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仕事からプライベートに「切り替える能力」、あなたも失ってない?

  • 2023.9.2
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スーパーのレジに並びながらメールを返し、プールサイドから電話会議に参加する。リモートワークの台頭も相まって、仕事とプライベートの境界線は曖昧になる一方。切り替え方が分からなくなり、夏休みもログアウトしない人が続出中。あなたも知らぬ間に燃え尽きてはいないだろうか?

Morsa Images

リモートワークの台頭

リモートワークには明らかなメリットがある。通勤しなくていいぶん長く寝られるし、平日に雑用を片付けられるし、パートナーや子どもと過ごす時間も増える。プレゼンティーズム(体調が悪いのに出社して作業効率が上がらない状態)や、社内の無意味な噂話を避けられるのは言うまでもない。

経営コンサルティング会社ギャラップの調査で、フレキシブルな働き方はワークライフバランス・時間効率・生産性の向上をもたらし、バーンアウトのリスクを下げるという結果が出たのも頷ける。

また、コンサルティング会社マッケンジーの調査では、昨今の仕事選びで給与の次に重視されるのは働き方の柔軟性で、その差はわずか1%であることが分かった。

「働き方がフレキシブルになったおかげで、自分の強みを生かせるようになりました」と話すのは、元会計士で現ビジネスコンサルタント兼パブリックスピーカーのシェリル・ミラー(50歳)。

「もともと私は朝のエネルギーが高いタイプなので、それを生かすために毎日早起きをしています。休憩は午後3時。その時間でネイルサロンへ行くこともありますね。夜はバーミンガムのシンフォニー ホールでリフレッシュしています」。今月は夫とタイでワーケーションデビューもする予定。仕事と旅行を融合させているのは、英国だけで439万人と言われる個人事業主だけじゃない。パンデミック後も従業員にリモートワークを継続させている企業はあるし、最近では泊まりがけのリトリートを企画する企業も増えている。また、リモートワークをする人の56%は、上司から正式な許可をもらわずに行く“こっそり旅行”を予定している。

旅先ではなく地元の天気に応じた服装をして、VPNを使い、Zoomの背景を変えればバレることもない。ハードというよりスマートに働くというわけだ。

Witthaya Prasongsin

常時オンでいることの悪影響

神経科学者で臨床心理士のリンダ・ショー博士によると、仕事とプライベートの境界線が曖昧になったのは世界のデジタル化が進んでから。

「タイムカードで“出勤”と“退勤”が管理されていた頃は、仕事とプライベートの境界線がとてもハッキリしていました。でも、デジタル時代の到来により、家と会社の間にあった境界線が失われただけでなく、夜7時のメールにも迅速な返信が求められるようになりました」

そして1990年代後半にブラックベリーが登場し、昼夜を問わずメールの送受信が可能になると、ハッスルカルチャー(長時間働いてこそ成功できるという考え方)の時代が到来。当時、シェリルは都心で金融関係の仕事をしていた。

「会社の先輩が深夜3時にメールを返していることが信じられませんでした。パートナーは隣でスヤスヤ眠っているのに」とシェリルは当時を振り返る。あの頃は、24時間356日対応可能な状態を維持することで、昇進や昇給を与えられる時代だった。それから20年。私たちは人間関係(恋人や友人との関係)における境界線こそ重視するようになったものの、キャリアにおける境界線には相変わらず目もくれずに生きている。

2022年、イギリスの従業員の62%は有休を完全に消化しなかった。この“常時オン”のメンタリティは、会社をやめたシェリルにもしつこくまとわりついている。

「フリーになったはずなのに上手く切り替えられません。自宅にあるオフィスを出ても、気付けば仕事をしています」

ロンドンでパーソナルトレーニング会社を営むエイミー・ロング(30歳)が切り離せなくて困っているのは、職場というよりもデバイス。

「私の仕事の大部分はオンラインです。バーチャルのセッションがないときも、結局はオンラインで他のトレーナーのスケジュールを管理したり、仕事のメールに返信したり。仕事用の携帯を手放すことや、少しも仕事をしない休日はありません」

仕事とプラベートの境界線を尊重しない人は、相手にも同じことを求める。だからCEOやセレブを顧客に持つエイミーは「夜10時の問い合わせにも応じなければならない気がしてしまう」。「私のクライアントは、トレーニングというセルフケアの間さえ自分を仕事から切り離せない人たちです。突然の打ち合わせでセッションをドタキャンしたり、休憩中にメールをチェックしたりします」このハイブリッドな働き方はとくに女性を苦しめている。「女性はいまだに家事の大部分を担っています。以前は会社に行くことが物理的な境界線となって、家事という負担から逃れることができていました」と話すのは、英セントラル・ランカシャー大学の講師で心理学者のサンディ・マン博士。

