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ケジャリー、チキンティッカマサラetc. 国境を越えて、カレーはおいしくなる vol.1

  • 2023.8.14
外苑前〈WORLD BREAKFAST ALLDAY〉ケジャリー

イギリスのケジャリー

英国貴族の朝食となったカレー風味のリゾット

スパイスは世界を巡る。そして長い歴史の中で現地の食文化に溶け込み、独自の進化を遂げていく。

イギリスに伝わるケジャリー(またはケジャリ)という朝食メニューをご存じだろうか?英国が世界に誇るイングリッシュ・ブレックファストの中でも、ベイクドビーンズなどに比べたら知名度は低いかもしれない。レンズ豆と米を炊いたインドの豆粥“キチュリ”がルーツとされ、インドが英国領だった19世紀後期に広まったといわれている。豆の代わりにパブ料理でもお馴染みのタラの燻製を使い、クリームをたっぷり加えたのがイギリスらしい進化だろう。

20世紀初頭の貴族の一家を描いた人気ドラマシリーズ『ダウントン・アビー』の第1話にも、朝食の準備に追われる厨房で、料理長が「このケジャリーを運んで!」と叫ぶシーンが登場する。タイタニック号の沈没が新聞の1面を飾った、1912年の風景だ。当時まだ稀少だったろうスパイスを使い自国流にアレンジした料理は、さぞやハイカラだったに違いない。教養ある上流階級の朝食として浸透していったのも納得がいく。

さて、日本において本格的なケジャリーを出す店は、残念ながらあまり見かけない。ならばと、世界各国の朝ご飯を紹介する専門店〈ワールド・ブレックファスト・ オールデイ〉に、ロンドンのレストラン〈The Wolseley〉のレシピを再現していただいた。

外苑前〈WORLD BREAKFAST ALLDAY〉ケジャリー

朝食のおいしさに定評がある人気店で、ケジャリーも多くのファンを持つ名物料理の一つ。ピラフのようなドライタイプもあるが、こちらのレシピは汁気のあるウェットタイプ。黄金色のリゾットの上に軟らかなポーチドエッグがそっと置かれ、そこからとろりと黄身が流れ出る美しさときたら……。ロンドンにあまた存在するケジャリーの中でも、気品あふれる一品だ。

作り方は、ターメリックライスにカレーパウダーやクミンシード、ニンニク、ショウガ、そしてたっぷりのクリームで作ったソースをかけ、ほぐした燻製タラを加えてひと煮立ち。「オリジナルのソースはクリームがかなり多いので微調整し、スパイスを際立たせてみました」と代表の木村顕さん。

なるほど、程よくスパイシーなリゾットに燻製タラが実にいいだしの働きをして、これは日本人好みの味。大英帝国の栄華の時代に生まれたカレー料理は日本で流行するポテンシャルを秘めているかも⁉何より、こんなエレガントな朝カレーなんて最高じゃないですか。

Information

外苑前〈WORLD BREAKFAST ALLDAY〉外観

WORLD BREAKFAST ALLDAY

世界の伝統的な朝食をオールデイで提供する店。各国大使館職員など現地出身者からリサーチし忠実に味を再現する。

ワールド・ブレックファスト・ オールデイ
住所:東京都渋谷区神宮前3-1-23 1F 
TEL:03-3401-0815
営:7時30分〜19時LO
休:不定休
ほかに吉祥寺店、銀座店もあり
現在ケジャリーは販売終了
HP:https://www.world-breakfast-allday.com/

イギリスのチキンティッカマサラ

インド伝統料理のコラボは、実は、イギリス生まれ!

チキンティッカは、ヨーグルトとスパイスでマリネした鶏肉を窯で焼いた、インド料理の代表選手。チキンマサラ(カレー)もまた、しかり。が、2つがコラボしたチキンティッカマサラとなると、話は別。実は、“カレーは好きだけど、チキンティッカはパサついた食感がな~”というイギリス人のために英国のインド料理店が始めたとされる。

「チキンティッカの味はどこも、そんなに変わらない。どんなマサラと合わせるかが勝負です」と言うのは、これが名物の老舗〈SURYA〉のバンダリさん。どんなマサラかといえば、チキンティッカと一緒に、酢豚ばりに大きなタマネギとピーマンを投入。ケチャップで味を決め、ネギを散らした、日本までコラボさせた超個性派。

麻布十番〈SURYA 東麻布本店〉チキンティッカマサラ
トマトの風味が際立つチキンティッカマサラ1,490円。テイクアウト可。
麻布十番〈SURYA 東麻布本店〉チーズナン
チーズがこれでもかとのったチーズナン580円。テイクアウト可。
麻布十番〈SURYA 東麻布本店〉マリネして焼いたチキンティッカ
骨なしの軟らかい鶏肉を、このカレー用にマリネして焼いたチキンティッカ。これが、大きなタマネギやピーマンとともにトマトベースのカレーにイン。
麻布十番〈SURYA 東麻布本店〉シェフ・バンダリ
バンダリさん。

Information

麻布十番〈SURYA 東麻布本店〉店内

SURYA 東麻布本店

関根勤さんはじめ、著名人の常連客も多い、1999年創業のインド料理店。メニューはテイクアウト可。営業時間などの確認は電話で。

スーリヤ
住所:東京都港区東麻布2-12-4 1F
TEL:03-3589-2245
営:11時~15時、17時~22時30分LO(日・祝は通し営業)
休:無休
席:テーブル36
日本橋店、芝店でも

ポルトガルのポークビンダルー

ポルトガルとインドが合体した、ゴア名物の酸っぱいカレー

長い間、ポルトガル領だったインドのゴア州。かの地の名物として知られるポークビンダルーも、そのポルトガル人からもたらされたものだそう。元ネタは、カルネ・デ・ヴィーニャ・ダリョシュというビネガー漬けの豚肉煮込み。ゆえに、タマリンドとは違う、ビネガーによるパンチが効いた酸味と辛味が特徴だ。

これに興味を引かれたのが、カレー好きのポルトガル料理人、佐藤幸二さん。以来、ポルトガルで、日本で食べまくったものの、なかなか好みの味に出会えない。ならばと、自らレシピを考案。それが〈副大統領〉のポークビンダルー。豚肉を漬け込む酢は、ワインビネガーではなく、あえて米酢。酸味より甘味や旨味を引き出すビネガー使いが、佐藤流だ。

渋谷〈ポークビンダルー食べる副大統領〉ポークビンダル
クスクス、サラダ、アチャールがのったポークビンダルー1,000円は、ゆで卵が無料。お代わり自由のご飯は、鳥取・田中農場で作っているカレー専用米「プリンセスかおり米」。
渋谷〈ポークビンダルー食べる副大統領〉自家製調味
増え続けるカスタマイズ用の自家製調味料から、4種。ナンプラー入りのビネガーで追い酸味か、豆板醤入りチリソースで追い辛味か。味変自由自在。

Information

渋谷〈ポークビンダルー食べる副大統領〉店内

ポークビンダルー食べる副大統領

ポルトガル料理〈クリスチアノ〉の佐藤幸二さんが構えた、ポークビンダルー一本勝負のカレー店。

住所:東京都渋谷区宇田川町41-26 2F 
TEL:なし
営:11時30分~20時(土・祝〜17時、共に売り切れ次第終了)
休:日曜
席:カウンター8
テイクアウトあり。sato-shoten.net/より取り寄せ可
Instagram:@fuku_daitouryou

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