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【プロが選ぶ】神秘的な美しさ! 育てたい魅力あるシダ“マストバイ”10選

  • 2023.8.14

繊細でユニークな葉を広げ、多くの種類があるシダ類は、日陰を好む種類が多くシェードガーデンで育てることができる貴重な植物です。他の草花とも馴染みやすいので、英国でもガーデニングの定番素材としてソだれられています。シダの神秘的な美しさは和の庭でも洋の庭にもよく似合い、センスある庭づくりをする人に選ばれています。ガーデニングプロデューサーの遠藤昭さんに、おすすめのシダ植物ベスト10を教えていただきます。

人気が高まりつつあるシダ植物

シダのガーデン

NHKの朝ドラで放送中の、牧野富太郎さんがモデルになった「らんまん」のおかげで、園芸業界も少々活気づいているうえ、ドラマの中では、幾度か私の好きなシダ類が登場していて嬉しい日々です。

私自身も、コロナ禍で自粛していた旅行を4年振りに再開し、世界遺産白神山地・奥入瀬渓谷で大自然に触れ、特に多くのシダ類に巡り合うことができました。久々に「羊歯愛」が蘇ったこともあり、今回は、魅力的なシダをご紹介したいと思います。

奥入瀬渓谷
奥入瀬渓谷に自生するシダ類。

大人シックなガーデンづくりにイチオシの「シダ」

シダとホスタ

シダというと、なんとなく日陰に育って花も咲かない、暗いイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、シダは4億年の悠久の歴史の中で磨かれた究極の美しさを見せてくれる植物。特に品種改良などもされず、大自然の神秘の美しさを届けてくれます。庭の中では、カラーリーフとも相性がよく、洋の印象が強いデルフィニウムやバラとも調和します。

園芸愛好家は、まず「花もの」の栽培から始めて、長い人生の中で行き着くところは、「素朴で渋い」部類にあたるシダだと言われます。私自身、シダの魅力に引き込まれたのは50歳を過ぎてからでしょうか? と言いながらも30代の頃からシダは好きで、当時流行った観葉植物のアジアンタムやボストーンファーン(玉シダ)をマンションで育てていました。

シダのガーデン

20年以上に渡り、世界で最も権威のある園芸雑誌とされる、The Royal Horticultural Society(英国王立園芸協会)の機関誌『The Garden』を購読していますが、ほぼ完璧に毎号、シダの含まれる写真が掲載されています。もちろん、シダ特集もありました。かつて英国ではシダの大ブームもあり、ガーデンにおいて欠かせない存在となっています。日本のガーデニングブームは花いっぱいの路線で来てしまいましたが、もともと和の庭は樹木や葉ものが中心でしたし、シダもたくさん使用されています。今こそシダを見直してガーデニングにも活用すると、大人の雰囲気漂う、日本人の感性にマッチしたガーデンづくりができるかと思います。

今回は、庭に植えて素敵! 観葉植物としてインテリアグリーンとしても楽しめる! 筆者の長い園芸人生の中で育てた経験からおすすめのシダ10種をご紹介しましょう。

1.ディクソアニア・アンタルクティカ(学名:Dicksonia antarctica)

ディクソニア

オージープランツ愛好家として、まずおすすめしたいのはディクソニア・アンタルクティカです。ご覧のように、バラ咲く季節には新緑が綺麗です。もちろんディクソニア自体も美しいのですが、シダの柔らかな緑はバラをはじめとする花々を引き立てます。

上写真のディクソニア・アンタクティカは、28年前に胞子を輸入して育てものです。オーストラリアの南東部、及びニュージーランドに自生する品種ですが、イギリスの庭でもよく見かけますし、もちろん自宅のある横浜でも越冬する耐寒性のある木生羊歯です。ディクソニアはメルボルン駐在中に住宅街でよく見かけ、「カッコいいなぁ~」と魅了され、帰国後に胞子を個人輸入して育てました。

ディクソニア

そうして育て続けた我が家のディクソニアは、28年の間に巨大化してしまいましたが、鉢植えなら巨大化は防げますし、部屋で観葉植物として育てることもできます。常緑で、寒さにも強く、葉も硬く、シダというよりヤシのようなイメージです。もちろん日向でも育ちます。

最近は、通販や大型の園芸店でも苗を入手することができます。巨大化して余りにもジャングル的になってしまったので、周りにジキタリスなどの草花を入れて、少し都会的雰囲気をプラスしてみました。

アルフレッド・ニコラスガーデン
ダンデノン丘陵のディクソニア

自生地の様子をご紹介しておきましょう。1枚目はメルボルン郊外のアルフレッド・ニコラスガーデン、2枚目が郊外のダンデノン丘陵の野生のディクソニアです。私は自庭のディクソニアを眺めては、このオーストラリアの雄大な庭や自然風景を思い起こしています。

【育て方】

明るい日陰程度で、あまり暗くても発育が悪くなります。乾燥するオーストラリア原産といえども、南東部の湿潤な気候のユーカリ林の下草として育っていますので、鉢植えの場合には水は切らさないようにします。施肥も控えめにします。

