

川にかかる長さ81m、高さ12mの錆びた赤い展望台は、一見橋のように見えますが、川の上で終わっています。そこからは、下の湿地帯と遠く離れた街のスカイラインを眺めることができる、素晴らしいビュースポットになっています。

8.遊びとウェルネスエリア
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Daniela Baumann/Shutterstock.com

アパートとスピネッリ公園の間にある都市の住居エリアの隣には、たくさんの屋外遊戯スペースを備えた子供向けのエリアが。できたばかりなので、まだ木陰もほとんどありませんが、年々改善されて、そこに住む家庭にとっては大きなメリットになることでしょう。広々としていて空気も美味しいので、トレーニングに励むのもいいですね。

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Daniela Baumann/Shutterstock.com

他にも楽しい場所がいろいろ!

こうした数々のガーデンアイデアの中で、最も印象に残ったのが、サンプルガーデンで見つけたプール! 土を掘ってつくった美しい楕円形の低いプールの周囲には、グラスを取り入れた宿根草ボーダーガーデンが広がり、温暖な気候らしい雰囲気が漂います。プールを見渡すウッドデッキには、広々とした日よけと快適なデッキチェアが備え付けられ、着替えもできる小さな可愛い小屋も魅力的です。 若者や年配の訪問者がプールに挑戦したり、水温をチェックしたりしている姿を眺めながら、何時間でも過ごせそうでした。このプールのトリッキーで面白い点は、形が正方形で均一な深さではなく、端がわずかにアーチ状になっており、中にいるときにバランスを崩す人が続出していたこと。10 代ぐらいの少年 4 人のグループは最終的にかなり濡れてしまい、そのうちの 1 人は完全に水の中に浸かってしまっていました。天気もよかったし、引率の先生が怒る様子もなかったのでよかったです。

小さな足湯に入っている人もいて、皆、とても幸せそうでした。隣にあった3つのデッキチェアもすぐに埋まり、その人たちと会話が生まれて、素敵な時間を過ごすことができました。

BUGA
Daniela Baumann/Shutterstock.com

BUGA2023のお気に入りのポイントは、芝生などどこにでもスチール製や木製の、休憩用の椅子やベンチが豊富にあったことです。こうした場所があると、広いガーデンを歩き回った後に、ちょっと一息つくことができますね。

こうして何時間も歩いた後、スピネッリ公園のエリアを一周する小さな「パークトレイン」に乗る機会がありました。電車の中ではまたしても、スイスから来たカップルと会話が生まれ、この素晴らしい場所の感想を交換することができ、楽しい時間になりました。

ガーデンショーにいってみよう

BUGA2023
Ingrid Balabanova/Shutterstock.com

こうした国立のガーデンショーは都市の発展にとって非常に重要かつ不可欠であり、植物や自然と触れるショーケースになっています。

何年にもわたるガーデン巡りの中で、すでにいろいろなガーデンショーを訪れていますが、それぞれに独自の魅力ポイントがあり、毎回、たくさんの刺激と新しいアイデアをもらうことができる場です。

ぜひ、植物に興味のある友人と一緒に訪問し、時間をたっぷり使って、会場に向かう時間から楽しんでみてはいかがでしょう。大抵のガーデンイベントは敷地が広いので、楽しむためには十分な休憩も欠かせません。また、一年の中で適切な季節、あなたの好きな季節や天候も考慮して訪れる日程を決めるのがおすすめです。

今回の私の訪問は夏のピーク。幸運にも一年で最高の季節で、この素晴らしくて幸せなイベントを堪能することができました。ぜひ皆さんも、いろいろなガーデンイベントを訪問してみてくださいね。

Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

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