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「宝くじより確率の高いギャンブル」お金の専門家が負けてもトルコリラに投資し続ける3つの理由

  • 2023.8.9

買った後に価格が下がったら、損切りするのが投資の王道。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「とはいえ、ルール通りに投資をするのがしんどい場合もあります。そんなときは、ギャンブルと割り切って無理のない金額で楽しむのも一つの方法です。宝くじよりもずっと割がいいはずです」という――。

20%に迫る金利に引かれて投資

トルコリラの下落が、止まりません。

2015年頭には1リラ=50円程度だったのが、下落に下落を続け、本稿執筆時点(2023年7月下旬)では1リラ=5円強と、10年足らずで、その価値は10分の1にまで下落しています。

トルコの国旗がある風景
※写真はイメージです

さすがに、これはもう下げ止まるだろうとの期待感や、20%に迫ろうかという高金利に引かれ、リラに投資して、大きな損失を負っている人は多いのではないでしょうか。

私も以前、そんな下げ止まりへの期待と高金利に引かれ、FX(※1)でリラに投資をして、100万円以上の損失を出しました。

そのショックでいったんはリラから離れるも、中途半端な気持ちで投資をしていたことを大いに反省。

そして一昨年、今度はFXレバレッジ1倍法(※2)で、再びリラに投資をしたことは、以前の記事「『トルコリラ暴落で100万円失ってたどり着いた』どんなに価格変動しても不労所得を確保する方法」でも書いたとおりです。

※1 外国為替証拠金取引のことで、証拠金の25倍もの外貨を取引できる
※2 取引額と同額の証拠金を差し入れることで、ロスカットを避け、長期間にわたって保有するための投資法

腹をくくって投資するも、現在、約50万円の含み損

すなわち、私は今では「リラは絶対に手放さない」と腹をくくって、リラに投資しているわけです。

そして、リラが下落するタイミングでの買い増し(ナンピン買い)も続けており、リラの下落とともに保有額は増え、現在、20万リラ分を保有しています。

1リラ=5円強として、日本円にして、約100万円強といったところです。

ちなみに、私が再び、リラへの投資を始めたのが1リラ=12円前後のタイミングだったので、ナンピン買いで購入価格はかなり下がっているとはいえ、平均購入価格は8円程度。

なので、リラ下落による含み損は現在、60万円程度[〔8円(平均購入価格)-5円(現在価格)〕×20万リラ]。

実際には、これまでに受け取った金利(スワップ金利)による埋め合わせがあるので、正味の含み損は50万円といったところでしょうか。

なぜ、リラに投資し続けるのか?

そんなわけで、私はリラですでに100万円以上の損失を出し、そして、今も大きな含み損を抱えているわけですが、リラから撤退するつもりはありませんし、むしろ、買い続けています。

トルコリラ
※写真はイメージです

なので、「なぜ、そこまで腹をくくって、リラを買い続けているのか」とよく聞かれますし、「リラみたいな通貨に投資しているなんて、おかしいぞ」と批判されることもあります。

そんな質問に、まずハッキリ言っておきたいのは、私はリラに対して、とくに希望・期待を持っているわけではないということです。

リラは、今後も下落を続ける可能性が高く、将来の見通しは非常に暗いと思っています。

実際、世間一般の評価としても、リラの評価はボロボロです。

猛烈なインフレ、急激に減少する外貨準備と、トルコ経済は非常に厳しい状況が続いています。

そんな中、(独自の経済政策でリラ安を招いたとされる)エルドアン大統領が再選した失望感からも、リラは下げ足を速め、連日、過去最安値を更新。

また、シリアにおけるクルド人勢力との争いや、近年ではウクライナ情勢といった地政学リスクも大きく、そして数年前にはクーデター未遂事件が起きるなど、政治情勢も不安定極まりません。

すなわち、客観的に見て、リラが買われる理由はほとんどないのが現状なのです。

そんな状況にもかかわらず、私がリラに投資し続けるのは、主に以下の3つの理由からです。

1.宝くじ感覚で、上昇に転じる可能性に期待

現在、絶望的なまでに下落を続けるリラですが、これが急遽、上昇に転じる可能性は決してゼロではありません。

そしてもし、上昇に転ずれば、大きな利益が見込めます。

一昨年、私が再びリラに投資を始めた頃は1リラ=12円前後だったわけで、仮に、現在のレート(1リラ=5円強)が、その頃の水準に戻るだけでも、倍以上の収益となります。

私の場合、20万リラ(約100万円分)保有しているので、100万円以上の儲けとなる計算です。

そんな可能性に期待して、宝くじ感覚で、リラに投資しているわけです。

もっとも、長年下落が続くリラが上昇に転じるには、エルドアン大統領の政策転換や、シリア情勢の劇的な改善など、何らかのビッグサプライズが起こらない限り、あり得ないことです。

でも逆に言えば、リラが上昇に転じるとすれば、そんなビッグサプライズが必ずあるわけで、その場合には、相当な急上昇が期待できるはずです。

そんなビッグサプライズの可能性は極めて低いものの、それでも、宝くじの当選確率よりは高いと思っています。

また、宝くじと違って、リラを保有しているかぎり、毎日チャンス(ビッグサプライズの可能性)があるわけです。そして、これも宝くじと違って、当選発表日はなく、いつまでもチャンスの可能性は続くわけですから、リラの価値がいきなりゼロとなることは(ほぼ)ありません。

