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赤ん坊の父と、新たな大切な人 18歳の母が下した決断 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』8話

  • 2023.9.1
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ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)は、福原遥演じる18歳のキュレーター志望・仲川有栖と、深田恭子演じる40歳のアートスペシャリスト・成瀬瞳子をメインに繰り広げられる、女性の生き方を描いた物語。「妊娠・出産」や「キャリア」など、人生のステージが変わる局面に立たされた女性が、どんな選択をするかに注目が集まる。黒澤祐馬(鈴鹿央士)からの告白に続き、第8話で麻生康介(八木勇征)からのプロポーズを断った有栖の今後は?

お宮参りで見せた“父と母”の顔

有栖(福原)は、大学の先輩・祐馬(鈴鹿)からの告白を「あなたとは付き合えない」と断り、元恋人で海の父親・康介(八木)からのプロポーズにも「あなたとは結婚できません」と告げた。

一時期は、海に父親がいないことについて悩んだ有栖。しかし、康介に「私、コウちゃんが大好きだった。すごく、好きだった。でも、私もう、歩き出しちゃったんだ。大切な人たちと一緒に。あの時の気持ちには、もう二度と戻れない」と伝える毅然(きぜん)とした有栖の姿勢は、覚悟に満ちていた。りんと立ち、揺らぐことはなかった。

きっと彼女はこの先、悩むことも立ち止まることもあるだろう。やはり、海に寂しい思いをさせるのでは、と不安になることもあるかもしれない。それでも、康介とは一緒にならないという答えを出した。瞳子(深田)や父・仲川市郎(安田顕)をはじめ、有栖の選びとった答えを尊重し、応援してくれる人たちがいれば、きっと進んでいけるに違いない。

海のお宮参りに、有栖は麻生家にも声をかけた。相手は、妊娠したと告げるや否や姿を消した元恋人、そして、こちらの気持ちを省みず真っ先に“お金”で解決しようとした親である。有栖には、物語上は描かれていない、さまざまな逡巡(しゅんじゅん)と葛藤があったはず。

それでも、背筋を伸ばし、堂々と海を抱く有栖は母の顔をしていた。そして、自身が贈ったガラガラを鳴らす“息子”に涙を流す康介も、父の表情だった。別れた有栖と康介の未来が交わることはないかもしれないが、それでも、海というかけがえのない存在は、二人の支えになって、歩み続ける力をくれるはず。高校時代をともに過ごした過去まで、悪とする必要はないだろう。

心配させたくない親と、心配したい子ども

一方、瞳子は兄から電話越しに伝えられたことで、母・成瀬貴美子(片平なぎさ)が乳がんを患っている事実を知らされた。

前回7話のレビューにおいて「親自身から病気のことを相談してもらい、ともに悩み、治療方針について話し合うのが家族の形ではないだろうか」と書き、ある意味で貴美子は娘である瞳子を信頼していない、とした。娘には伝えず息子には伝えている点からも、“変に心配をかけさせたくない”という胸の内に秘めた親心も見て取れる。

事実を知った瞳子は、加瀬息吹(上杉柊平)に対し「どうして私、もっと早く気がついてあげられなかったんだろう」と後悔を口にする。故郷である金沢に帰ったとしても、何もできない……、と嘆く瞳子だが、加瀬から「瞳子さんが来てくれるだけで、お母さんは安心するんじゃないですか」と背中を押してもらい、帰省することに。

親は、子どもに心配をかけたくない。そんな心理と対になる形で、子どもは、親を心配したいと思う。いや、瞳子の言葉を借りるなら「ちゃんと娘にも心配させてほしい」のだ。親が病気やケガで生きるうえで重荷を抱えるなら、自分も一緒に背負って軽さを半分にしたい。親が弱った姿を子どもに見せたくないと思うなら、子どもはともに嘆きを共有して、泣きたいものなのではないか。

「120歳まで生きるって約束したよね?」……と、貴美子に確認する瞳子。茶目っ気のある“約束”は、合言葉として二人の心を行き来することで、母と娘が病気に立ち向かっていくためのよりどころになる。このドラマが提示する彼女たちの姿はきっと、多くの親子を勇気付けていくことだろう。

有栖と祐馬の“温度差”

加瀬の告白を受け入れた瞳子。無事に付き合いはじめた二人は、自然と結婚を視野に入れるようになった。順調に進むこの恋愛のかたわらで、有栖に対する祐馬の“恋”はひとつの壁にぶつかっている。

いったんは祐馬からの告白を断った有栖。しかし、祐馬の側はそれで一件落着……とはならないようだ。「有栖って海の父親のこと、まだちょっと好きだったりするんですかね?」と瞳子に尋ねるなど、未練を隠しきれないでいる。

祐馬が有栖への気持ちを募らせていた一方で、有栖から祐馬に向ける視線や態度はどこまでも“友人”のそれだった。18歳で妊娠・出産をした自分に寄り添ってくれる理解者への感謝や、ダンサーになる夢を追う相手への応援の念はあっても、決して祐馬と同じ速度で“恋”には発展していない。こうした温度差は、二人のあいだに溝となってあらわれているようだ。

ダンサーになる最後のチャンスとして、祐馬はオーディションに挑戦。しかし、残念な結果となった。「もし夢を諦めるって言ったら、もう有栖と会う資格ないよな」とポツリもらしたまま切れた電話が、ふたたびつながることはあるのだろうか。

■北村有のプロフィール
ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。

■モコのプロフィール
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。

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