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「結婚の平等とは“WHAT”ではなく“WHO”」 豪における『結婚の平等』への道のりをアダム・ノーベル氏に取材

  • 2023.8.8

人口2,500万人の国で有権者の80%近くにあたる約1,300万人が参加した国民投票で2017年に結婚の平等が実現したオーストラリア。時代に合わせて自然に合法化されたと思われがちだが、その背景には、困難だらけの長い長い闘いがあった。一般的に結婚の平等は、法律の改定か、裁判か、国民投票によって実現するものだが、オーストラリアはこの3つすべてを経験したのだ。オーストラリアで結婚の平等を求めるキャンペーンを先導したAustralian Marriage Equality(AME)でデジタルディレクターを務めたアダム・ノーベル氏(Adam Knobel)にフロントロウ編集部が話を聞いた。

AMEの設立背景―「すべての人が法の下で平等に扱われるべき」

画像: 結婚の平等を過半数の国民が支持した2017年11月15日、プリンス・アルフレド・パークには数千人が集まりお祝いした。
結婚の平等を過半数の国民が支持した2017年11月15日、プリンス・アルフレド・パークには数千人が集まりお祝いした。

オーストラリアにおいて結婚の平等を求める団体「Australian Marriage Equality(AME)」が設立されたのは2004年だった。

この年、カナダで結婚した同性カップルがオーストラリアでも法的に伴侶として認めてもらいたいと家庭裁判所に訴え出た。当時、オーストラリアの婚姻法に同性同士の結婚を除外するような表現はなかった。しかし、結婚の平等に関する議論の風向きに変化が起きる可能性を察知したジョン・ハワード政権は、この判決が出る前に、結婚は「男性と女性」のものであると明記した改正法を可決。結婚は男女間のものへと限定された。結婚の平等を求める団体Australian Marriage Equality(AME)は、この騒動のさなかルーク・ガハンとジェラルディーン・ドノヒューを中心に発足された。

―“same sex marriage(同性婚)”ではなく、”marriage equality(結婚の平等)”という表現が使われた背景を教えてください。

アダム・ノーベル氏(以下ノーベル氏):「すべての人が法の下で平等に扱われるべきだという本質を反映している表現だからです。何か違うわけでも、別々でも、新しいわけでもない。ただ単に、すべてのカップルが友人や家族に囲まれて愛する人と結婚することを許されるということなのです」

AMEはデモや広告、メディア出演などを通して結婚の平等を訴えはじめるのだが、2004年にAMEが発足した当時は、結婚の平等に対する関心は高くなかった。国内での支持も過半数に及んでおらず、メディアも積極的に報じる議題ではなかった。2004年に38%だった国民の支持は、2007年には57%に、2010年には62%(※18~24歳の若年層では8割)へと上昇。その背景にあったのは、一般市民の会話やアクションだった。

差別を恐れずに自分のストーリーを語ったLGBTQ+の人々に加え、同性の両親を結婚させてほしいと首相に手紙を書いたガブリエル・ストリッカー・フェルプスや、息子の1人が同性愛者であるがゆえに結婚できないことはおかしいと政治家や企業などに手紙を書く運動を始めたシャリン・フォークナーといったLGBTQ+の人々の家族、さらには、地元新聞の“読者からの手紙”欄に掲載された差別的なコメントに反対する手紙を出したサム・フィリップスや、自分の子どもたちには平等な世界で生きてほしいという思いからAMEの活動に参加したキャロル・バーガーなど、オーストラリア全土で一般国民が“法律の下では誰もが平等に扱われるべきだ”という会話に参加したことで、その考えが過半数の国民へと広がっていった。

国民の支持は高いのに動かない政治家―「政治家としての職務を果たすべき」

そんななか、国会ではAMEのような団体と結婚の平等に賛成する議員たちが協力して法案の起草を続けていた。2004~2017年の間に提出された法案は20以上。どれも採決まで進まないか、採決に進んでも反対する政治家によって否決されるという状態が続いた。一方で、前述のとおり、オーストラリア国民の意識は“過半数が支持”へと変わっていた。“国民が求めているのに政治家が動かない”という、現在の日本と似た状態になっていたのだ。

―国会ではどのようなことが起きていたのでしょうか?

