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日本食材を愉しむイノベーティブ。外苑前〈JULIA〉のnaoさん|星子莉奈のMeet the Chef

  • 2023.8.16

レストランのプロデューサーやディレクション、PR、ライターとして活躍する星子莉奈さんが、気になる店のシェフをクローズアップする短期連載。第9回は、外苑前にある〈JULIA〉のnaoさんの登場です。

〈JULIA〉のnaoさんにインタビュー

みなさんこんにちは。「暑い」という言葉では足りないくらいの猛暑日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。休日くらいはクーラーの効いた部屋でNetflixでも観ながらダラダラ過ごしたいな…という思いを抱えつつも、夏を満喫したい気持ちが先行し、お祭りやフェスに行ったりと駆け足気味に夏をかき集めている私です。

さてさて、今回は連載初となる女性シェフ、〈JULIA〉のnaoさんが登場です。naoさんとソムリエの本橋健一郎さん夫妻で営む〈JULIA〉は、日本の食材とワインにこだわったイノベーティブレストラン。

左からnaoさん、本橋健一郎さん。仲睦まじいお二人の2ショット。
「本橋さんに恥じぬ料理を作りたい」(naoさん)。

食に貪欲だったお母さまの影響で、幼い頃から食べることが大好きだったnaoさんは、大学卒業後に飲食店のPR職に就いたそう。
「PRとしてレストランに携わっていく中で、もっと現場に入って自分にしかできない仕事に挑戦したいという気持ちが強くなっていきました。そんなときに知り合いから『沖縄でリゾートホテルを立ち上げるから一緒にやらないか?』と声をかけてもらい、思い切って会社を辞めて沖縄に行くことにしたんです」。
そのリゾートホテルの立ち上げを仕切っていたのが、公私ともにパートナーとなった本橋さん。
「はじめて本橋さんのサービスを受けたときは心が震えました。親しみがあって、ユーモアいっぱいで、それでいて一つひとつの所作がとても美しくて。完璧を超えて感動を生む“本物のサービス”に感銘を受けて、たくさんのゲストに感じてもらわなきゃって使命感を感じました」。

「泣きながら包丁を握った日もありました」と、naoさんは苦難の日々を振り返る。

それからnaoさんは本橋さんが活躍できる舞台を用意するために、自身がシェフになる覚悟を決めたと言います。
「全くの未経験だったので、まずは本橋さんが持っていたレシピを再現することからスタートしたんですが、頭の中でイメージした通りに出来上がらなくて失敗の連続でした」。
それでも諦めずに葛藤を続け、二人三脚でなんとかお店をオープンしたと言います。
「お店を開店してからは、お客様の笑顔に救われる日々が続きました。やっぱり、目の前のお客様が喜んでくれるのが何よりうれしいんです。〈JULIA〉を楽しみにしてくれているみなさんのおかげで、私自身も自信を持って料理と向き合えるようになりました」と目を輝かせながら話すnaoさん。

本橋さんのお母様の愛称から名付けられた店名。ごはんを作って人を笑顔にするのが大好きだったというお母様への敬愛を込めて。

「旅するJULIA」と題して、日本各地のレストランとコラボレーションしているお二人。
4月にイベントを開催した和歌山のイタリアン〈Villa Aida〉は、シーズン毎に2人で通い続けている大切な一軒だと言います。
ある日、〈Villa Aida〉の小林寛司シェフから「naoちゃんはもう卒業。卒業記念にシェフとして、一緒にイベントをやろう」と声をかけてもらったことがきっかけで、海の見える特設会場で〈Villa Aida〉×〈JULIA〉の特別ディナー“The Echo Table”を開催したそう。

小林シェフがビーツで描いたというアート。お店の一番目立つ場所に飾られています。

小林シェフから「料理への向き合い方やシェフとしての在り方を学ばせていただく貴重な機会となった」と話すnaoさん。
各地の食材と出会って、シェフたちから刺激を受け、成長をすることでお客様をより笑顔にすることができる。旅する〈JULIA〉は、そんな循環を生んでくれている気がします」。

ワインから受けたインスピレーションをもとに、年間150皿のレシピを開発しているというから驚き。

半年に一度、専門学校で講師としても活動されているnaoさん。
「女性の生徒さんが多いので、女性シェフのキャリアや心の持ち用など、人生観についてお話することが多いです。それから、“女性ならではの感性をどうお皿で表現するのか”一緒に料理を作ることで、伝えられたらいいなと思っています」。

