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くどうれいんの友人用盛岡案内 〜手土産編〜 #5 老舗白沢せんべい店の南部煎餅

  • 2023.9.1

岩手県盛岡市在住の作家のくどうれいんさんが、プライベートで友人を案内したい盛岡のお気に入りスポットと、手土産を交互に紹介します。

これまで、盛岡に住んでいるわたしにとって「南部煎餅」という言葉はあまりテンションの上がるものではなかった。祖父母が好んで「こわれせんべい」とされている、南部煎餅の割れたものや、みみと呼ばれる端の硬い部分がたくさん安く売られているものを食べていたが、子供だったわたしにはその素朴な味が退屈に思えて、ポテトチップスやもっと味の濃いお煎餅のほうが好きだなあ、と思いながらぱりぽりと仕方なしに食べていたような記憶がある。個包装で配りやすく、岩手!というイメージも強いだろうと思い、お土産でだれかに買うことはあっても、自分で好んで買って食べることはなかった。

しかし、いま、南部煎餅がわたしの中でアツい。
南部煎餅って、改めて食べると超おいしいのだ。

南部煎餅を売っているお店はいくつもあるけれど、特においしさにハッとしたのが、この紺屋町にある〈老舗白沢せんべい店〉である。

大正時代の消防屯所の面影のある「紺屋町番屋」の向かいにある〈老舗白沢せんべい店〉は、〈BOOKNERD〉や喫茶店〈クラムボン〉なども近いから、紺屋町散策をするならばぜひ寄ってほしい。
一枚一枚手焼きで作られている南部煎餅は、おっ、と声が上がるおいしさがある。
今回は常時並んでいる17種類の中から気になる6種を購入しました。

しょうゆ、削ピーナツ、かぼちゃ、甘くるみ、にんにく、もりおか冷麺!

まずは、ごまのたっぷり入った「しょうゆ」!

ごまの入った南部煎餅がいちばんポピュラーだと思うのだけれど、こちらはそのごま煎餅にお醤油が塗ってある。

裏には「南部煎餅」の文字。かっこいいぜ。

想像以上のぱりぱりさに、歯が驚く。噛み締めるほどにお醤油のうまみが広がる。あれ、南部煎餅ってこんなにおいしいんだっけ。なんかこれ、うまい。うまいぞ。粉がうまい。塩気が絶妙。胡麻がうまい。
シンプルな材料だからこそ、そのおいしさがぐわっと舌を掴んで離さない。からだにいいお菓子だろうな、とひしひしわかる。それでこんなにおいしいなんて。

続いて「削ピーナツ」。子供の時、菓子盆の中に南部煎餅のごまとピーナッツがあると、先に無くなるのはピーナッツのほうだった。ピーナッツのじんわりとした甘さがおいしい。そしてとても香ばしい!

「甘くるみ」と「かぼちゃ」。これは先ほどの2枚とは生地の作りが違ってクッキーのような甘いほろほろした生地になっている。くるみとかぼちゃがぎっしり詰まっていて、どこから齧り付いても当たりのひとくちなのがうれしい。このクッキー生地のおいしさがたまらない。牛乳飲みたい。わたしは玉子ボーロが大好きなのですが、それを彷彿とさせるようなくちどけのよさ、分厚いのにあっという間に食べきってしまう。
クッキータイプの南部煎餅は昭和40年代から普及したものとのこと。みみがぱりぱりした伝統的な南部煎餅とクッキータイプの南部煎餅、ぜんぜんちがうお菓子じゃないかと思うくらいどちらもおいしいのでぜひ両方買ってほしい。

「やばー!なにこれうまっ」と言ったのがこの変わり種2つ。「にんにく」と「もりおか冷麺」である。

「にんにく」は一見無個性だが、ひとくち食べると「!」となる。ジャンクなわけではないのに、しっかりと濃くにんにくで、これはおつまみに最高じゃないか。薄い食感も堪らない。これはビールの好きな人には良いお土産になる。

わたしは盛岡冷麺が大好きなので、「盛岡冷麺味」のお菓子をぜんぜん信用していない。だからこの「もりおか冷麺」の煎餅に対しては(どうせユーモアのものでしょう)と思いつつ買ったのだが、これがびっくりするほど盛岡冷麺なのだ。冷麺の麺に使う粉を100%使用し、冷麺のタレ、冷麺のキムチを塗っているらしい。ってことは円盤になった盛岡冷麵そのものじゃないか。そりゃびっくりするほど盛岡冷麺なはずだ。白ごまが効いていて憎い。ああ、おいしい。

これからのお土産に、白沢せんべいの南部煎餅、完全にアリ。
お土産だけじゃなくて、おやつやおつまみにも最高だ。

侮るなかれ、南部煎餅。

老舗白沢せんべい店

住所:岩手県盛岡市紺屋町2-16
TEL:019-622-7224
営業時間:9:00~17:00
定休日:木曜、第1・第3水曜
ホームページ:https://www.shirasawasenbei.net/

くどうれいん

作家。1994年生まれ。著書にエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『虎のたましい人魚の涙』(講談社)、絵本『あんまりすてきだったから』(ほるぷ出版)など。初の中編小説『氷柱の声』で第165回芥川賞候補に。現在講談社『群像』にてエッセイ「日日是目分量」連載中。最新刊に『桃を煮るひと』(ミシマ社)がある。

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