ノーベル氏:「変化を生み出そうとすると、さまざまな課題に直面することになります。人々の古い考え方や既得権益、変化に脅威を感じる人々、あるいは、より多くの資金や資源を持つグループが、法律を現状のまま維持しようとするためにロビー活動を行なうこともある。結婚の平等に関してはそういうことが起きていました。政治家たちは世間と意見がズレており、オーストラリア国民の大多数が結婚の平等を支持していたにもかかわらず、政治家の大多数はそうではなかった。当時の私たちは、世間一般での支持を政治家の賛成票に反映させる方法をまだ見つけ出していませんでした。オーストラリア市民が信じていることに政治家が耳を傾けるようにするにはどうすればいいのか?ということが最大の課題だったのです」

画像: 2015年、結婚の平等を支持する企業がその姿勢を示すために全国紙に広告を掲載。
2015年、結婚の平等を支持する企業がその姿勢を示すために全国紙に広告を掲載。

オーストラリア国民の80%が結婚の平等についての自由投票(※議員が政党の方針に縛られず自分の意思で投票できるもの)をすることを支持するなか、それを実現させる方法を模索していたAME。しかし2016年、政府が政治家による投票ではなくプレビサイト(国民投票)によって是非を決めてはどうかと提案する。プレビサイトは国民投票の一種だが、同じく国民投票と訳されるレファレンダムと異なり憲法改正には使えない。この案に、多くの活動家や国民が強く反発した。

―国民に是非を問うというやり方にはなぜ反対が多かったのでしょうか?

ノーベル氏:「政治家たちは政治家としての職務を果たすべきだったからです。結婚の平等は、国会に法案が提出されて、国民が支持していることを認識した政治家たちが賛成票を投じることで実現されるべきでした。彼らがそのように適切な方法で賛成票を投じていたら、多くの国民の心痛が回避できたはずです。しかし残念ながらそうはならず、LGBTIQ当事者や家族、友人たちは、できるだけ多くのオーストラリア国民が賛成票を投じるようにキャンペーンを展開しなければならなかったのです」

画像: 結婚の平等の実現のために政治家に自由投票を求める2015年のデモ。このようなデモ運動がオーストラリア各地でたびたび行なわれていた。
結婚の平等の実現のために政治家に自由投票を求める2015年のデモ。このようなデモ運動がオーストラリア各地でたびたび行なわれていた。

個々のストーリーに焦点当てるー「結婚の平等とはWHATではなくWHO」

国民投票をするしないで揺れていた2016年、それまでボランティアのみで活動していたAMEはスタッフを雇い、シドニーのオックスフォード・ストリートにある書店の上に小さなオフィスを構えた。ノーベル氏は団体が雇った初のスタッフのひとりだった。

画像: 個々のストーリーに焦点当てるー「結婚の平等とはWHATではなくWHO」

―アダムさんは、AMEが団体として大きく変化した2016年に活動に参加されたんですよね?

ノーベル氏:「そうです。それまでの12年間、完全なるボランティア組織だった団体にとっては大きな変化でした。まずはみんなで集まって、これまでの活動を振り返り、戦略を練り、どのようなメッセージが効果的か探り、団体のリブランディングをして、ウェブサイトを新しくして、どのようなストーリーをどのような方法で伝えるかを考えました。オーストラリア全土にいる一般市民を集め、巻き込み、活性化させて、結婚の平等を信じる理由について声をあげてもらうためのあらゆる方法を考えていたのです。その後、シドニー市の好意によってより大きなオフィスを提供してもらえました。家具を借りてきて、自分たちでコンピューターを組み立てて、まさにスタートアップのような雰囲気でしたね」

―12ヵ月で、サポーターリストを4万人から10万人以上に増やせたそうですね。どのように成し遂げたのですか?

ノーベル氏:「成功するキャンペーン活動に必要なのは、頭=戦略、心=ストーリー、手=実行する人だと言われています。私たちのサポーターリストの大部分は、職場や街中で結婚の平等についての会話やアクションを起こしていた人々で、当初はLGBTIQ当事者が中心でしたが、その後、当事者の家族や友人へと広がっていきました。このサポーターリストを拡大するための根本的な戦略は、“結婚の平等について話すために必要な唯一の専門知識は、それが正しいことだと信じることだ”ということを理解してもらうことでした。彼らにできる最も強力なことは、結婚の平等に対する信念や、なぜそれを支持するのかを周囲の人々と分かち合うことであり、事実や証拠や研究は必要ないのです。必要なのは、自分たちのストーリーを共有すること。なぜそれを支持するのか、なぜそれに情熱を傾けているのかを話すだけで良いのです。それが変化を起こすのです。人々ができるそのような簡単でシンプルなステップこそが、オーストラリアで結婚の平等を実現のために不可欠だったのです。だから私たちは、そのステップを可能な限り簡単にすることに務め、そのようなことについてもっと知りたい、あるいは書き込みをしたいという人々に登録してもらうことで、デジタル・チャンネルを拡大していったのです」

