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有栖(福原遥)の出産シーンに圧倒。「孫を抱かせてあげたい」瞳子(深田恭子)の呪縛に母は 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』5話

  • 2023.8.11

ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)は、福原遥演じる18歳のキュレーター志望・仲川有栖と、深田恭子演じる40歳のアートスペシャリスト・成瀬瞳子をメインに繰り広げられる、女性の生き方を描いた物語。「妊娠・出産」や「キャリア」など、人生のステージが変わる局面に立たされた女性が、どんな選択をするかに注目が集まる。第5話では、ついに有栖が男の子・海を出産する。

約8分にわたって丁寧に描かれた出産シーン

5話において、有栖(福原)が出産するシーンがとても丁寧に描かれていた。18歳の妊娠と出産がテーマのドラマにおいて、避けては通れないシーンである。不自然に省略することなく、細部までリアルに表現していた点に好感がもてる。

自宅で急にやってきた陣痛、病院に行くまで1人で準備を整え、タクシーを使わなければならない現状。陣痛がきたからといってすぐに出産体制に入れるわけではなく、妊婦の状況によってケースは千差万別なのだと思い知らされる。漏れ聞こえる苦しみの声に、見守る父・市郎(安田顕)と瞳子(深田)は祈るしかない。

出産シーンは約8分にもわたった。有栖を演じる福原の表現力に、あらためて圧倒される。このとき、産婦人科医の柴崎薫(松本若菜)が有栖に対し「目を開けてこっちを見て!」と言っている。ひとつのセリフにも、リアルさを追求しているように感じる。

これまでのレビューにおいて、有栖の幼稚さや、瞳子のデリカシーのなさ、行動基準の読めなさなどに触れてきた。不自然な点が多いと感じることも包み隠さず書いてきたが、5話の丁寧な出産シーンは、彼女たちの決意と覚悟を言葉ではない形で示してくれた。きっと、このドラマにおける本来のメッセージは、これから提示されるのかもしれない。

有栖が「この子、あげます」と言った理由

有栖の憧れであり、黒澤祐馬(鈴鹿央士)と幼なじみの光峯綾香(嵐莉菜)が、大学院生にしてキュレーターデビューを果たす。有栖も招待され会場に向かったのは、まだ出産前のこと。やりたいことにまっすぐ向かい、着実に夢を叶(かな)えている憧れの人を目の前にして、有栖は複雑な思いに駆られながらその場を離れる。

市郎に言われたとおりに休学することを決めた有栖だが、「出産後はすぐにでも復学したい」と前のめりで復学の手続きについて確認していた。母子手帳に書き込んでいるのは最低限のことだけ。産婦人科でたまたま話した他の妊婦が「マタニティーノート」をつけているのを見て、出産後のことしか考えていない利己的な自分を痛感し、落ち込む。

思いあまって、有栖は瞳子に「この子、あげます」と口にした。それは、生まれてくる子どもを重荷に感じ、手放して身軽になりたいと思ったからではない。心の底から子どものことを考えられているわけではない、自分本位な母親の元に生まれてくる子ども・海のことが不憫(ふびん)で仕方ないから。そして、誰か他の人の元で育ったほうが幸せになれるのでは、と切羽詰まったからだろう。

有栖はいつの間にか、世の中にはびこる「良いお母さんにならなきゃ」呪縛にとらわれていたのではないか。産むからには責任を持って育てなきゃならない、良いお母さんでいなくてはならない。もちろん、その覚悟は大事にしてほしい。しかし、有栖には「いいお母さんになんかならなきゃいいじゃない」「有栖はもうじゅうぶん、ちゃんとお母さんなんだって私は思うよ」と言ってくれる瞳子がついている。

有栖の出産をサポートするのが、実父である市郎ではなく瞳子である点は、「新しい家族の形」「家族は、これまでにない先進的なチームになりうる」といったメッセージに繋がっている気がしてならない。瞳子も瞳子で、有栖を通して母になろうとしているのだろう。

瞳子がとらわれていた“呪縛”と母・貴美子の言葉

有栖がとらわれていたのが「良いお母さんにならなきゃ」呪縛なら、瞳子がとらわれていたのは「孫を抱かせてあげたい」呪縛だ。40歳を目前に、本腰を入れて婚活と妊活を始めようとした矢先、子宮内膜症が発覚した瞳子。自宅マンションに訪れた母・貴美子(片平なぎさ)に、その事実を告白する。

女性にとっての30代は、あらゆる選択と決断にまみれている。それは、30代に「結婚適齢期」と「出産における身体的なリミット」が凝縮されているから。男性なら、いよいよ仕事に集中できる時期にも関わらず、否応なく選択肢が狭められるように感じる女性も多いのではないだろうか。

瞳子は自身の30代を、仕事に捧げた。一息ついた40代直前のタイミングで、結婚や出産への選択肢を奪われかけている。子どもが好きだから産みたい、自分の子どもをもちたいというシンプルな欲求と、母親に孫の顔を見せてあげられない可能性に、押しつぶされそうになっているようだ。

有栖の世話を焼くかたわらで、瞳子も十分な絶望の淵に立っていたのだ。そんな彼女に対し、「あんたが元気じゃなかったら何にもならない」「結婚なんかしなくったっていい」と言い切ってくれる母・貴美子がいてくれて、本当によかった。

結婚だの出産だのを取っ払い、第一に命と存在を尊重し肯定してくれる親の存在は、かけがえがない。何にも代えられないこの思いが、互いの心に降り積もっていけば、きっと、無用な“呪縛”から自由になれるはずなのだ。

■北村有のプロフィール
ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。

■モコのプロフィール
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。

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