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かわいいけど…猫が「猫パンチ」を繰り出すのはなぜ?“病気”の可能性も?獣医師に聞いてみた

  • 2023.8.2
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とてもかわいい「猫パンチ」だけど…
とてもかわいい「猫パンチ」だけど…

猫が、前足で飼い主やおもちゃなどに対して「猫パンチ」を繰り出すことがあります。そのしぐさはとてもかわいらしいものですが、「どうして猫パンチをするんだろう?」「もしかして嫌われてる…?」と感じたことはありませんか。猫はなぜ、何のために「猫パンチ」をするのでしょうか。ますだ動物クリニック(静岡県島田市)院長で獣医師の増田国充さんに聞きました。

素早く強いパンチは「恐怖や威嚇」

Q.猫が「猫パンチ」をする理由や意味は何ですか。

増田さん「一般に『猫パンチ』と呼ばれる行動は、そのときの猫の心理状態や、手が出る力加減によって、さまざまな理由があると考えられます。

パンチと呼んでいいかも分からないくらい、何かに対してちょいちょいと手を出すことがあります。これは何か興味や関心を示しているときに見られる動きで、好奇心によって対象のものに手を出している状態です。気持ちが落ち着いていることが多いのですが、高ぶってくるとその力の入れ方が強くなる他、爪を出すことがあるかもしれません。

何となく気乗りせず、不満や拒否を示す場合にも手が出ることがあります。このときはどちらかというと、対象となるものを押しのけるようなしぐさとなります。よかれと思って猫をなでていても、猫自身がその気分でないときにも見られます。場合によっては爪を出して、拒否することもあります。

また、恐怖や威嚇の行為として、素早く強いパンチを繰り出すことがあります。このときは、うなり声や、『シャーッ』と声を上げることがよくあります。相手に対して明らかに敵意を示している状態なので、うかつに手を出すとけがをする恐れがあります。このように、猫のパンチはさまざまな理由で生じる猫の行動と捉えることができます」

Q.猫パンチを繰り出すことが多い猫の特徴はありますか。

増田さん「猫の性格や行動はさまざまですが、猫に強いストレスがかかるような状態となっているときは、恐怖心を持ち合わせていることが多いと考えられます。例えば、初めての場所を訪れたとき、相性の合わない猫と遭遇したときなどは、不安や緊張が高まります。このようなときは、猫自身が“身を守る行動”としてパンチを繰り出します。

また、普段は温厚な猫が、威嚇や攻撃性のあるパンチを出す場合は、これらの原因の他、体調不良である場合も考えられます。どこかに痛みがあったり、排尿や排便が思うようにできなかったりするなど、普段と異なる様子である場合は『もしかしたら病気やけががあるかもしれない』と考えておくとよいかもしれません。

なお、年齢による性格の変化は人間でも見られますが、猫では老齢になると『甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)』というホルモン疾患になることがあります。体重減少や毛並みの悪化の他、攻撃性が強くなり、目がぎらつくといった変化がみられます。気になる場合は、動物病院で検診を受けてみましょう」

Q.愛情表現などによるパンチと、攻撃が目的のパンチを、飼い主が見分けるポイントはありますか。

増田さん「先に紹介した『パンチが出る要因』は、猫の心理がそれぞれ異なります。従って、それを見極めることが重要になると思います。

猫の心理状態は、表情やしぐさから推測することができます。例えば、リラックスしているときは目を細めているなど、瞳孔(黒目)がそれほど拡大せず、耳は立っているものの張り詰めていない状態です。逆に、恐怖を感じていたり、威嚇をしていたりするような場合は、瞳孔が開き、毛が逆立って弓なりの姿勢をしています。

痛みがどこかにある場合は、体の動き自体が緩慢あるいは強い緊張状態になったり、触れられることをことさら嫌がるようになったりします。猫は気分の移ろいが激しい動物ですが、そのときの気持ちをくんであげることも大事な気遣いですね」

Q.その他、猫パンチ自体や、猫パンチをよくする猫について、注意が必要なポイントとは。

増田さん「猫の性格は個々様々です。臆病な猫にはなるべく、びっくりさせたり恐怖感を与えたりしない気遣いが必要です。また、音や光といった刺激も時として『不安』と感じることがあり、結果として猫パンチを発することにつながる場合があります。猫がストレスをためない環境づくりをしてあげましょう。

一方で、猫の健康面にも気を使ってあげたいところです。猫は体調不良になっても、その症状が軽い場合、はっきりと表に現れないことがあります。実際に、猫は関節炎をはじめとした整形外科による不調が潜在的に多いのではないかという報告があります。気付きにくい痛みや不快感をいち早く察知し、早期に対策を取ることで、おうちの人がネガティブな猫パンチを受ける機会が軽減できるかもしれません。

なお、猫パンチによって傷を負った場合、『猫ひっかき病』という細菌感染症にかかることがあります。定期的なノミ予防と手洗い、受傷した場合は病院で診察を受けるようにしてくださいね」

オトナンサー編集部

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