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「“在宅”クリンスマンの盾」との懸念も…韓国代表のコーチ陣容変更に冷ややかな意見が目立つワケ

  • 2023.9.1

ユルゲン・クリンスマン監督率いるサッカー韓国代表のコーチ陣容が一部変更となる。

複数のサッカー関係者によると、韓国代表のアドバイザーを務めるチャ・ドゥリ氏がコーチに変更となる見通しだ。

これまでコーチを務めていたマイケル・キム氏が辞任するなか、チャ・ドゥリ氏がクリンスマン監督体制で正式な指導者となり、コーチ陣の一員として韓国代表を補佐することになる。

チャ・ドゥリ氏はFCソウルのユースディレクターとの兼任で韓国代表アドバイザーを務めていたが、一時ユースディレクターの座から退き、代表だけに集中する予定だ。

ある程度予想された変更だ。クリンスマン監督は韓国代表の新指揮官に就任以降、半年も経たない間にそのリーダーシップを疑われている。

3月、6月の国際Aマッチ4試合が2分2敗に終わり、勝利することができなかったのは一次元的な問題だ。

まだ新体制が始まったばかりの段階であるだけに、試合結果と内容をすぐに評価することは難しい。1年程度はチームを作り上げていく過程と見なければならない。

チャ・ドゥリ氏(左)、クリンスマン監督
未だ勝利なし、在宅勤務…“最悪”のクリンスマン評

それよりも懸念されるのが、クリンスマン監督の業務態度だ。

韓国サッカー協会(KFA)は今年2月、クリンスマン監督の就任を発表した際、韓国国内滞在を契約条件にしたことを強調した。

ところが、指揮官が就任後約6カ月間で韓国に滞在したのはわずか2カ月程度で、実際には頻繁に外遊しながら海外のテレビ番組に積極的に出演し、韓国代表とは関係のない話をしている。これが韓国サッカーファンの怒りに油を注いだ。

現在、韓国国内におけるクリンスマン監督への世論は、文字通り「最悪」に近い。

これを収拾するために、クリンスマン監督はチャ・ドゥリ氏を前面に押し出す布陣を敷くものとみられる。

チャ・ドゥリ氏はアドバイザーを務めていた頃も、コーチに近い任務を遂行した。

試合中はベンチに座らないが、練習は選手たちとともにし、選手とコーチ陣の架け橋の役割をした。

また、マイケル・キム氏とKリーグの現場を回りながら国内組をチェックし、クリンスマン監督と共有してメンバー選考について議論を深めてきた。

チャ・ドゥリ氏は韓国国内の選手からの信頼が厚い人物だ。持ち味の愉快なキャラクターは、現役時代から現在に至るまで代表に活気を吹き込んできた。

選手時代のキャリアや気質なども、現代の選手たちをサポートするうえで大いに役立っている。2018年ロシアW杯でも韓国代表のコーチを務めていた。

何より、ドイツ語が堪能で、クリンスマン監督をはじめとするコーチ陣とのコミュニケーションも自由にできる。チャ・ドゥリ氏の存在は明らかにチームにとってプラスとなる。

クリンスマン監督が、「アドバイザー」という見慣れない役職でチャ・ドゥリ氏を迎え入れたのも、個人的な関係ではなく影響力の部分だった。

そして今回、危機の状況でクリンスマン監督はアドバイザーと言う職責に限界を感じ、コーチを任せてリーダーシップを分担させる方向に旋回した。

本格的なクリンスマン監督体制の一員となっただけに、チャ・ドゥリ氏の役割と責任はさらに大きくなる見通しだ。

チャ・ドゥリ氏を“犠牲”にしてはならない

ただ、警戒しなければならない部分もある。チャ・ドゥリ氏がクリンスマン監督の「盾の役割」をしてはならないということだ。

クリンスマン監督体制のコーチであるだけに、一定の部分で責任を負う必要はあるだろうが、チャ・ドゥリ氏はあくまでコーチに過ぎない。

すべての決定は監督が行い、責任も監督が負うことが正常だ。認知度や影響力の面で、チャ・ドゥリ氏に過度に負担を負うのは正常ではない。

これまでの韓国サッカー界は、危機的状況で簡単に指導者を犠牲にしてきた。

2014年ブラジルW杯を1年後に控えた2013年、急きょ韓国代表の指揮を任されたホン・ミョンボ監督(現・蔚山現代監督)の事例だけを見てもそうだ。

当時、背中を押されるようにしてW杯で韓国代表を率いたホン監督は、準備不足によってグループステージ敗退という悲惨な結果に終わり、自身の指導者キャリアに大きく傷がついた。

韓国サッカーの象徴であり、アイコンだったはずの彼が、指導者として名誉を回復するまでに実に9年という長い時間がかかった。

チャ・ドゥリ氏も同じだ。本人の決断で韓国代表のコーチ陣に入ったとは思われるが、韓国サッカー界は彼のことをあまりにも簡単に、あるいは無理に消費してはならない。クリンスマン監督もKFAも聞き入れる必要がある。

実際、クリンスマン監督が引き続き“在宅勤務”論争で物議を醸す場合、「事実上、チャ・ドゥリ氏が監督だ」という意見が耳に入ることを肝に銘じなければならない。

監督はもちろん、外国人コーチたちも皆韓国に滞在しないのであれば、韓国国内で選手をチェックできるのは事実上チャ・ドゥリ氏だけだ。

不必要な誤解を招かないためにも、クリンスマン監督体制には業務遂行方式の変化も求められている。

(構成=ピッチコミュニケーションズ)

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