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世界からお届け!SDGs通信 パリ編。南仏「カマルグの白い馬」を守り、共生し続ける牧夫たち

  • 2023.8.6
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世界からお届け!SDGs通信 パリ編。南仏「カマルグの白い馬」を守り、共生し続ける牧夫たち
©Christian Klein de Pixabay

伝統的な飼育法に支えられ、半野生で生きるフランス固有種・カマルグ馬

プロヴァンス地方、ローヌ川と地中海に囲まれた三角州地帯カマルグ。この地が育む豊かな自然の中を駆け回るのが、カマルグ馬だ。起源は先史時代にまで遡れるという古来種で、明るい灰色から白の被毛が美しい。種として公式に認定されたのは1978年のこと。

「カマルグ馬の今日での役割は、まずは牧畜でしょうか。牛の群れを率いる牧夫はカマルグ馬に騎乗します」と、カマルグ馬育種家協会のオーレリアンが話してくれた。白い馬たちはそのほか、競技馬としての面も持っているという。と言っても、競馬や闘牛とは異なり、牧牛を動かすのに必要な技術を競うものだ。

そんな馬と人との関わりは、「マナド」に集約されている。マナドとは、馬たちが生きる広大な野外牧場のこと。カマルグ馬をユニークな存在たらしめる伝統だ。14世紀にはすでにマナドシステムは存在していたとされ、現在カマルグには100を超えるマナドがある。各マナドでは、ギャルディアン(英語のガーディアン)が馬の世話や競技用訓練を行う。最低4頭の繁殖牡馬の常駐、1ブロックは20ヘクタール以上で設定……などがマナドの基準。現在では、マナド育ちの馬だけが「カマルグ馬」とされるという。敷地内では完全放牧が義務付けられていて、ときに草上、ときに波打ち際で、白い鬣(たてがみ)を揺らして走る馬の群れが見られる。

カマルグは湿地帯ならではの特殊な植物相・動物相を持ち、1977年にはユネスコが「カマルグ生物圏保護区」として指定。馬たちは貴重な生態系の一環でもあり、カマルグ文化の一部でもある。地元の伝統が守る「カマルグの白い馬」は、自然と人の共生の象徴かもしれない。

世界からお届け!SDGs通信 パリ編。南仏「カマルグの白い馬」を守り、共生し続ける牧夫たち
仔馬の出産にも人は介入せず、マナド内で自然状態で行われる。©Christian Klein de Pixabay
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カマルグ馬によるソーティング競技(牛の群れから指定個体を分け、囲いに入れていく)の様子。
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カマルグ馬と強い絆を結ぶ騎手たち。手に持っているバトンで牛を動かす。

Information

カマルグ馬育種家協会

1964年設立。カマルグでは、観光客向けのマナドツアーなども実施されている。

HP:https://aecrc.com/

profile

黒木許子

くろき・もとこ/ファッション誌やカルチャー誌で編集経験を積む。学術系コンテンツへの興味に導かれ、パリの国立自然史博物館修士課程へ。BRUTUSウェブにて「BRUTUS WEEKLY HOROSCOPE」も担当。

Instagram :@motoko322

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