次に、日本の伝統的なシダを何種かご紹介しましょう。

2. クサソテツ(学名:Matteuccia struthiopteris)

クサソテツ
ジギタリスやツルニチニチソウとコラボしたクサソテツ。

おそらく、一般的に庭で育てられているシダの中で最もポピュラーな種類だと思います。

名前の通りソテツのような姿です。宿根草で冬は枯れてしまいますが、新緑の季節に明るく繊細で綺麗な黄緑色の葉を広げます。単独の姿よりも、他の草花の引き立て役に重宝します。

クサソテツ
デルフィニウムを引き立てるシダ。白やブルーの花が一層、鮮やかに見えます。
クサソテツとアーティチョーク
ハードでシャープな印象のアーティチョークのシルバーリーフとのコントラストが美しい。

なお、クサソテツは「コゴミゼンマイ」と呼ばれることもあります。若芽はコゴミという山菜の一つですが、コゴミとゼンマイとは別種。コゴミとは小さくしゃがんだ姿を指す「こごむ」の意です。

【育て方】

もともと、森や林の湿潤な日陰に生えているため、乾燥と直射日光には弱いです。湿り気のある腐葉土たっぷりの土に植え、日陰から半日陰で育てましょう。肥料は控えめにします。

3.ニシキシダ(学名:Athyrium niponicum)

ニシキシダ
ニシキシダ

私はシダの中で、このニシキシダが最も美しいシダだと思います。英名がJapanese Painted Fernで、如何にも絵画的で美しいフォルムです。また、海外の園芸雑誌で最も登場する日本原産のシダが、このニシキシダ。外国でも好まれる色合いなのかもしれません。かれこれ鉢植えで20年以上育てていて、ほぼ放置状態でも枯れることなく育っています。

ニシキシダ

シダ全般に言えることですが、和風でも洋風でも風景に溶け込み、鉢植えを配置する場合でも、砂利の上でもレンガの上でも調和します。庭をお洒落に演出するのに、ぜひ一株欲しいシダです。冬には葉が落ちる宿根草。

【育て方】

国内に広く分布し、林床などに生えている場合が多いので、気候的には暑さにも寒さにも強いものの、鉢植えの場合は水切れに注意。

4.リョウメンシダ(学名:Arachniodes standishii)

リョウメンシダ
リョウメンシダ

とても繊細な葉が展開する美しいシダです。地植えにして上手に育てると株張りが60〜150cmに達する大型のシダですが、我が家では写真の通り鉢で育てており、草丈30cmで収まっています。

リョウメンシダ

通常シダの葉の裏は、明らかに表とは異なる色形ですが、このリョウメンシダは、その名の通りに裏もまるで表のようです。冬には枯れる宿根草。

奥入瀬渓谷
奥入瀬渓谷のリョウメンシダ。

自然散策にて先日出会った奥入瀬渓谷の野生のリョウメンシダはじつに見事で、まさかこんなにも大きく育つシダとはそれまで知りませんでした。このような群生を見たのも初めてで、その美しい大自然の姿に大感動。下写真は、山野草のヤグルマソウとのツーショット。奥入瀬渓谷は昼間でも木々が覆いかぶさり、かなり暗く湿っており、まさにこの環境がリョウメンシダの生育に適した環境なのだと納得。

リョマソウウメンシダとヤグルマソウ
奥入瀬渓谷で出会った山野草のヤグルマソウとリョウメンシダのツーショット。
【育て方】

日陰で湿った場所が適するので、直射日光や乾燥に注意。我が家のリョウメンシダは10年以上、鉢に植えっぱなしで育っていますが、鉢植えの場合は、2~3年ごとに鉢増し、または株分けをしたほうが調子がよい。施肥は控えめに。

5.マツザカシダ(学名:Pteris nipponica)

マツザカシダ

プテリスという名で観葉植物として売られていることが多いですが、西日本原産の日本のシダです。

なお、プテリスは世界で約250種もあるとされ、観葉植物で売られるプテリスは、必ずしもマツザカシダではない場合もあります。

マツザカシダ

常緑で耐寒性もあるヒューケラと一緒に下草として庭で使ったことがありますが、植栽の下草としても面白いと思います。ヒューケラのような使い方をするのもおすすめです。

シダも、それぞれの特色を生かして、独自の使い方を考えるのも楽しいですね。

マツザカシダ
白い斑が暗い庭を明るくする効果もある。
【育て方】

シダなので日陰か半日陰で育てますが、我が家では雑草化しているほど丈夫なので、ほぼノーケアで育ちます。鉢植えの場合は乾燥に気をつけます。

6.トキワシノブ(学名:Davallia tyermannii)

