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表立って言う女性は少ないが…「高学歴」「高収入」「高身長」のうち、昔より一層強化された"結婚の条件"とは

  • 2023.8.31

かつて女性が男性に求める結婚の条件とされた「3高」は今も健在なのか。拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「3高は、結婚相手の条件として真っ先に女性の口から出てくるものではなくなった。しかし既婚率を調べると、明らかに3高の男性のほうが高いという現実がある。3高の中には、近年さらに強化された条件もある」という――。

ビーチでウェディング
※写真はイメージです
どんな人が結婚しやすいのか

どのような人だと結婚しやすのか。

この疑問は、シンプルながらも今パートナーを探している人にとって、大変気になるものです。また、晩婚化・非婚化が進み、それらが少子化の原因の1つだと考えられている日本全体でみても、その答えは非常に興味・関心を集めるものだと言えるでしょう。

「どのような人だと結婚しやすのか」という問いに対して、バブル華やかなりし頃、「3高」という条件をそろえている男性ほどモテるし、結婚できると言われていました。この3高とは、「高学歴」「高収入」「高身長」です。頭がよく、お金があり、身長も高い。確かにモテそうですし、結婚相手としても申し分ないでしょう。

新条件「3C」「3平」とは

この3高ですが、女性が男性に求める条件として納得できるものの、バブル崩壊以降、徐々に人々の口に上らなくなり、ゆっくりと姿を消していきました。フリーライターの武藤弘樹氏によれば、3高の後に、「3C」や「3平」といった新しい条件が登場してきます(*1)。3Cとは、「comfortable(十分な給料)」「communicative(価値観が一緒)」「cooperative(協調的)」です。また、3平とは、「平均的な収入」「平均的な容姿」「平穏な性格」の3つです。3Cや3平は、バブル崩壊以降に徐々に沈みゆく日本経済の状況を反映した新しい基準だったと言えるでしょう。

さて、経済学の観点から見ると、3Cや3平といった基準より、3高のほうが説得力が高いように思えてきます。というのも、3高の要素はいずれも労働市場で高く評価されるものであり、結婚相手としても高い評価につながると考えられるためです。しかし、昨今、3高が必ずしも結婚相手の基準として真っ先に出てくるものではありません。この理論と現実のギャップは気になるところです。

そこで、今回は今でも3高の男性ほど結婚しやすいのかという点を調べてみたいと思います。

学歴が高い男性ほど婚姻率が高い

まず、学歴と結婚の関係を見ていきたいと思います。

学歴と結婚の関係を考える際、「どの時点での婚姻状況を見るのか」という点が重要になります。というのも、学校を卒業する時点が早い人ほど、早めに結婚してしまうからです。高卒のほうが大卒よりも早くに働きだすため、結婚のタイミングも早くなるというわけです。このため、ほとんどの人が学校を卒業している20代後半以降の学歴と結婚の関係を見るのが適切でしょう。

この点を考慮した研究結果を見ると、高学歴層(大卒以上)のほうが、婚姻率が高くなると指摘しています(*2)。また、独身研究家の荒川和久氏は、2020年の国勢調査を用いて、30歳以降になると大卒以上の男性の方が高卒以下の男性よりも未婚率が低く、結婚しやすいと指摘しています(*3)。

これらのことから、今でも高学歴男性ほど結婚しやすいと言えるでしょう。

収入が高い男性ほど婚姻率が高い

次に収入と結婚の関係を見ていきましょう。

収入と結婚の関係はシンプルです。高収入の男性ほど、結婚相手として魅力的に見えます。このため、高収入の男性ほど婚姻率が高くなると予想されます。

実際のデータを見ると、この関係を明確に確認できます。図表1は男性の年収別の婚姻率を示しています。図中では25~29歳、30~34歳、35~39歳のそれぞれの推移を見ていますが、いずれの場合も明らかに年収の上昇とともに、婚姻率が上がっています。

【図表】男性の年収別の婚姻率

また、図表2では関連する指標として、男性の雇用形態別の婚姻率を示しています。この図の結果もシンプルで、正社員ほど、年齢が上がるとともに婚姻率が順調に上昇します。これに対して非正社員の場合、年齢とともに婚姻率が上がるものの、その上昇幅は正社員の半分以下です。

【図表】男性の雇用形態別の婚姻率

このように、正社員と非正社員では婚姻率に大きな差が生じてくるわけですが、その大きな原因は収入です。正社員の場合、年齢(勤続年数)とともに収入が増加する傾向が強いですが、非正社員の場合、年齢(勤続年数)が上がっても収入はほぼ増加しません。これによって正規・非正規間の収入格差が増大し、結婚にも大きな影響を及ぼすと考えられます。

ちなみに、学術的な研究でも、収入が高いほど婚姻率が高くなると指摘されていますし(*4)、非正社員で働く場合ほど、婚姻率が低下すると指摘されています(*5)。また、学校を卒業した後の初めての仕事が非正社員の場合、その後に結婚しづらくなるとも指摘されており、影響が長期にわたることがわかっています(*6)。

