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検査精度99%は嘘だった!?病気で“何度も再検査”するワケを【数学で解説】

  • 2023.9.27

日常生活には「確率」の問題が溢れています。

そして、その結果は意外にも直感に反していることが多く、人間の確率に対する感覚というのは如何にいい加減かということに気付かされます。

さて、今回は次のような問題を考えてみましょう。

問題

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ある工場では、1日に製品を10万個、製造しています。しかし、製造した製品のうち0.1%は不良品が発生します。

見た目だけでは良品なのか、不良品なのかを判断できないため、製造レーンの最後に簡易検査をおこない、不良品を取り除きます。

不良品を取り除く簡易検査もカンペキではなく、その精度は99%です。

つまり、99%の不良品はきちんと取り除かれるが、1%の不良品を見逃してしまいます。
また、99%の良品は検査を通過しますが、1%の良品は、良品であるにも関わらず不良品と間違った判断をされ、取り除かれてしまいます。

さて、このとき、不良品であると取り除かれた製品のうち、本当に不良品である確率はいくらでしょうか。

(※正確な確率計算は、少し複雑になるため、おおよその確率を推測してみてください。)

 

不良品を取り除く簡易検査の精度は99%と高いように感じます。

ということは、不良品として取り除かれた製品は、ほとんど不良品のはず!・・・と思いますよね。

実は、そうでもないのですが、皆さんの予想は何パーセントくらいでしょうか。

 

さて、答えは約9%です。

簡易検査によって、不良品として取り除かれ製品のうち、約9割は良品なのです!意外な結果ですよね!

解説

こんなに間違いがあるなんて、精度99%が嘘だったのでは!?と思われるかもしれませんが、そういうわけではありません。

良品、不良品、そして検査によって取り除かれる製品がいくつあるのかを、実際に計算してみましょう。

まず1日に製造される製品は10万個です。そのうち、不良品は0.1%しかありません。(0.1%=0.001)

10万×0.001=100

つまり、10万個のうち、不良品は100個、良品は9万9900個ということになります。

これは見た目だけでは判断できないので、簡易検査で不良品を取り除きます。

不良品100個のうち、正確に不良品と判断されるのは99%です。したがって、99個はきちんと取り除かれます。残念ながら1個だけは、不良品でありながら市場に流通することになります。

また、9万9900個の良品も検査をされています。このうち99%はきちんと検査を通過し、市場に流通します。その数は99,900×0.99=98,901個です。

残りの1%は、良品であるにも関わらず、不良品として取り除かれることになります。その数は99,900×0.01=990個です。

以上をまとめると、次のようになります。

市場に流通する良品→98,901個
良品であるが取り除かれた製品→990個
不良品であり取り除かれた製品→99個
市場に流通する不良品→1個

検査によって取り除かれた製品は、全部で1089個です。(990+99)しかし、実際には不良品は99個しかありません。

つまり、不良品であると取り除かれた製品のうち、本当に不良品である確率は、
99÷1089=0.09・・・
よって約9%ということになります。

これは、なにも検査が不正確ということではありません。きちんと精度99%の検査をしています。

市場に流通している製品で見ると、不良品は0.001%しかありません。

まとめ

確率というのは、人間の感覚だけでは判断ができないことがあります。きちんと数式で計算すると、意外な結果になりますね。

今回紹介した問題は「ベイズの定理」という有名な理論によって成り立っており、工場での検査だけでなく、現代医療では重要な考えになっています。

病気の検査をしたときに、「間違っていました」だと困りますよね。そのため、実際の病気の検査は、一度の検査ではなく、複数の検査を行って結果を診断します。

意外なところに確率は潜んでいますね。


文・監修:SAJIMA

日本国内外の学校、学習塾で数学・理科の講師として幼児から高校生までを指導。現在はフリーランスとして独立し、オンラインを中心に授業を展開している。子供への学習指導だけでなく、大人向けの数学講座も開講し、算数・数学の楽しさを広く伝える活動を行っている。日本数学検定協会認定「数学インストラクター」。

編集:TRILLニュース