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「声が小さい」と注意すれば「のどが痛いから…」最近増えている"言い訳がすぎる新人"に刺さる注意の仕方

  • 2023.8.17
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周囲に気を配った振る舞いができない新入社員を教育するにはどうすればよいか。人材育成コンサルタントの松崎久純さんは「おかしな態度については指摘して気づかせることが必要だ。ただそれにはコツがある。実演を通じて、周囲から自分がどう見えているかを丁寧に説明することがポイントだ」という――。

あいさつや返事もできない新入社員

3年近くも続いたパンデミックの影響でしょうか。新入社員のコミュニケーションスキルのレベルの低さに驚いています。あいさつや返事もできない社員が多く、声は小さくて聞こえません。そんな調子ですから、周囲に気を配った振る舞い方など期待できたものではありません。今は、どの会社でも同じようなものでしょうか――30代の新入社員研修担当者の方からのご相談です。

私は4月から新入社員研修の講師をするのが恒例のパターンで、毎年何社かで受け持っています。

4月中に数日だけ担当する会社もあれば、お盆休みの頃まで継続する会社もあります。ちょうど8月のこの時期まで、新入社員の方々と接するのが、仕事の一部として定着しています。

パンデミックの期間中、新入社員研修は、特殊な状況下で実施されましたから、新入社員の振る舞いや言動について、会社側は、かなり大目に見ていたと思います。

しかし、今年4月からの研修では、ほぼすべてがパンデミック前の状態に戻ったことから、研修の担当者たちが、新入社員の振る舞いについて、気になることを再び指摘するようになりました。

「注意」と書かれた札を持つ手元
※写真はイメージです
パンデミックの影響でコミュニケーションスキルが低下している

彼らが口にすることで共通するのは、パンデミックの影響で新入社員のコミュニケーションスキルが低下しているというものです。

「パンデミックが学生から人と接する機会を奪ったために、彼らはスキルを身につけられなかった。それゆえに……」と嘆かれたのが、今年度の新入社員研修時の特徴でした。

「あいさつ、返事をしない」「気が利かない」「積極的に動くことができない」。研修の担当者たちが口にするのは、こんなところですが、それぞれが大きな問題です。

無表情で受身型であることを何とも思っていない

専門家の私から見ると、これらの事柄は、パンデミック以前から指摘されていたことで、パンデミック前の新入社員と大きな違いはないものの、以下の2つの点は確かに目立ちます。

1つは「無表情」な新入社員が多いことです。人の顔をじっと見て、指示や反応を待っていることが多いのです。

無表情な人というのは昔からいます。接客業であれば考えにくいと思いますが、技術系の職種の人材などには、めずらしくありません。

この「無表情」とは、「愛想がない」ことを意味します。

しかしながら、ここで取り上げている新入社員の「無表情」とは、「愛想がない」こと以外にも、「受身型」であることを意味します。

彼らは、様子をうかがって、人から何か言われるのを待っています。指示を待ち、他の人の様子や反応を見てから行動します。

自発的に自分から声を掛けて何かをしようとはしない。

たとえば、研修を行っている部屋の換気をしようと、全体に声を掛けるような人は、なかなか現れないのです。

彼らは、自発的に考えて行動するように言われて、はじめて自発的に考えて行動しようとします。

受身型の新入社員が多いのも、今はじまったことではありませんが、パンデミック後の特徴は、このように無表情で愛想がなく、そして受身型であることを「特に何とも思っていない人が増えた」ように見えることです。

白い仮面を着用したビジネスパーソン
※写真はイメージです
叱られるとすぐに言い訳してしまう

もう1つは、注意を受けたり、叱られることに慣れていない人が多いことです。彼らは、やはり人と接する機会が少なかったのだろうと思えます。

人とコミュニケーションを取る、すなわち社会性を身につけるためにアルバイトをしたり、課外活動に参加したりする。そうした経験が乏しかったという印象を受けます。

同じ新入社員でも、スポーツをやっていた人には、こう感じることは少ないのですが……。

彼らは特徴として、注意を受けると正当化しようとします。

彼らは、「声が小さい」と言われると「のどが痛いので」と言います。グループワークの最中に、立ち上がって飲み物を飲んでいるので注意すると、「熱中症気味だから」という具合です。

本当のところは、確認のしようがありませんし、どちらであっても注意することに変わりはありませんが、ともかくまず注意を受けたことについて謝ればいいものを、言い訳をし、自分に落ち度はなかったと述べようとします。

話を聞くべき立場だと認識できていない

彼らには、叱られるのも仕事のうちという意識はないようです。

こういう従業員が、顧客などからの苦情をしっかりと聞けず、その態度で顧客を憤慨させ、クレームを大きくします。苦情を言いたい側、注意をしたい側の話を聞くべき立場にあることを認識できないのです。

「なぜクレームをされているか、なぜ注意を受けているか、お話をうかがって理解できました」という姿勢を見せることが大事なのにもかかわらず、「今日はのどが痛いので」と反射的に答える。

それを聞いて、多くの研修担当者も「そんなことを言ってどうするつもりなのか」と感じます。お客さんに「声が聞こえにくいです」と言われたら、「今日はのどが痛いのです」と答えるつもりなのでしょうか。

この特徴も、やはりパンデミック前からあるのですが、パンデミック後にはさらに目立つように思えます。

研修担当者を含む多くの先輩社員が(そして新入社員でも、多くの人たちが)「そんな反応をすべきではない」と思っていますが、上記のような振る舞いをする新入社員が、それを「恥ずかしいことに感じなくなっている」ように見えるのです。

