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「ヒト・モノ・カネがいよいよ日本に集まり始めた」そのとき海外の投資家たちが真っ先に買う株とは

  • 2023.8.2

投資でお金を増やしたいと思っても、日々の価格変動を見ているとなかなか手が出せない。複眼経済塾塾長の渡部清二さんは「日々のニュースから本質を見抜く習慣をつければ、世の中の大きな流れを理解でき、短期的な相場変動に右往左往することはなくなる」という――。

トレーダーの女性がチャートを見つめている
※写真はイメージです
真実ではなく本質を見抜いて投資に生かす

私が塾長を務める複眼経済塾では、「物事の本質をつかむことが重要」だと教えています。たとえば、国のトップ同士が会談した場合、その内容は真実です。それを直接知ることができませんし、当事者以外がそこに首をつっこむべきではないと思っています。真実を知ろうとするのではなく、本質を求めるべきでしょう。

その手段がニュースの活用です。いま流れてきている、ニュースから「これはどういうことだろう」と想像を巡らします。表に出ているニュースはごく一部ですから、想像力を発揮して、本質を見極めるのです。

いま見えているデータから、世の中がどうなっているか、仕組みを理解して、人生の判断あるいは投資判断に活用することが大事です。

これはプロも実践している方法です。たとえば、米国のCIA(中央情報局)は「98%の情報を公開情報から取得している」といわれています。新聞記事も丹念に集めて分析し、重要な事実をつかむ。地道な情報収集をしているのです。公開情報から本質を見抜く方法を学ぶことが重要です。

また、過去に私たちが本質だと思っていたことが、いまも正しいかどうかわかりません。日々のニュースをチェックしながら、情報をアップデートしていく必要があります。この記事では、実際に新聞に掲載された記事から何を読み解き、投資にどう生かせばよいかを紹介していきます。

「円安になると企業業績が上向く」は間違い

このところ、為替の変動が激しくなっています。そのときに、「円高になると株が売られ、円安になると買われる」とのニュースを目にします。確かに円安になると外国人投資家が日本株を買い増しすることがあります。

ただそれは、「今日円安になったから、明日買う」といった短期的なものではありません。それ以前に外国人投資家は運用資産のアセットアロケーションを決めています。たとえば、「日本株には運用資産の5%を配分にする」と決めるのです。

彼らはドル建てで考えていますから、円安になると日本株の配分が5%から4%に下がることがあります。そこで、5%に戻すために日本株を買い増すのです。

あるいは、「円安になると企業の業績が向上するから株価が上昇する」と解説する人もいます。これも正しくありません。たとえばトヨタ自動車(7203)やソニーグループ(6758)が短期的な為替動向で業績が影響を受けるような経営をしているわけがありません。

つまり、投資において短期的な為替変動はノイズであって、右往左往する必要はないのです。

投資判断の引き上げで日本に投資マネーが集まる

7月12日の日本経済新聞「外国人と日本企業つなぐ コロナ後、人手不足強く」との記事が掲載されました。2021年に創業したスタートアップのNGAが企業と就職希望者をマッチングするアプリの英語版を世界173カ国に投入するといいます。

コロナ後の人手不足が続く中で、海外の有力大学と提携して人を呼ぶのです。いよいよ世界のヒト、モノ、カネが日本に集まる動きが出ています。

また同じ日に「米欧運用会社、相次ぐ投資判断上げ 日本株に変革期待」との記事もありました。世界最大の運用会社であるブラックロックは、これまで日本への投資判断を「弱気」としていましたが、「中立」に変更しました。欧州最大級の運用会社であるアムンディも「やや弱気」を「中立」に変更、英国の運用会社であるシュローダーも「弱気」を「中立」にしました。

このところ日経平均株価は急激に上昇し、バブルではないかと心配している人もいるでしょうが、いまだ「弱気」を「中立」に戻した程度です。ブラックロック、アムンディ、シュローダーは日本に拠点がありますから、日本をよく理解しています。彼らがようやく「中立」にしただけです。まだ「強気」ではありません。日本を全く知らない外国人投資家が山ほどいます。彼らはブラックロックなどの判断の変更を見て、日本に参入してくるでしょう。そのとき真っ先に買われるのはソニーなどのグローバル企業です。