「でも、パンデミックの到来で、職場という空間を家事や家族の世話から切り離せなくなりました」。

働き方改革を推進するFuture Forumが2021年の春から行っている調査によると、世界各地でバーンアウトする人の数は今年3月に最高値を記録して、その大半が女性だった。

VioletaStoimenova

脳の力

快適なソファーや日光が燦燦と降り注ぐビーチを職場にしていても、スイッチオフするべきとき(夜、週末、休暇中など)にしないでいると、夢のワークライフバランスは遠のいていく。

ショー博士の話では、十分な休みを取らずにいるとパフォーマンスが低下する。無理をすればなんとかなると思うのは、とんでもない勘違い。

「平日の散歩や呼吸エクササイズで、電子機器の画面から少しでも離れる時間を作りましょう。それだけで仕事がはかどるようになりますよ」

退屈と白昼夢のメリットを研究してきたマン博士によれば、決断とマルチタスクから脳を解放してあげると、いろいろなことに意識が向いて、いつもとは違う刺激が見つかる。

「それがきっかけでクリエイティブなアイディアが浮かんだり、問題が解決したりします」

明確な休息期間に入ることが無意識のうちに分かっていると(金曜日の夜のような感覚になると)、体は勝手に緩み始める。

「ちゃんとしたオフを取って、特定の“モード”や“役割”から自分を100%解放するのは、ストレスホルモンのコルチゾールやアドレナリンを減らすうえで重要です」とマン博士。このオフを取らずにいると、仕事に対する怒りが湧いてモチベーションが下がるばかりか、いつもストレスを感じている状態になってしまう。そして、それが前述のバーンアウト、うつ病や不安障害といったメンタルヘルス疾患を引き起こす。常時オンでいることが体に与える影響はさらに怖い。

「あなたが急な電話会議に出なければならなくなったりしてなんらかのストレスを感じると、副腎で大量のストレスホルモンが産生されて、消化器系と免疫系の両方に悪影響を与えます」と説明するのは、機能性医学の観点から女性の健康を専門とするエイミー・マイヤーズ医師。

「人間は、短時間の大きなストレスには上手く対処できるようになっていますが、それが頻繁になると、頭痛、胃腸障害、高血圧などの問題が生じます」。

世界保健機関(WHO)によると、1週間の労働時間が55時間を超える人は、35~40時間の人に比べて脳卒中の発症リスクが35%、心疾患で死亡する確率が17%高くなる。そうなってからログアウトしても遅い。

Anastasiia Krivenok

スイッチをオフにする方法

オフの時間を取り戻すための第一歩は、メールの自動返信機能を活用すること。

ショー博士いわく「いつからいつまでは休暇中であることや、仕事のメールは1日2回、決まった時間にチェックすることを明記する」と、仕事とプライベートの間に健全な境界線を引きやすい。

マン博士の話では、仕事の始まりと終わりを脳に告げるサインを作るのも効果的。

「キッチンカウンターで仕事をする日も、ちゃんと仕事用の服に着替えて、外を一周グルッと歩く“疑似通勤”を終えてから席に着くと、気持ちが切り替わります」そしてなにより、十分な休息を。

「毎分毎秒、なにか意味のあることをしなければならないと思ったり、休むのは“時間の無駄”と思ったりしないでください」と話すマン博士によると、脳をリフレッシュしたいときは、泳いだり、ただ静かに雲を見つめたりするだけでもいい。

心理カウンセラーのリナ・バジャージ博士も、休日や休暇中は極力仕事をしないようにしてほしいと訴える。

「どうしてもしなければならないときは1日何分までと決めておき、それが済んだら仕事用携帯の電源を切ってください」エイミーは、6ヶ月になる娘のジジが生まれたことで時間を賢く使えるようになったそう。

「自分のことはベビーシッターがいる午前5時半から午後3時半までの間に全部済ませて、そのあとは娘のことだけ考えるようにしています」

一方のミシェルは、土日でしっかり心身を休めると仕事がはかどることに気付いたそうで、最近参加した7日間のヘルスリトリートでも電子機器を一切使わず、ミシェル・オバマの自伝『Becoming(邦題:マイ・ストーリー)』を紙で読んだ。ワーケーション先のタイでも仕事は1日2時間までと決めている。現代では、それでこそ「いい仕事をした」と言えるのかも。 ※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。Text: Lauren Clark Translation: Ai Igamoto

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