手を額に当てて、後悔している男性
※写真はイメージです
おかしな態度はガンガン指摘してよい

さあ、ここで改善策の提案です。

新入社員を教育する側としては、彼らが「対人コミュニケーション」に不慣れであることをシリアスに受けとめ、彼らが周囲からどう見えているかを丁寧に説明してあげることが必要になります。

一部には、新入社員に「おかしい」と指摘をしたり、注意したりするのではなく、褒めて伸ばすべきという考え方があるようです。

もちろん、感情にまかせて怒ればいいわけではありません。しかしながら、新入社員の多くも、不適切な振る舞いをしても叱られもしない研修には、大いに疑問を持つものです。

適切でない振る舞い、おかしな態度については、ガンガン指摘することが必要です。ただそれにはコツが必要になります。

仏頂面の人に接客されたらどう感じるか

研修中には、振る舞い方の違いが、いかに異なる印象を与えるかについて、演習を通じて理解してもらいます。

あいさつの仕方、返事の仕方、話し方、立ち振る舞いの違いで、どんな感触を受けるかを新入社員に体験してもらうのです。

私の担当する研修では、接遇(受付から応接室へ案内するといった手合いのもの)の演習をすることで、その理解を高めてもらいます。これが非常に効果的なのです。

たとえば100円ショップで、店員さんに「○○はどこにありますか」と尋ねたとしましょう。

私自身の経験ですが、店長というバッジをつけた人が、仏頂面でレジカウンターの裏手から出てきたと思ったら、私のほうには近寄ってこずに、そのまま手を上に挙げて、足早に店の奥のほうへ歩いていきます。

私との距離は広がっていきます。手を上に挙げているのは、どうやら「ここにいる」という合図のようです。

この店長は、店長を追いかけて速く歩こうとはしない私に、イヤな顔をしているように見えます。相変わらずにこりともせず、仏頂面のまま狭い通路を進み、私がようやく近づくと、探していた商品から少し離れた位置から「あのあたりです」と言いました。

女性店員はデジタルタブレットを使用して、にこやかに顧客に説明している
※写真はイメージです
丁寧な人に接客をされたらどう感じるか

さあ、これを丁寧な接客を心がけている店員であればどうするのか。新入社員に演習をしてもらいます。

まずは表情から違いが出てくるはずです。先程の店長は、いわゆる腰の低い人ではありませんでした。姿勢や歩き方など、すべてに矯正が必要です。

商品の置かれた場所まで案内をするときには、一旦お客様の近くまで行き、(自分のペースではなく)そのお客様のペースに合わせて歩きます。

「こちらへお願いします」などと声を掛けながら、自分の手の平を上に向けた格好で、通路を誘導します。歩いていた通路から、別の通路へ入るような場合は、「こちらの通路です」などと声を掛けながら案内するのが常識です。

「ちゃんとやりなさい」だけではわからない

どうすれば先程の店長のように、手を上に挙げたまま無言で歩いて行ってしまうことができるのでしょうか。

このときには、声の大きさや、にこやかさにも注意しながら演習し、心構えに加えて、技術面についても詳細まで説明します。

お客様よりも小さな声でしか話さない新入社員もいますが、彼らは自分の声のほうが小さいことや、それが与えるネガティブな印象のことなど、考えたこともないのです。こうした点も解説していきます。

人が実演している様子、よい例、わるい例を見ることで、新入社員は理解を深めていけるものです。

腰を低くするとはどんな感じか。「こちらへどうぞ」とは、どんなふうに言うとよいのか。後を付いて来ていただくのに、どんなジェスチャーを使うべきか。一流の立ち振る舞いとはどんなふうか、グループワークによって詳細まで考察していきます。

こうした演習を行うことで、受付から応接室への案内も相当に上達し、対人コミュニケーションについて考えるきっかけになります。

「ちゃんとやりなさい」と言うだけとは違うことが、おわかりいただけるでしょう。

笑顔があふれる会議室
※写真はイメージです
客観的な評価を新入社員に伝える

「あいさつ、返事をしない」「気が利かない」「積極的に動くことができない」と言われて、気分のよい新入社員がいるものではありません。

しかし、先輩社員たちがそのように感じていたら、それは伝えなくてはなりません。

その際、私の場合は、4月から夏にかけて全国的に行われている新入社員研修の中で、目の前にいる新入社員たちのパフォーマンスが、どういうレベルにあるかを率直に話すことにしています。

彼らを非難したりするためではありません。

全国でほぼ同時に実施される新入社員研修の中で、客観的に見て、どんなレベルと言えるのか、そのように評価する根拠も伝えてあげるわけです。

この話には、新入社員は非常に関心を持って聞き入ります。

パンデミック前と後では、新入社員の何が変わったと(会社が)感じているかについても、彼らが理解できるように話します。

そうすることで、パンデミックという特殊な状況が、自分たちのコミュニケーションスキルにどういう影響を及ぼした(と考えられている)のかわかり、新入社員研修から学ぶべきことについても、一層よく考えるようになるのです。

時間をかけて取り組むことが大切

相談者の方のご心配は、もっともなことです。しかし同時に、それは解決の方法が確実に存在しているテーマでもあります。

新入社員の振る舞いや言動は、もともと一瞬で変わるものではありませんから、ある程度の時間をかけて取り組む意識を持たれるとよいでしょう。

新入社員研修が成功したときには、研修開始時よりも、彼らとの信頼関係が出来上がっていることに気づくでしょう。

松崎 久純(まつざき・ひさずみ)
サイドマン経営・代表
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』『英語で学ぶトヨタ生産方式』など多数。

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