これらの結果をまとめると、今でも高収入男性ほど結婚しやすいと言えるでしょう。

身長が高い男性ほど婚姻率も高いし、離婚率が低い

最後に身長と結婚の関係を見ていきましょう。

高身長の男性ほどモテるし、結婚できるというのは、「まあそうかな」と賛同していただけるかと思いますが、この点を明確に検証した学術論文は限られています。この点に関する日本の貴重な研究に、西南学院大学の山村英司教授らの論文があります(*4)。この論文では、「男性の身長が高いほど婚姻率が高いのか」そして「その影響は時代によって変化しているのか」という2点を検証しています。

分析の結果、興味深い2つの事実が明らかになりました。

1つ目は、身長が高い男性ほど婚姻率が高くなるだけでなく、離婚率も低下することがわかったのです。その影響の大きさは、身長が1%増加した場合、婚姻確率が約0.7%増加し、離婚確率が約0.2%低下するというものでした。

身長測定
※写真はイメージです

なぜ身長が高いと婚姻率が上がり、離婚率が下がるのでしょうか。これには2つの理由が考えられます。1つ目は、身長が高いほど所得が高くなるという比例関係が確認されており、結婚し続ける経済的なメリットがあるためです(*7)。2つ目は、身長が高いほど身体的な魅力が高いため、結婚し続ける心理面のメリットがあるためです。

身長の影響は近年強くなっている

分析によって明らかになった2つ目の結果は、身長が高い男性ほど婚姻率が高くなるという傾向が近年より強くなっているというものでした。

山村教授らは1965年よりも前に生まれた男性と、1965年よりも後に生まれた男性を比較し、後者の男性ほど身長の影響が強くなることを明らかにしました。

具体的には、1965年よりも前に生まれた男性の場合、身長の1%増加によって、婚姻確率が約0.6%増加していました。これに対して、1965年よりも後に生まれた男性では、身長の1%増加によって、婚姻確率が約1.1%増加していたのです。世代の違いによって、約1.8倍の差が生まれていました。

この分析結果に対して山村教授らは、女性の好みがより身長の高い男性に傾いたのではないかと指摘しています。

いずれにしましても、今でも高身長男性ほど結婚しやすいと言えるでしょう。

昔と比べて身長が高くても女性の婚姻率は下がらない

山村教授らは、女性の身長と婚姻率の関係についても分析しています。彼らの分析によれば、身長と結婚の関係が世代によって変化していることがわかりました。

具体的には、1965年よりも前に生まれた女性の場合、身長の1%増加によって、婚姻確率が約0.6%低下していたのですが、1965年よりも後に生まれた女性では、身長と婚姻確率には明確な関係が確認できなかったのです。

この結果から、昔は高身長が女性の結婚に不利に働いていたのですが、近年ではその傾向が弱まったと言えるでしょう。

性別役割分業意識が今よりも強かった時代では、身長が相対的にやや低めの女性が好まれていた可能性があり、近年ではその傾向が和らいでいると考えられます。

婚姻届
※写真はイメージです
表立って言われないだけで「3高」は今でも健在である

以上の検討結果から、今でも「3高」は健在であると言えるでしょう。「高学歴」「高収入」「高身長」の男性ほど結婚しやすいという傾向は、変わっていません。

ただ、それでも結婚相手に求める条件として「3高」が明確に挙がっていないわけですが、おそらく「3高」が結婚相手としての基本条件であり、ハッキリと言う必要もなくなったということなのかもしれません。

(*1)武藤弘樹, 2022, 「結婚相手に求める条件は「3高」「3C」から「YSK」へ?翻弄され続ける男たち」ダイヤモンドオンライン, .
(*2)①加藤彰彦, 2011,「未婚化を推し進めてきた2つの力:経済成長の低下と個人主義イデオロギー」『人口問題研究』67(2): 3-39.
②佐々木尚之,2012,「不確実な時代の結婚:JGSSライフコース調査による潜在的稼得力の影響の検証」『家族社会学研究』24(2): 152-64.
(*3)荒川 和久, 2022, 「生涯未婚率『学歴』だけでこうも違う過酷な現実 親の収入低いほど子の未婚率が高いという衝撃」東洋経済オンライン,
(*4)Yamamura, E., Tsutsui, Y., 2017. Comparing the role of the height of men and women in the marriage market, Economics & Human Biology, 26, 42-50.
(*5)永瀬伸子, 2002, 「若年層の雇用の非正規化と結婚行動」『人口問題研究』 58(2); 22-35.
(*6)酒井正・樋口美雄, 2005, 「フリーターのその後─就業・所得・結婚・出産」『日本労働研究雑誌』535; 29-41.
(*7)Case, A., Paxson, C., 2008. Stature and Status: Height, Ability, and Labor Market Outcomes. J Polit Econ. 116(3), 499-532.

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。

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