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短歌だけで紡がれる、恋とサスペンス。いったい何が起こっているの?

  • 2023.9.4

現代短歌界を担う歌人・木下龍也さんと鈴木晴香さんが、新たな試みに挑んだ。『荻窪メリーゴーランド』(太田出版)は、2人が架空の男女を演じ、短歌だけで紡いでいくラブストーリー。2022年7月から2023年6月にかけてのWebマガジン「OHTABOOKSTAND」での連載が書籍化され、2023年8月29日に発売となった。

物語は、甘酸っぱい夏のデートから始まる。

君を撮るためのカメラがあたたまる太腿のうえ 海まで遠い(鈴木さん)

まぶたまで夏のひかりはしみとおりきみはるるぶでひさしをつくる(木下さん)

それぞれの視点の短歌が交互に並んでいて、ラブラブな会話を聞いているようで思わずキュンとする。この後、2人は同棲することに。

ねえスーモ、毛づくろいしてあげるから同棲にいい部屋を教えて(木下さん)

このまま幸せな日々が続く......と思いきや、何やら不穏な短歌がだんだん増えていく。

おそろいのコップがひとつ欠けていて残ったほうをわざと落とした(鈴木さん)

短歌の中には限られた情報しかないため、読者は物語がどうなっているのか推測するしかない。2人の仲に、いったい何が起こっているのか......。

特装版にのみついてくる24ページの小冊子では、木下さんと鈴木さんが、物語の仕掛けや本書に込めたたくらみ、リアルな恋愛観などを告白している。特装版は数量限定なので、全貌が気になる人は早めに手に入れてほしい。

過去の「恋」をしなかったことにはできなくて、
それを「なくて」もよかったと思えるほど、僕は強くない。
――木下龍也

美しさと逞しさ、正常と狂気がメリーゴーランドのように、
回転灯のように、走馬灯のように回転し続ける世界。
ほんとうの恐ろしさは、それが終わらないことにあるのかもしれません。
――鈴木晴香

■木下龍也さんプロフィール
きのした・たつや/1988年生まれ。歌人。 著書は『つむじ風、ここにあります』『きみを嫌いな奴はクズだよ』(ともに書肆侃侃房)、『天才による凡人のための短歌教室』『あなたのための短歌集』『オールアラウンドユー』(いずれもナナロク社)。また、共著に『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』『今日は誰にも愛されたかった』(ともにナナロク社)がある。

■鈴木晴香さんプロフィール
すずき・はるか/1982年東京都生まれ。歌人。慶應義塾大学文学部卒業。2011年、雑誌「ダ・ヴィンチ」『短歌ください』への投稿をきっかけに作歌を始める。歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房)、『心がめあて』(左右社)。2019年パリ短歌イベント短歌賞にて在フランス日本国大使館賞受賞。塔短歌会編集委員。京都大学芸術と科学リエゾンライトユニット、『西瓜』所属。現代歌人集会理事。

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