涼しげな水面をイメージたという一皿。フランスの画家、クロード・モネの『睡蓮』を想起させます。

naoさんの美的センスが投影されたまばゆい宝石のような一皿は、発酵したパイナップルエキスを使用したフロマージュブラン。表面にはホッキ貝や蓴菜が散りばめられています。
「色合いと四季を意識して作り込んでいるので、旬のフルーツを軸にすることが多いです。今回はパイナップルのニュアンスを含んだワインから連想したので、合わせてお料理にもパイナップルを使用しました」。

食感と味わいにときめきが止まらず、思わずにんまり。

早速、実食!まずはホッキ貝や蓴菜の楽しい食感にはじまり、その後パイナップルとチーズの甘酸っぱさが口の中いっぱい広がります。“フレッシュハピネス“と思わず叫びたくなるような一皿でした(笑)。
添えられたワインは、レストラン〈OSTERIA ENOTECA DA SASINO〉のオーナーさんが、自ら造られている白ワイン。南国が目に浮かぶような果実味の強いワインで、ほのかにパイナップルが香ります。

常夏をイメージしたという陽気な気配を纏った一皿。
大船渡をイメージされて描かれた造り手のセンスを感じるエチケットも素敵。
この一口が南国へと誘います。

二皿目はマンゴーとアンコウが登場。熟成してローストしたアンコウを、紫たまねぎとハラぺーニョを加えてサルサしたマンゴーと共に食すエキゾチックな一品です。ソースはココナッツに白ワイン、そこに少しクリームを加え、仕上げにバジルオイルを垂らしています。
そして、本橋さんのセレクトは岩手県大船渡のシャルドネを主体とした白ワイン。こちらもトロピカルな味わいで今の季節にぴったり。
しっとりアンコウにとろっとマンゴーをのせてお口へ。さっぱりとしたアンコウに刺激的なマンゴーがアクセントを与えてバランスのいい味わいに。いただいたワインを一口含むとトロピカルな味わいが前面に出て、目を瞑るとバカンスへトリップした気分に。

10月から新店舗に移転予定。
「お家に帰って、シャワー浴びながら“なんか今日楽しかったな“って思ってもらえるのが理想です」と話す。

最後に今後の〈JULIA〉についてお話しを伺いました。
「実は秋に店舗を移転します。場所は現店舗の目の前なので住所は同じなのですが…(笑)」と、うれしそうに話すnaoさん。
するととなりにいた本橋さんが「私が活躍できる舞台を用意したいという彼女の想いからこのお店はスタートしたんですが、いつの間にか逆転して、僕が彼女のやりたいことを全部叶えてあげられる場所を造りたいと思ったのが移転のきっかけなんです」と、はにかみながら教えてくれました。

新店は2階建てで、1階がラウンジ、2階がレストランになります。まずはラウンジで軽く一杯嗜んでいただいて、その後レストランにご案内します。コースは今のスタイルを崩さずに、使用したことのない新しい食材も積極的に織り混ぜて昇華させていきます。ワインは国産ワインをベースに、よりグレードの高い各国ワインも取り揃える予定です。2軒目に行かず、〈JULIA〉で完結できるようにBARメニューなんかも用意したいなと思ってます」。

今まで以上に、日常と切り離された特別な空間に仕上がるであろう新生〈JULIA〉の誕生が待ち遠しいです。

チャーミングなお人柄で周囲の人を魅了するnaoさん。同じ女性としても憧れます。

お二人が奏でる穏やかな空気に包まれながら、愛が宿ったジュエリーのように煌めくお料理と、新しい気付きを与えてくれるワインを堪能する時間は、訪れたゲストに“レストランを愉しむことの真意”を教えてくれます。夢のような食体験、ぜひ一度味わってみて下さい。

News!
naoさんが手がける“幻のチーズケーキ”が期間限定再販

コロナ禍で話題となったチーズケーキがネット通販にて期間限定再販。本橋さん秘伝のレシピで、常連の方々からは幻のチーズケーキと称されているそう。

JULIA 外苑前

住所:東京都渋谷区神宮前3-1-25
TEL:03-5843-1982
営業時間:18:50ドアオープン、19:00一斉スタート
定休日:火、不定休
公式サイトhttps://www.juliahospitalitygroup.com/

“食”をメインに、レストランプロデューサーやPR、ライターとして活躍。普段からホテル暮らしをするほど、旅行が好き。Instagram:(@hoshiko_0607

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