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ポジティブ強要社会で「悲しみの力」に向き合う 全米ベストセラー著者の新作

  • 2023.8.30

2023年8月25日、スーザン・ケインさんの新著『悲しみの力 「悲しみ」と「切なる思い」が私たちを健全な人間にする』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が発売された。翻訳は坂東智子さん。

本書は、「ポジティブであれ」という圧力にさらされた現代人に向けて、全米ミリオンセラー『Quiet 内向型人間の時代』の著者が、「幸福」の裏にある「悲しみ」と向き合う力について語るもの。

著者によると、今のアメリカ社会は「常にポジティブであれ」という社会的圧力が強く、たとえつらい感情に見舞われても、悲しみは心の中に隠しておくべきであるとされ、職場や学校では常に社交上手でポジティブであることを求められるという。

著者はこのポジティブ一辺倒の社会に対して、「ビタースイート」であることのメリットを説く。「ビタースイート」とは、「憂うつ質」のことを指す言葉で、この性質をもつ人は、「切なる望み」や「心のうずき」、「悲しみ」を抱きやすく、時間の流れや世の中の美しさを鋭く感じ取ることができるとされる。たとえば、以下のような気持ちを抱く人がそれに当てはまるとされる。

「元来内向的な性格だと自負しているが、無理に明るく振る舞うことがある」
「ネガティブな感情は押し殺さなければ、と考えている」
「つらい経験をどう乗り越えればいいのかわからない」
「人のポジティブな面ばかりを求める現代社会に疑問を感じる」

本書では、このような「悲しみ」や「切なる思い」の知られざる効力が豊富に紹介されている。「悲しみ」や「切なる思い」を否定するような社会の中で、「苦痛」を「創造力」や「超越する力」、「愛」に転換する考え方を学べる一冊だ。

【目次】
第1部 「悲しみ」と「切なる思い」
第1章 「悲しみ」は何の役に立つのか?
第2章 私たちはなぜ「完全で無償の愛」を切望するのか?(そのことと、私たちが「悲しい歌」や「雨の日」、「神聖なもの」が大好きなこととは、どんな関係があるのか?)
第3章 「創造力」は「悲しみ」や「切なる思い」「超越する力」と関係があるのか?
第4章 愛を失ったときには、どうしたらいいのか?
第2部 「勝者」と「敗者」
第5章 多大な「悲嘆」の上に成り立った国家が、どうやって「笑顔」が当たり前の文化を築いたのか?
第6章 職場などで「ポジティブ」を強要されるのを乗り越えるには、どうしたらいいのか?
第3部 「人の死」と「命のはかなさ」、「死別の悲しみ」
第7章 私たちは永遠に生きることを目指すべきか?
第8章 私たちは「死別の悲しみ」や「命のはかなさ」を吹っ切ろうとすべきなのか?
第9章 私たちは親や祖先の「苦痛」を受け継いでいるのだろうか? もしそうなら、何世代も前の苦痛を転換できるだろうか?

■スーザン・ケインさんプロフィール
プリンストン大学、ハーバード大学ロー・スクール卒業。ウォール街の弁護士を経て、ライターに転身。『ニューヨーク・タイムズ』紙、『タイムズ』紙、PsychologyToday.com.などに記事を寄稿している。メリルリンチや法律事務所や大学などで交渉術の講師も務める。リンクトインによる「世界のインフルエンサー」トップ10に上げられた。 初の著書『内向型人間の時代』は世界の40を超える言語に翻訳され、数多くのベスト作品リストに名を連ねた。

■坂東智子さんプロフィール
ばんどう・ともこ/上智大学文学部英文学科卒業。訳書にオーガス&ガダム著『性欲の科学』(CCCメディアハウス)、マイク・ダウ著『脳が冴える最高の習慣術』(大和書房)、トム・ラス著『元気は、ためられる』(ヴォイス)、アルフレッド・アドラー著『子育てで大切なこと』(興陽館)などがある。

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