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最近の韓ドラ・ワールドで『コクドゥの季節』はどこが象徴的だったのか

  • 2023.8.26

韓国は世界のエンタメ業界において最多レベルでドラマを送り出している国だ。地上波とケーブルチャンネルで合わせて本当に多数の作品が制作されている。

なぜこれほど多作のスタイルを保てるのか。それはひとえにドラマが大好きな国民性のおかげである。

とにかく、韓国人は自分の周りの人たちへの関心度がとても高い。たとえば「隣の家の箸の本数まで知っている」と称されるほど他人のことを知りたがる。そういう嗜好から「登場人物の個々の人生まで幅広く描いたドラマが好まれる」という現象が生み出されており、国民性に合った数多くのドラマが今日も制作されている。

もちろん、ドラマの傾向は時代のトレンドに左右されていく。20年前であれば「記憶喪失」「出生の疑惑」などが大きな題材となっていたし、10年前なら奇抜なアイディアのラブコメが人気を博していた。

そして今の韓国ドラマ界を見渡すと、「前世の縁」「タイムスリップ」「輪廻転生」といったキーワードが目立っている。

現実社会をリアルに描く作品が普遍的なのは確かなのだが、その一方で「現実にありえない設定をいかに想像力で補っていくか」というドラマも注目を集めている。

ドラマ『コクドゥの季節』(写真提供=NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2023MBC)

しかも、情が深い韓国社会を反映して必ず浪漫性がある。いわば「時空を越えたファンタジー・ロマン」という斬新なジャンルが形成されているのが現代の韓国ドラマなのである。

そんな中で、ひときわ注目を集めているのが『コクドゥの季節』だ。前世の悲劇的な縁を持った男女がファンタジーな世界観に彩られて現世で再び巡り合ってラブロマンスを展開する、という流れが興味深い。

特に、メインのエピソードを引っ張るのが、キム・ジョンヒョンの演じるキャラクターだ。999年前にはオ・ヒョンという武士であった。彼は愛するソリ(イム・スヒャン)と将来を誓い合うが、彼女は政略結婚に翻弄されて自分の元を去っていった。

ドラマ『コクドゥの季節』(写真提供=NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2023MBC)

それによってオ・ヒョンは命を落とし、ソリもまた自害の道を選んでしまう……こんな悲劇的な別れを経た2人が現代ではどのように甦ってくるのか。そこにこのドラマの重要な伏線がある。

結局、オ・ヒョンは命を落としたとはいえ、死後の世界でずっとソリを待ち続けたために、神の怒りに触れて、人間に天罰を与える死神コクドゥにされてしまった。これほど辛い運命はない。しかし、必ず救いが残されている。

それが、「コクドゥがソリの生まれ変わる女性から愛を告げられたら永遠の呪いから解かれる」という神の配慮だ。

こうして現代に物語が移っていくが、苦難にさらされていたハン・ケジョル(イム・スヒャン)を救ったのが外科医ト・ジヌ(キム・ジョンヒョン)であった。それなのに、この男は陰謀に巻き込まれて殺されてしまう。

ドラマ『コクドゥの季節』(写真提供=NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2023MBC)

しかし、コクドゥがト・ジヌに乗り移り、前世の引き裂かれた男女の縁が現代にも再現される下地ができた。

ここで大事なのは、コクドゥはひたすらハン・ケジョルを救うための存在であったということだ。彼は前世で叶わなかった愛を現世において復活させることができる唯一のキャラクターであり、ハン・ケジョルの救世主に他ならなかったのだ。

こうして主人公カップルが輝かしいメインストーリーを飾り、同時に、2人を取り巻く様々な人物が生き生きと動き出していく。

たとえば、ハン・ケジョルの弟ハン・チョル(アン・ウヨン)は凶悪事件の捜査を担当する刑事として登場するが、彼がト・ジヌのかつての恋人テ・ジョンウォン(キム・ダソム)と丁々発止のやりとりを続けていってドラマを大いに盛り上げていた。

ドラマ『コクドゥの季節』(写真提供=NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2023MBC)

また、コクドゥをサポートする役目として半神(半分だけ神)の2人(オクシン〔キム・イングォン〕とカクシン〔チャ・チョンファ〕)が登場する。

2人はコクドゥが目的を果たすために送り込まれてきたのだが、半分は人間社会でドロドロとした人生を生きているので非常に世俗的で愉快だ。こうした人物設定にドラマの多面性がうかがえる。

ドラマ『コクドゥの季節』(写真提供=NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2023MBC)

さらには、法律の裏を突いて悪事を重ねている悪人たちも登場してストーリーに波風を立てていく。

結局、ドラマが一番面白いのは、縦軸に優れたテーマ性が発揮されていて横軸で興味深いキャラクターが物語を彩っていく、という展開なのである。

もっと具体的に言うと、『コクドゥの季節』では前世の叶わなかった恋を現世で華麗に復活させるという「時空を越えたファンタジー・ロマン」の精神性が貫かれており、そこに「第二のラブロマンス」「悪役を退治する勧善懲悪の世界」が巧みに重なってきている。

ドラマ『コクドゥの季節』(写真提供=NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2023MBC)

まさに「テーマ性」と「展開」が見事に融合した象徴的な作品が『コクドゥの季節』だと言えるだろう。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

☆ドラマ情報
『コクドゥの季節』
演出:ペク・スチャン/キム・ジフン
脚本:カン・イホン/ホ・ジュンウ
出演:キム・ジョンヒョン、イム・スヒャン、アン・ウヨン、キム・ダソム、キム・イングォン、チャ・ヨンファなど。

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