画像: アダム・ノーベル(Adam Knobel)氏
アダム・ノーベル(Adam Knobel)氏

―団体はどのようなメンバーで構成され、それぞれがどのようなスキルを持ち寄ったのでしょうか?

ノーベル氏:「まずお伝えしておきたいのが、このキャンペーンの基盤となり、オーストラリアにおける結婚の平等を実現した中心人物は、一般市民のみなさんだということです。結婚の平等を信じる人々が、トークやフォーラムで声を発し、メディアで自分のストーリーを明かし、自宅や職場、教会のグループ、コミュニティセンターなど、オーストラリアのあらゆるところで会話をしたことが、世論を変え、国民の3分の2が結婚の平等を信じることになりました。

団体内で活動していたスタッフやボランティア、ユニットは、そういったコミュニティやそこで起きている会話を支援することを目的に構成されていました。みなさんの会話を支援するためにメディアやデジタル・チャンネルにメッセージや情報を発信するチーム。人々のパーソナルなストーリーを発信するビデオチーム。ほかのグループと協力するコーディネーターのチームがいました。コーディネーターは、結婚の平等を支持することに興味を持つ人々によるグループと会って、その人々が属する宗教なり、文化なり、企業の中でどのような支援活動ができるかを話し合いました。

―AMEからの情報発信は、LGBTQ+当事者や家族、友人などによるパーソナルなストーリーが中心でしたが、そこに重点を置いた理由を教えてください。

ノーベル氏:「このキャンペーンにおいてマントラのように繰り返し言われていたことのひとつが、『結婚の平等とは何か(WHAT)ではなく誰(WHO)のためのものか』ということです。結婚の平等に関する会話は、とくに政治の世界では、その概念や考え方、法律、どのように施行するかなどに焦点が当たりやすく、その中心にいる、法の下で平等に扱われたいと願う人々の存在が忘れられがちです。だから、この不平等が誰に影響を与えているか、法律が変われば誰の人生がより良くなるかという点を人々に認識してもらうために、個々のストーリーを共有することにこだわりました」

郵便投票に有権者の8割が参加―「リアルで、偽りがなく、パワフル」

結果的に政府は、2017年8月、投票義務のない郵便投票で是非を決めると突如発表。「同性カップルが結婚できるように法律を変更するべきですか?」という質問に「YES・NO」で答える形式の投票用紙が発送されるまでわずか1ヵ月。突然の決定を受けて、シドニーを拠点としていたAMEは14日以内にオーストラリア全土の各州都に支部を拡大。ノーベル氏も、「今振り返ってもどうやってのけたのか不思議なくらいです。あの14日間は、間違いなく寝不足でしたね」と笑う。

14日の間に主要スタッフを12人から100人強へと増やし、さらにオーストラリア中から1万5,000人以上がボランティアとして参加し、最低6割の人にYESと投票してもらうYESキャンペーンが始動。結婚の平等に支持があることは分かっている。課題は、その支持者たちに強制力のない投票に参加してもらうことだった。AMEでは、選挙登録していない人に登録を促すほか、チラシやポスター、電話、動画などあらゆる方法で有権者にメッセージを発信。各戸を回って投票を促す訪問活動では、10万戸以上が訪問されたという。

画像: 地域の家ひとつひとつをまわってYESへの投票を促す活動をしたボランティアの人々。
地域の家ひとつひとつをまわってYESへの投票を促す活動をしたボランティアの人々。
画像: 店先や電柱などオーストラリア中にYESと投票することを促すポスターやシールが登場した。
店先や電柱などオーストラリア中にYESと投票することを促すポスターやシールが登場した。

―郵便投票のためには、どのような戦略が取られたのでしょうか?