以上のことを考えれば、リラへの投資をギャンブルと捉えるとしても、それは宝くじよりもずっと割の良いギャンブルと思っています。

2.ここまできて、やめられない(サンクコスト効果)

リラへの投資を続けるも、これはもうダメだと諦めて手放してしまい、そこからリラが上昇に転ずるほど悔しいことはありません。

そんな理由からも、ズルズル下がるリラを売らずに(売れずに)、むしろ買い増してもいます。

頭では分かっています、これはダメな投資の典型例だと。

これはいわゆる「サンクコスト(埋没費用)」効果と言われるもので、それまでつぎ込んだ資金がもったいない(失敗を認めなくない)ことから、合理的な判断ができずに、ズルズルと続けてしまうことを言います。

ダメだと思ったら即損切りをする、これが投資の基本です。

しかし、FPの立場ではなく、一個人投資家の立場から言わせてもらえば、実際のところ、それができるか否かは別問題です。

頭では分かっていても、本能としては、なかなかできないものです。

損切りについては、強固な意志をもってできる人と、できない人がいるわけです。

私は当初、リラの損切りができないことに葛藤していましたが、それは、リラを手放した後の上昇リスクにおびえるほうが、(私にとっては)精神的にしんどいと感じるからだと気付きました。

そして今では、「私は損切りできない」と認め、腹をくくって、リラへの投資を続けているわけです。

3.高金利には、あらがいがたい

現在、トルコリラの政策金利は17.5%。

これは相当な高金利でして、それゆえ、FXで20万リラ保有している私は、1日あたり500円程度のスワップ金利を受け取っています。

ただ、高金利の国の多くはインフレ状態であり、そんな物価の上昇は、通貨価値の下落につながります。

実際、トルコのインフレ率は約40%とすさまじく、そしてセオリー通りに、リラは下落しているわけです。

高い金利を受け取れても、通貨が下がっては意味ないですよね。

しかし、通貨が下がっても、その高い金利が、通貨下落の損失分を埋め合わせてくれると捉えることもできます。

実際、私は、高いスワップ金利を受け取り続けているおかげで、リラ下落による損失はある程度埋め合わされて、幾分、気持ちも和らいでおります。

通貨の動きによる収益(損失)は読めませんが、金利の収益は確実に読めることも(長期的には金利水準も不確定ですが)、気持ちの上では大きいものです。

投資の基本として、「高金利に釣られない」ことは分かってはいますが、やはり高金利の魅力にはあらがいがたいものがあり、これも私がリラに投資する理由の一つです。

グローバルな視野が広がり、マーケット形成の一助となる

これら3つの理由以外に、リラに投資し続ける理由があるのかと問われれば、それは「グローバルな視野が広がる」「マーケット形成の一助となる」です。

「グローバルな視野が広がる」とは、リラを通じてトルコの情勢を、そしてトルコを通じて世界情勢を実感できることです。とくに近年では、ウクライナ情勢において、NATO加盟国ながらもロシアとも独自の外交を展開するトルコの役割は大きく、その動向が注目されています。

「マーケット形成の一助となる」とは、不人気リラの買い手が少ない中で、その買い手となることで、マーケットの厚みが増し、一定の流動性が確保されます。それにより、(少し大げさかもしれませんが)資本主義経済の一翼を担っているとの自負を持てるわけです。

と、もっともらしい理由を挙げましたが、正直言って、いずれも、リラへの投資を正当化するため、ムリヤリひねり出した後講釈(こじつけ?)というのが本音です。

ただ、そんなリラ投資の大義名分によって、少しでも精神的に楽になるのなら(実際、私は楽になっています)、何とかひねり出した意味はあるのかなと思っています。

頭(理屈)よりも、気持ち(本能)を大切にすることも

さて、今回のタイトル(お金の専門家が負けてもトルコリラに投資し続ける3つの理由)から、今後、リラが上昇する何か強い根拠があるのか、と期待した人にとっては、期待外れだったかもしれません。

また、リラで含み損を抱える人に、淡い希望を抱かせてしまったのであれば、すみません。

今回挙げたもろもろの理由は、「お金の専門家であるFPの意見として、それはどうなの?」と、賛否両論あるかと思いますが、一個人投資家としての偽らざる本音を、素直に書かせていただきました。

FPの立場で、客観的にトルコの現状を考えれば、リラには投資するべきではないでしょう。

しかし、今回挙げた理由である「上昇に転じる可能性に期待」「ここまできて、やめられない」「高金利には、あらがいがたい」は、人間としての本能とも言えます。

そんな本能の強い人が、その本能を無理に抑えつけて、しんどい思いをするのであれば、頭(理屈)ではなく気持ち(本能)を優先して、投資をした方が良いというのが私の持論です。

ただし、リラに投資をするのであれば、それは投資ではなく投機であり、さらに言えば、趣味やギャンブルと捉えるべきでしょう。

そして当たり前ですが、「投資額がゼロになっても大丈夫」と思える程度の金額でやるべきです。

リラへの投資で迷っている人にとって、一つの考え方として、参考になれば幸いです。

そして、リラで痛い目に遭っている人には、そんな考え方もあるのだと、少しでも気持ちが楽になれば幸いです。

藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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