トキワシノブ
トキワシノブ

日本で昔から夏の風物詩としても出回る「つり忍」でもお馴染みのシダです。私が育ててきたシダ類の中で最強に丈夫なシダで、常緑で寒さ暑さにも強いです。一般的には湿ったところで、直射日光にも当てないほうがよいとされていますが、写真のような板付けのハンギングにして、直射日光に当てて乾いても、若干葉焼けする程度で枯れることがありません。なお、トキワシノブは、よく風鈴とともに軒下にぶら下げるので「ノキシノブ」と勘違いして広まっていると聞きますが、ノキシノブはこれとは別種です。

【育て方】

繊細な姿に反して強靭ですが、やはり美しく育てるには、直射日光や乾燥は避けます。

ハンギングの場合、水やりが難しいのでバケツに水を張ってその中にしばらく浸けると完璧です。

7.タマシダ(学名:Nephrolepis cordifolia)

タマシダ

タマシダにもたくさんの品種があり、観葉植物としてネフロレピスという名で流通している場合が多いです。昭和時代にもハンギングの素材として流行したことがあり、根強い人気のシダです。

器を和風にすると和の庭にもマッチするし、ハンギングで洋風インテリアとして飾るのも人気です。

タマシダ
Oraood/Shutterstock.com
【育て方】

いわゆるタマシダは日本原産の常緑種で、かつ冬の寒さにも強いのですが、ネフロレピスで流通しているものは冬の寒さに弱い場合がありますので屋内で越冬させます。

8.コウモリラン(学名:Platycerium)

ビカクシダ
ビカクシダ

近年、人気が続いているコウモリラン。ビカクシダとも言われていますが、漢字で書くと「麋角羊歯」。つまり鹿の角のようなシダという名称で、シダの仲間です。英名は、「Elkhorn Fern」または「Common Staghorn Fern」で、こちらも共通して鹿の角という意味ですね。

ビカクシダの壁かけ

参考記事では壁掛けの作り方もご紹介しています。

【育て方】

ビカクシダの原生地は熱帯から亜熱帯地域で、ジャングルに生えている樹木に着生しています。つまり、ある程度の太陽光と気温、そして湿度を保つ必要があります。また、冬は屋内で管理します。ハンギングで育てることが多く、水やりの管理が難しいのですが、バケツに水を溜めて1分間ほど浸ける方法が簡単です。

9.オオタニワタリ(学名:Asplenium antiquum)

オオタニワタリ
オオタニワタリ

紀伊半島を北限とするシダで、一般に観葉植物として扱われ、国内のほとんどの地域では鉢植えにして冬は屋内で管理します。一般的なシダの葉とは形状が異なり、光沢のある幅広の大きな葉が特徴です。常緑性なので観葉植物として一年中緑の葉を楽しめ、人気があります。鉢植えでも上手に育てれば、葉の長さが1mほどの大株になります。

オオタニワタリ
幅広の大きな葉が、オオタニワタリの魅力です。
コタニワタリ
コタニワタリ。

類似のシダとしてコタニワタリというシダがあり、こちらは東北や北海道にも原生しています。寒さに強いので、庭で育てたい場合はコタニワタリがおすすめ。

【育て方】

オオタニワタリはシダとは言いながら、やや明るめの半日陰を好みます。夏の間は、木漏れ日の射すような場所だと管理がラクです。成長期には水をたっぷり与えましょう。

10.アジアンタム(学名:Adiantum raddianum)

アジアンタム
Tibesty/Shutterstock.com
アジアンタム
イギリスの園芸店でディスプレイに使われていたアジアンタム。

たしか45年くらい前に、私が結婚して入居したマンションで育てていた記憶があるので、かなり古くから観葉植物として人気でしたね。最近ではフラワーアレンジメントなどにも使用され、再び人気が出ているようです。小型で小さく繊細な葉が人気のシダで、流通しているのはさまざまな園芸品種です。

アジアンタム
じつはベテラン向きのアジアンタム。Lja_Lja/Shutterstock.com

日本にもホウライシダが類似のシダとして自生しており、江戸時代から観葉植物として親しまれてきました。クジャクシダもホウライシダの一種です。下写真は野生のクジャクシダ。

クジャクシダ
クジャクシダ。
【育て方】

とても繊細な葉で、乾燥に弱く、部屋で育てる場合は、水やりと同時に、1日に1回は霧を葉にかけて湿度を保つとよいと言われています。

これまで、イチオシの10種の容姿の異なる魅力的なシダをご紹介しました。シダと一口に言っても、さまざまな姿と個性があり、ガーデニングやインテリアの素材としてもいろいろな使い分けができることも分かったかと思います。

たくさんあるシダの中から、ぜひ、お気に入りの種類を育ててみませんか? きっと花の咲く草花とは違った神秘的な魅力を発見できると思います。

【オマケ】
スクロール

バイオリンやチェロなど、弦楽器のフィドルヘッドと呼ばれる部分のデザインが、シダの新芽をモチーフにされていることはご存じですか? バイオリンの起源となる楽器は8世紀頃から作られたと言われていますが、その時代から、シダは知的な植物とされ、弦楽器のデザインに引用されたのです。

フィドルヘッド
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -

えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。

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