ノーベル氏:「最も重要だった戦略は、メッセージをクリアにすること、人々がすでに持っている価値観と結びつけること、それぞれが共有するストーリーやそれぞれが周囲とする会話こそが最も効果的だと訴えること、人々が簡単に参加できるようにすることでした。

最も効果的だったメッセージであり、最も多くの人が持っていた価値観は、“法の下では誰もが平等に扱われるべきだ”というものでした。それが、オーストラリア人が最も共鳴したことなのです。だからそれを繰り返し話しました。結婚の定義とは“何か”という議論や政治家、議会からは離れ、個人やコミュニティのストーリーにスポットライトを当てたのです」

キャンペーン動画『これはフェアであるということ(和訳)』

子どもを持つ両親が、「子どもたちにはフェアであることの重要性をいつも教えてきました。結婚の平等とはそういうことなのです。みんなが同じように扱われるということ。それだけです。だからこそ、私たちはもちろんYESと投票します」と語る。

当時のキャンペーンのなかでもノーベル氏の記憶に強く残るもののひとつが、「#RingYourRellos(意味:親戚に連絡しよう)」というものだという。これは、それぞれが知っている人に電話して賛成への投票を促そうというもの。YESキャンペーンでは、リサというLGTBQ+当事者が自身の祖母に電話する動画を公開。当初は「任意投票でしょ」と言っていた祖母も、恋人と結婚したいと話す孫の言葉を聞くうちに、“信仰上の理由で本来は反対だがあなたのためにYESと投じる”と考えを決める。この動画がきっかけで同ハッシュタグは豪ツイッターでトレンド入り。結婚の平等を信じる多くの人に、賛成票を投じてもらうためには自分自身も友人や家族と会話をしなくてはと思わせることに成功した。

しかしそんななか、ハプニングが起こる。行政側のミスで、予定よりも早く一部の人に投票用紙が届いてしまったのだ。スケジュールの大幅変更に直面したYESキャンペーンは、ここでもコミュニティにいる個々の力に頼った。

ノーベル氏:「すべてのサポーターにメッセージを送りこう言いました。

今日、郵便受けをチェックして投票用紙が届いていたら、YESに印をつけてその足でポストに持って行ってください。フルーツボウルの下に置いておくのも、バッグの中にしまっておくのもダメです。YESと印をつけたら即投函してください。さらに、結婚の平等を情熱的に支持する素晴らしいサポーターである皆さんにもう一つお願いがあります。ポストに投函する際にセルフィーを撮って『#PostYourYes(意味:YESを投函しよう)』というハッシュタグをつけてSNSにアップしてくださいと。

するとその後、ソーシャルメディアでは#PostYourYesがトレンド入りして、投票を行なう美しい写真が国中から次々とアップされました。このような瞬間こそが、私のお気に入りの思い出です。リアルで、偽りがなく、パワフルで、これ(結婚の平等)は人々のものであるという本質を表しているからです」

画像: オーストラリア中から投稿された、#PostYourYesの写真。
オーストラリア中から投稿された、#PostYourYesの写真。
画像: オーストラリア出身の歌手トロイ・シヴァンも#PostYourYesをツイートした。©Troye Sivan/Twitter
オーストラリア出身の歌手トロイ・シヴァンも#PostYourYesをツイートした。©Troye Sivan/Twitter

9月中旬に郵送された投票は11月初めに締め切られ、2017年11月15日の結果発表で、オーストラリア国民の61.6%がYESと投票したことが判明。強制力のない郵便投票だったにもかかわらず、約1,300万人が参加。人口約2,500万人のオーストラリアにおいて、有権者の80%近くが投票に参加したことになる。

結婚の平等がもたらしたインパクトと現状―「活動は今も続いています」

郵便投票の結果が出た3週間後の2017年12月7日、婚姻法の「男性と女性」という表現が「2人」へと変更された結婚改正法が衆議院で可決。すでに他国で結婚している同性同士のカップルは法的に伴侶と認められ、新たなカップルの婚姻も申告期間30日が経た2018年1月から始まった。そして、2004年に一般市民によるボランティア活動として始まったAMEは、2020年に団体としての活動を終了した。

画像: 可決当日、結婚の平等の実現を祝してシドニー・オペラハウスは虹色にライトアップ。
可決当日、結婚の平等の実現を祝してシドニー・オペラハウスは虹色にライトアップ。

―結婚の平等を求める運動は、アダムさん自身にはどのようなインパクトがあったのでしょうか?