ドルマークとチャート
※写真はイメージです
米国のキーマンが次々と訪中する意味とは

7月17日の日本経済新聞には「中国恒大の最終赤字、2年で計11兆円 不動産の評価下げ」との記事が掲載されました。中国不動産大手の中国恒大集団が発表した2021年12月期と22年12月期連結決算によると、2年間の最終損益合計が約5800億元(約11兆2000億円)の赤字となり、債務超過に転落しました。

そんな中、ジョン・ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)が訪中して、7月18日に外交トップの王毅共産党政治局員と北京で会談しました。そして7月20日には100歳になるヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が訪中して、習近平国家主席と会談しました。

米国のキーマンが訪中する流れはしばらく前から続いています。最初に訪中したのはビル・ゲイツ氏です。6月16日に習近平主席と会談しました。その後、6月18日にアントニー・ブリンケン米国務長官が5年ぶりに訪中しました。さらに7月7日にはジャネット・イエレン米財務長官が訪中し、李首相と会談しています。

中国は、米国債を大量に保有していますが、最近はそれをどんどん売っているようです。「あまり売りすぎないように」とイエレン氏が話をしたのではないでしょうか。

8月中旬にドル暴落の可能性も

そして7月17日にケリー米大統領特使が訪中したわけです。1カ月の間に4人のキーマンが訪中しているわけですから、何かあるとしか考えられません。これは私の妄想ですが、8月にロシア、中国、産油国の間で何らかの合意がなされるとの噂があります。

現在は基軸通貨がドルなので貿易の決済は、基本的にドルで行われています。その中で「原油の決済を人民元にしよう」との話が進んでいるようです。一方で、金を大量に保有しているロシアは、金本位制を導入しようとしています。

これらが現実になれば、大変な影響を及ぼします。ニクソンショックどころではありません。ニクソンショックは、1971年に米国のニクソン大統領が金とドルの交換停止を発表し、世界経済の枠組みが大きく変化した出来事です。これに匹敵するようなことが8月の半ばに出てくる可能性があります。

この時に何が起こるか、ドル暴落です。ドルの覇権が終わるわけですから、ドルは大きく売られるでしょう。それだけではありません。基軸通貨の地位が揺らげば世界同時ショックが起きて、世界同時株安がやってくるかもしれません。そして、米国から日本へ資金がシフトする可能性が十分にあるでしょう。

そう考えると、この8月はリスク資産のウエートを下げておいたほうがよいかもしれません。いずれにしても8月は夏枯れといわれ、投資で利益を得るのは難しい時期ですから、あえてリスクをとらず静観するのがいいと思います。

TSMCの4年ぶり減収減益はチャンスになるか

7月21日の日本経済新聞には「TSMC、4年ぶり減収減益」との記事が掲載されました。半導体世界大手のTSMC(台湾積体電路製造)の2023年4~6月期の決算が減収減益になったというのです。

四半期ベースでの減収減益は19年1~3月期以来、約4年ぶりのことですが、これは4年ぶりにチャンスが訪れたことを意味します。

企業の収益は売り上げと利益の組み合わせによって、①増収増益、②増収減益、③減収減益、④減収増益の4パターンを繰り返します。


<売上と利益の4つの組み合わせ>

増収増益
売上高も利益も増えている状態。収益に合わせて株価が上がるとされる。

増収減益
売上高は増えているが利益が減少している状態。株価は天井を突くとされる。

減収減益
売上高も利益も減少している状態。業績悪化の局面で株価は下落するとされる。

減収増益
売上高は減少しているが、利益が増加している状態。この局面は株価の大底圏とされる。

ここで注目すべきは、売上高の変化に先行して利益が変化することです。TSMCのように減収減益の状態は、売上高と利益の両方が減少していることを意味します。これが減収増益に移行すると、売上高が減少していても利益が増加している状態になります。コストの抑制などによって、売上高が減っても利益は残りやすくなっている段階です。

つまり、減収減益の状態でも、売上高の減少よりも早いペースでコスト削減に取り組めば利益を出せる体質となり、売上高が少し戻れば利益が出るようになります。その結果、新たな商品やサービスなど、次なる手を素早く打てるようになって、株価の上昇も期待できます。

