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パリの喜び、食の愉しみが待つブラッスリー・デ・プレ。

  • 2023.8.6

この2~3年、新しいレストランがオープンするとシェフは人気テレビ番組『トップシェフ』出身者、ということが多いパリ。彼らが目指し、提案する料理のコンセプトは似ていることが少なくなく、この手の料理、ちょっと飽きてきた!こう思う食いしん坊たちのために、いま、ビストロやブラッスリーがオーセンティックな料理の21世紀バージョンで巻き返しを図っている。良い素材を使ったシンプルな料理は、間違いなくおいしい!

初夏に「Brasserie Des Prés(ブラッスリー・デ・プレ)」がオープンした。住所はクール・デュ・コメルス・サンタンドレ6番地。バルテュスが1950年代に描いた有名な絵画『Passage du Commerce Saint-André』で知られる、18世紀の石畳に歴史が感じられるパッサージュだ。小路にあってブラッスリーは横に広く、3フロアもあり、客席数はテラスを含めると200席以上。19世紀の建物だが、観光ガイドにも載っているという12世紀の石の塔を内包している。王フィリップ=オーギュストの時代にノルマン人の侵略に対する城壁の名残りで歴史記念建造物に指定されているので、その存在は保護されているのだ。食事客の存在もなんのその、ガイド片手に店に塔を見学に店に入ってくる人もいるという。

食事客の目に留まるのは、テーブルやカウンターに置かれている犬やカエルなどのピッチャーだろう。パリのブラッスリー通はこのピッチャーを見ると、2019年にオープンしたブラッスリー・ベランジェを思い出すはずだ。ここはデ・プレのオーナーのヴィクトールとシャルリーが手がけた最初の店で、動物の水差しは彼らのいわばマスコットなのだ。彼らはその後ブラッスリー・デュビヨを2区のサンティエ地区に開き、さらに、昨夏にはブラッスリー・マルタンを11区に……そして彼らによるグループNouvelle Gardeの4軒目がこのデ・プレである。

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左: ようこそ、ブラッスリー・デ・プレへ。中: 老舗メゾン・ドリュッケーの高級ビストロチェアの赤が色鮮やかにテラス席に輝く。右: グループのブラッスリーでもアイスクリーム店を併設するのはこのデ・プレだけ。Glacier Des Prés 営業は12時~23時。photos:(左・中)©joannpai、(右)Mariko Omura

シェフのテオフィル・オゼール=ペレッティ、グループのエグゼクティブ・シェフのチボー・ダルテイルが、選び抜いた素材で料理するのはポワロー・ヴィネグレット、パテ・アン・クルート、ソーセージとジャガイモのピューレ、魚のアイオリ、ビーフ・タルタルなどブラッスリー料理の定番だ。ディナーにはランチタイムにない、少々高級な舌平目なども登場する。現代人の口と胃袋に合うキュイジーヌ・ブルジョワに近い伝統料理の数々。デザートもパリ・ブレストやムース・オ・ショコラといった具合にクラシックである。バスク地方のメゾン・マイテのイバイアマ・ハム、ピレネー地方でフランク・ポマレズがスモークした鱒といった例外がいくつかあるけれど、基本的にホームメイドを信条にしている店だ。グループのほかのブラッスリーと違うのは、デ・プレにはグラシエ・デ・プレが併設されていること。この店のオリジナルアイスクリームはテイクアウトか、レストランのデザートで!

左: “いかにも”ブラッスリーという前菜は、エスカルゴ(奥)とパテ・アン・クルート。これは夜の前菜から。中: ウフ・ミモザはセロリ・レムラードと一緒盛りで4ユーロ!マヨネーズはもちろん自家製だ。ポワロー・ヴィネグレットにはクルトンやノワゼットで食感をプラス。7ユーロ。右: 食べ終わるとこんなチャーミングな模様が姿を見せる!モチーフは複数あり。photos:(左)Bastien Lattanzio、(中・右)Mariko Omura

左: 魚のアイオリ、野菜のニョッキなどメインを仕上げるシェフ。中: ランチおよびディナーで味わえるソーシス・ビューレ(13ユーロ)。8時間煮込んだ深い味わいの肉汁をピューレにからませて……。右: ディナーは気取って、舌平目のムニエル(50ユーロ)など。photos:(左・右)Bastien Lattanzio、(中)Mariko Omura

左: ブラッスリーの楽しみのひとつはアルコール。カクテルとタパス風料理で。中: 夜、ふたりのデザートはチェリー・クラフティ。ホームメイドのチーズアイスクリームを乗せて、キルシュをかけてフランベ!(2名分20ユーロ)。右: ホームメイドのアイスクリームを挟んだブリオッシュに、クレーム・アングレーズをかけるトロペジエンヌ・グラセ(10ユーロ)はランチでもディナーでもデザートに。photos:Bastien Lattanzio

デ・プレのインテリアデザインはロンドンのB3 DesignersとDorénavant Studioに任された。赤と白のテント、野菜をモチーフにしたアールヌーヴォー調のモザイクが、細いパッサージュに華やぎを添えている。おそろいのTシャツを着た若いサービスチームの笑顔もあいまって、陽気な雰囲気にあふれる店内。地上階の右側はオープンキッチンの前にカウンター席が設けられ、左側は石の塔のあるスペースだ。2階席は階段の続きで、ある年代には郷愁を呼び覚ます広告が額に入って壁を飾り、テーブルには白いクロスがかかって……夜の食事はここで!と思わせるインテリアである。バーカウンターはこの2階、そして3階にも。それぞれ雰囲気が異なるのがおもしろい。朝食から営業しているデ・プレはさまざまなオケージョン、さまざまな世代に向けたブラッスリーなのだ。この店で時間を過ごすと、ヘミングウエイの気分で“パリは移動祝祭日”と言ってしまいたくなる?というのは少しオーバーだけれど、左岸気分がたっぷり味わえて良い思い出となるだろう。

1階、雰囲気が全く異なる左右のスペース。photos:©joannpai

2階。地上階から上へと聳える12世紀の塔。photos:Mariko Omura

Brasserie Des Prés6, cour du Commerce Saint-André75006 Paris営)9:00~24:00無休www.nouvellegardegroupe.com@nouvellegardegroupe

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