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【汐留】開館20周年記念展 中川 衛 美しき金工とデザイン@パナソニック汐留美術館

  • 2023.8.15

汐留にあるパナソニック汐留美術館では開館20周年を記念した展覧会、「中川 衛 美しき金工とデザイン」が9月18日(月・祝)まで開催されています。

出典:リビング東京Web

会場入口

出典:リビング東京Web

中川 衛氏

中川 衛氏プロフィール(1947年生まれ)

金沢美術工芸大学で工業デザインを専攻し、1971年に大阪の松下電工(現パナソニック)に入社。美容家電製品などのデザインに携わり27歳で帰郷した後、石川県立美術館で行われていた鐙の展覧会を観たことを機に、地元の伝統工芸である加賀象嵌に魅了されます。

彫金家の高橋介州(1905〜2004)に入門し、石川県工業試験場に勤務し、日本伝統工芸展等で入選・受賞を重ねて作家として頭角を現しました。2004年には、金工の技術継承に尽力した功績により重要無形文化財「彫金」保持者(人間国宝)に認定されました。

大学や造幣局などで後進の育成に尽力する一方、アメリカや台湾などで積極的に海外研修を行うなど、国際的な視野で活動を展開しています。

出典:リビング東京Web

展示会場風景

工業デザイナー時代

中川氏が松下電工(現パナソニック)に在籍時は美容家電製品などのデザインに携わりました。中川氏が直接関わったものも含む当時の1970~80年代の家電が展示されています。画像の赤と白の家電は当時の松下電工(現パナソニック)で販売されていたラジオです。(現在でもとても斬新なデザインに思えますね。

出典:リビング東京Web

1970年代の家電 展示風景

ドライヤーとホットカーラーです。懐かしいデザインですね。

出典:リビング東京Web

1970年代美容家電 展示風景

「象嵌」(ぞうがん)とは

中川氏が追求する「象嵌」(ぞうがん)とは、金属の表面を鏨(たがね)で彫り、できた溝に異なる金属を嵌(は)めこんで模様を作り出す技法です。象嵌部分の深さはわずか1mm以下と非常に薄く、精緻な仕事が求められます。特に中川氏は、複数の異なる金属の層を組み合わせて意匠を構成する、難易度が高いとされる「重ね象嵌」を極めていきました。

出典:リビング東京Web

展示風景

こちらの花器の作品は中川氏によるスウェーデンの景色のスケッチが、金、銀、赤銅など種々の金属の重ね象嵌で表現されています。中川氏はカメラ撮影で景色を保存するのではなく、あくまで手書きスケッチにこだわり、自分の作品デザインに反映させていくそうです。

出典:リビング東京Web

《象嵌朧銀花器「北杜の朝」》2016年 パナソニックホールディングス株式会社蔵「北杜の朝」スケッチ 2016年 個人蔵《重ね象嵌朧銀花器「北の森」》 2003年 個人蔵

和と西洋の伝統模様の融合

こちらの作品は大英博物館のキューレーターに「象嵌をタータンチェックで表現してはどうか」と勧められ、重ね象嵌でタータンチェックと市松模様を組み合わせている花器です。日本と英国の伝統柄を融合した作品です。第64回日本伝統工芸展出品作です。

出典:リビング東京Web

《象嵌朧銀花器「チェックと市松」》 2017年 金沢市立安江金箔工芸館蔵

中川氏は母校の金沢美術工芸大学をはじめとして、後進の育成に尽力する一方積極的に海外研修を行うなど国際的な視野で活動を展開しています。

出典:リビング東京Web

展示風景

国境と世代とジャンルを超えて

左の孔雀の香炉は孔雀の羽が一つ一つ平象嵌で表現されており伝統的で繊細な作品です。

右のヒールレスシューズはレディー・ガガのシューメイカーとしても知られるコンテンポラリーアーティスト舘鼻 則孝氏との共作でMOA美術館に展示された作品です。2022年秋、文化庁の令和3年度伝統工芸超分野交流事業の一環として制作されました。伝統工芸の新たな魅力が感じられる作品です。

出典:リビング東京Web

左:《象嵌朧銀孔雀伏香炉》 2017年 個人蔵 右:中川 衛、舘鼻 則孝 《Heel-less Shoes "波と遊ぶ"》 2023年 個人蔵

《象嵌朧銀孔雀伏香炉》(ぞうがんおぼろぎんくじゃくふせこうろ)のメインビジュアルポスターです。羽の柄が細密に作られています。

出典:リビング東京Web

会場入口ポスター

中川氏の象嵌作品のデザインは身近な物からインスピレーションを得ていることもあるそうです。時には餃子であったりキャラメルの箱であったりと日常何気に目にしている物からも創作のヒントを得ているそうです。

展覧会会場のロビーでは中川氏の象嵌制作の作業風景がビデオで上映されています。象嵌を仕上げていく様子を見ていると緻密且つ繊細で気の遠くなるような作業工程です。完成した作品の出来栄えは素晴らしく象嵌の世界の奥深さについて理解が深まりとても見応えのある展覧会です。

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