このような過程を経て増収増益に向かいつつある企業を狙うのが投資の王道です。その意味でTSMCは注目すべき企業といえます。

日本企業が脱炭素をリードする

脱炭素は世界中の大きな課題ですが、日本の技術のすごさを示す記事が続いています。まず、7月6日の日本経済新聞には「レーザー核融合、世界初の実証炉 阪大発スタートアップ」との記事が掲載されました。

核融合発電は脱炭素に貢献するエネルギー源として期待されています。大阪大学のスタートアップが2030年代半ばの商用化を目指しているとのことです。

核融合の発電への応用は2050年以降になると見込まれていましたから、これは非常に早いスピードです。

同じ日に「ごみ分別せずプラ再生 荏原が新技術、回収・処理効率化」という記事もありました。荏原製作所(6361)がごみを細かく分別しなくても、プラスチックをリサイクルするできる技術を開発したといいますから、ごみ処理が大きく変わる可能性があります。ごみを高温処理して分子レベルまで分解してプラスチックの成分だけ抽出してプラスチックを再生します。

たとえば、コンビニエンスストアのお弁当の容器はプラスチックですが、中身のごはんやおかずは有機物です。これまで売れ残りの弁当はまとめて焼却するか、人の手で分別して容器をリサイクルするしかありませんでした。この技術を使うと、まとめて入れれば、プラスチックだけ回収できてしまうのです。

トヨタがEVで生産革命

もう一つトヨタ自動車(7203)の記事です。7月5日に掲載されたものですが、「トヨタ、EVで生産改革 工程や工場投資を半減」となっています。新たな生産技術「ギガキャスト」を2026年に発売する電気自動車(EV)に採用するといいます。

ギガキャストはボディの骨格のようなものです。トヨタは次世代EVで車体を前部、中央、後部の3つに分ける構造を検討しますが、そのうち、後部と前部でギガキャストを利用します。後部の試作品ではこれまで部品点数が86点ありましたが、1点で済むそうです。また、工程数も33から1に集約できます。前回の記事でも紹介しましたが、トヨタがEVでいよいよ本気を出しているようです。

世の中が大きく変わることを示した記事もありました。7月21日の日本経済新聞には「テレビ出荷が過去最低 23年1〜6月、外出消費増の陰で」との記事が掲載されたのです。JEITA(電子情報技術産業協会)が発表した2023年1〜6月の薄型テレビ出荷台数が01年以降、上半期として過去最低だったのです。

この記事を見て私は改めて「すでにテレビの時代は終わった」と感じました。テレビを持っていない若者はすでにたくさんいます。スマートフォンで動画を視聴するスタイルが定着していますから、いずれテレビはなくなるのではないでしょうか。

これは世の中の大きな流れといえます。たとえば、NHKは受信料を徴収できなくなるかもしれません。さまざまな影響が出てくるはずです。

このように新聞記事から世の中の大きな流れをつかむことが投資やビジネスを成功させる秘訣ひけつです。

渡部 清二(わたなべ・せいじ)
複眼経済塾 代表取締役・塾長
1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券入社。個人投資家向け資産コンサルティングに10年、機関投資家向け日本株セールスに12年携わる。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読む「四季報読破」を開始。20年以上の継続中で、2022年秋号の会社四季報をもって、計100冊を完全読破。2013年野村證券退社。2014年四季リサーチ株式会社設立、代表取締役就任。2016年複眼経済観測所設立、2018年複眼経済塾に社名変更。2017年3月には、一般社団法人ヒューマノミクス実行委員会代表理事に就任。テレビ・ラジオなどの投資番組に出演多数。「会社四季報オンライン」でコラム「四季報読破邁進中」を連載。『インベスターZ』の作者、三田紀房氏の公式サイトでは「世界一「四季報」を愛する男」と紹介された。著書に、『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SB新書)、『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』(東洋経済新報社)、『「会社四季報」最強のウラ読み術』(フォレスト出版)、『10倍株の転換点を見つける最強の指標ノート』(KADOKAWA)などがある。

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