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この夏観たい映画監督は、エドワード・ヤン一択!『恋愛時代』が4Kリマスター版で蘇る

  • 2023.8.18
映画『エドワード・ヤンの恋愛時代』

『エドワード・ヤンの恋愛時代』の4Kリマスター版が、ここ日本でもこの夏公開されることになったが、2015年の『恐怖分子』を皮切りに、『牯嶺街少年殺人事件』『台北ストーリー』と続いたエドワード・ヤンのリマスター版の上映は、本国台湾のみならず、日本でも数多くの映画ファンを、わざわざ劇場にまで足を運ばせることになった。

それは、エドワード・ヤンの作品が、映画ならではの黒みを生かした夜の暗い画面が多く、VHSやDVDの画質では十分な観賞に耐えられず、劇場で観るべき映像であったからだ。そして、4時間休憩なしの『牯嶺街少年殺人事件』の上映を、まさに「体感」した者は思った、「これは人生を変える映画」だと。

この映画は、1960年代の白色テロ時代の台湾の政治状況に迫りながらも、青春の痛みを描いた普遍的な「カミング・オブ・エイジ」映画になっているところがすごいのだ。そして、その歴史と青春の光と影のコントラストを、鮮烈な映像と音響で描くエドワード・ヤンの映画は、いつの時代の若者にも強烈な印象を残す。舞台を現代に移した『恋愛時代』は、『牯嶺街少年殺人事件』と、その後の『カップルズ』をつなぐ映画だ。そう、次は『カップルズ』が待っている。

©Kailidoscope Pictures

Information

『エドワード・ヤンの恋愛時代』

エドワード・ヤンが『牯嶺街少年殺人事件』のあと舞台を90年代に移し、経済的に急成長した台北に暮らす若い男女が、儒教的道徳観と、新しく入ってきた西洋的個人主義の狭間で葛藤する2日半を描く。4Kリマスター版の上映。8月18日、全国順次公開。

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エドワード・ヤン

エドワード・ヤン

1947年中国・上海市生まれ。映画監督。49年に台湾に移住。83年に『海辺の一日』で長編監督デビュー後、ホウ・シャオシェンらと台湾ニューウェーブを牽引し、『牯嶺街少年殺人事件』(91年)など7作の長編映画を製作し、2007年に59歳で逝去する。©Kailidoscope Pictures

若手アーティストが観る、エドワード・ヤン

イラストレーター高 妍

2016年にBBCが企画した「21世紀の偉大な映画ベスト100」の8位に台湾映画が入っていて、誰かと思って見てみると、それがエドワード・ヤンさんの映画で、それから興味を持ってほとんどの作品を観たんです。彼の作品の中で、今も一番好きなのはその『ヤンヤン 夏の想い出』で、原題の『一一』も、並べると数字の「二」にも見えてとても示唆的です。

私はエドワード・ヤンさんがつける映画のタイトルが好きで、今回初めて観た『恋愛時代』の英題「Confucian Confusion」のように、私たち台湾人も、まだ華人の儒教的な道徳観にとらわれすぎているところがあるんですが、原題の『独立時代』のように、むしろ自分たちそれぞれの考えで生きていくべきじゃないかというメッセージが込められているように感じられて素晴らしいなと思いました。

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高 妍

高 妍(イラストレーター)

ガオ・イェン/1996年台湾生まれ。現在は日本を拠点に活動。主な作品に『緑の歌 -収集群風-』、『猫を棄てる 父親について語るとき』の挿画。現在『隙間』という漫画を連載中。

ミュージシャン、映画監督・甫木元 空

エドワード・ヤンの映画を知ったのは大学生の頃だったと思います。『牯嶺街少年殺人事件』というすごい映画があると聞いて、その時はVHSのビデオでしか観られず画面が暗くて全然見えませんでしたが(笑)。その後4Kリマスター版でようやくスクリーンで観ることができて感動しました。あれだけ暗い画面をあえて撮ろうとする監督の覚悟みたいなものもすごく感じられます。

エドワード・ヤンの映画では、今回上映される『エドワード・ヤンの恋愛時代』もそうですが、みんなどこか不安を抱えている。そんな登場人物たちがぶつかり離れていくさまを、ワンカットの中で動線や目線を何本も引くことで、そして、車やエレベーターのような装置を巧みに使うことで見事に描いています。この運動こそ「映画」なんだと改めて考えさせられる監督です。

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甫木元 空

甫木元 空(ミュージシャン、映画監督)

ほきもと・そら/1992年埼玉県生まれ。2016年に青山真治らがプロデュースした『はるねこ』で長編映画監督デビュー。2019年には2人組のバンド〈Bialystocks〉を結成した。

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