ノーベル氏:「結婚の平等。私にとってそれはいくつかの意味を持ちます。まず、誰もが法の下で平等に扱われるべきだということ。LGBTIQ当事者である私自身も、私のきょうだいが持つ同じ権利を持つべきであり、結婚できるべきだということです。ただ私にとってはそれ以上に大きい意味があります。次世代の若者が、結婚の平等が現実のものとなった社会で育つことができるということです。自分が何者か、自分が誰を愛するかについて国レベルで話し合いが起こることは、ネガティブな経験になりえることです。当時の私は、それをできるだけポジティブで活気に満ちた、ハッピーでオープンで包容力があり、歓迎された会話にしたかったのです。

先日、7歳の息子さんを持つ仕事仲間からメッセージをもらいました。息子さんから『ママ、確認したいんだけど、女の人は女の人と、男の人は男の人と結婚できるんだよね?』と言ったそうです。だから『ええ、そう。それについて何か思うところがある?』と聞いたら『納得できる』と言ったそうです。彼はどこかで何かを聞いて自分の考えが正しいか確認したかったようですが、彼女は『今やこんなところまで来られたなんて信じられる?』と言っていました。彼にとっては、それが自然で普通のことなのです。それこそが、結婚の平等が社会にもたらすインパクトだと思っています。単に結婚できるということだけではありません。大人が法の下で平等に扱われるということだけではありません。子どもたちが成長するなかで、ありのままの自分がサポートされ愛されていると感じられるということなのです」

ー今振り返ってみて、当時十分に活用されなかったと思う施策や、逆に現代のキャンペーン担当者が使うべきだと思うツールはありますか?

ノーベル氏:「ツールというものは、地域社会での会話やつながり、全国各地での人間関係を強化するためのものです。キャンペーン活動をする人にとっては、時間、資金、人手が足りないせいで、活用してもしきれないのが人間関係の構築です。みなさんに安心してコミュニティの中で会話ができると感じてもらえるためにも、個々との関係につぎ込まなくてはいけません。だから私自身、もう一度やり直せるとしたら、私たちがたくさん行なっていたその部分をさらに強化してやると思います。

画像: (2023年3月シドニー)LGBTQ+の権利運動において達成してきたことを祝し、まだ達成していないことを認識するためのプライドマーチには5万人が参加した。
(2023年3月シドニー)LGBTQ+の権利運動において達成してきたことを祝し、まだ達成していないことを認識するためのプライドマーチには5万人が参加した。

―現在、オーストラリアのLGBTQ+コミュニティではどのような権利運動が起きているのでしょうか?

ノーベル氏:「よく言うのですが、私たちが歩んできた歴史を忘れてはなりません。2017年に結婚の平等が成立したことは、長い旅の終わりだったのです。国中の人々による素晴らしい活動やアクティビズムで実現したものですが、この旅は、同性愛者でいることが犯罪だった時代に、友人や家族、職場の仲間にカミングアウトしたすべてのLGBTIQの人たちから始まったものです。その後も、権利のためにデモ行進を行なった活動家たち、LGBTIQの人が養子縁組をする権利を確保した運動家たち、LGBTIQであることを理由に仕事を解雇されないように働きかけた運動家たち、そして、私たちが何年も何年もかけて祝福してきたあらゆる進歩によって築かれたものなのです。このように、私たちはコミュニティとして長い間、平等な扱いを求めて運動してきました。そしてその活動は今も続いています。

オーストラリアのLGBTIQコミュニティで今議題になっているのは、法律の改良であることが多いです。多様なジェンダーの友人や家族が社会でありのままの自分でいられるよう保護されることや、差別禁止法が現代社会の仕組みを反映させた最新のものへとアップデートされているかといった、単純だが必要とされるものです。こういった活動を先導しているEquality Australiaという素晴らしい団体があります。結婚の平等キャンペーンから生まれた団体で、私が一緒に働いていた人たちも何人か在籍しているんです。私は誇りを持って彼らを支援しています」

Equality Australiaは公式サイトのほか、インスタグラム、フェイスブック、ツイッターで情報発信を行なっている。また、オーストラリアにおける結婚の平等の闘いについては、AMEのアレックス・グリーンウィッチとシャーリーン・ロビンソン著の『Yes Yes Yes: Australia's Journey to Marriage Equality』(※英版のみ)にて読むことができる。

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