『蟹ブックス』店主、作家の花田菜々子さんが大切にしている、心の本。『食いしん坊のお悩み相談』

極端な発想になりがちなときに思い出す言葉。

問題が複雑になったり、気持ちに余裕がないとき、何を優先すべきかわからなくなることがあります。仕事は利益重視かそれともやりがい重視か。相手への不満をすべてぶちまけるか、それとも何も言わずに我慢するか。そんな究極の二択を設定しがちです。そんなとき、料理家の稲田俊輔さんが「おいしいとは何か？」という問いに対して引用した、インド人シェフのこの言葉にハッとさせられました。おいしいはバランス。たしかに料理はしょっぱければしょっぱいほどいいとか、甘ければ甘いほうがいいなんていう極端な発想にはなりませんよね。きっと人が生きる上でも同じで、仕事も人間関係もバランスが大事。偏った考えに陥りそうになる自分をニュートラルに戻してくれる、心強いメッセージです。

『食いしん坊のお悩み相談』著 稲田俊輔 （リトルモア)

花田菜々子 Nanako Hanada
『蟹ブックス』店主、作家。1979年東京都生まれ。約20年にわたり、さまざまな書店で働いた経験を持ち、2022年に東京・高円寺に自身の本屋を開店。『毎日新聞』、『non-no』（集英社）などで書評連載も持つ。

illustration : Shapre text:Mariko Uramoto edit : Wakako Miyake