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人生が停滞中? 前向きな習慣を築くためのシンプルな4つのステップ

  • 2023.8.1

インスタグラムで大人気の心理カウンセラー、ソフィー・モート博士(通称ソフ博士)に言わせると、人生に変化を求めるのは普通のこと。その一方で、自分の足が現状にベットリ貼り付いている感じがするのもまた普通のこと。

私たちの行動の4割以上は自動的。だから、正しいツールさえあれば、ヨガをするはずだったのにワインを注ぎ、スマホを持って、ネットフリックスを観てしまう癖も直せる。

新著『(Un)stuck: five steps to get out of your own way』の発売を記念して、人生の大部分を占める習慣を断ったり新たに築いたりする方法、認知バイアスがよりよい人生の邪魔をする理由、私たちがチャレンジではなくコンフォートゾーンを求めてしまう神経科学的な理由をソフ博士が教えてくれた。イギリス版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。

※新しい習慣の築き方が先に知りたい人は、一番下までスクロールして。

ウィメンズヘルス(以下WH):新著の第1章は望ましい変化に向けて新しい習慣を築く方法となっていますが、これを冒頭に持ってきた理由を教えてください。

ソフィー・モート博士(以下SM):パンデミック中に私は、元緩和ケアナースのブロニー・ウェアが書いた『Top Five Regrets of the Dying/死ぬ瞬間の5つの後悔』という素晴らしい本を読みました。人が最期にする後悔でもっとも多いのは「期待された人生ではなく、自分が選んだ人生を生きればよかった」というものでした。これを読んだときは焦りましたね。私自身、そして私の友人やクライアントが死の床でこんな風に思わないようにするには、どうすればいいか分からなくて。

変化を起こすには勇気が必要ですが、その勇気は最初のステップに過ぎません。次のステップは自分の習慣を管理すること。私たちの普段の行動の4割は習慣的なものですから、注意しないと、人生の大部分を夢遊病者のように無自覚で生きることになります。

もちろん、言うは易く行うは難し。スマホ依存を断とうとしても、瞑想を習慣にしようとしても、大抵は3日坊主で終わります。

これは普通のことですが、習慣の仕組みとモチベーションが下がったときにするべきことを理解して、既存のルーティンと生物学を利用すれば。自分の人生を本当に変えられることもあります。

WH:習慣の仕組みとは?

SM:習慣的な行動は、その行動に紐づく合図を見たり感じたりすることから始まります。例えば、テーブルの上のスマホを見ると、猛烈になにかがしたくなる、あるいは欲しくなる。それがスマホをスクロールするという行動につながり、しばらくすると、その行動を呼び起こした身体的な感覚が消えるかなんらかの目的が達成されるかして、その行動が終わります。

行動が習慣になるのは、その行動に紐づく合図ひとつでアクティブになる脳の神経回路が作られたとき。つまり習慣とは、私たちが望んでも望まなくても、なにか(退屈、疲れ、ストレスなど)を見たり感じたりしたというだけで、自動的に取ってしまう行動なのです。

衝動でスマホやワインに手を伸ばしたと思うかもしれませんが、実際は、なにかを見たり感じたりしたことで脳が自動操縦モードに入り、そのなにかを見たり感じたりしたときにするはずのことをしたいという欲求が湧き、それを実行に移しています。

WH:それが必ずしも悪いこととは限りませんよね?

SM:習慣の利点はエネルギーの節約になることです。車の運転も勉強している間は大変ですが、一度習慣になってしまえば、複雑なタスクをこなしながらも他のことをするゆとりができます。

私たちの脳は子どもの頃から習慣を築いてきました。よって、意外かもしれませんが、私たちがいまできることのほとんどは習慣的なものなのです。

習慣は、私たちが目的(車を運転してA地点からB地点へ行く、必要な食べものを買う、友達や恋人をつくる)を達成するうえで役立ちます。問題は、その行動を取る意味がなくなっても習慣が残ってしまうことですね。

もう美味しいと思わないのに特定の食べもの/タバコ/お酒がやめられない、というのも習慣の仕組みのせい。私たちの意識やコントロールが及ばないところから、その行動に紐づく合図が送られてくるからです。

WH:習慣を早く築くためには?

SM:習慣にしたい行動で100点を取ることよりも、まずは行動そのものを起こすことに重点を置いたほうが習慣は早く築かれます。よって、ジム通いを習慣にしたいなら、ジムに着いてからなにをするかより、まずは家を出てジムへ行くことを重視する必要があるのです。

だから、習慣の構築は計画的に。「今日はジムへ行く」ことを思い出せてくれるリマインダで自分の周りをいっぱいにして、その行動に責任を持つための仕掛けをする(例:友達とジムで会う)ことが大切です。

ジムに着いて1km走るか、マシンを使うかは重要じゃありません。まずは「ジムへ行く」という習慣を築いてから、ワークアウトの中身を決めればいいのです。

WH:計画性をもってしても、新たな習慣を築くことが難しく感じるのはなぜですか?

SM:いつもと同じことをするのはラクですし、慰めになるからでしょう。人間の脳は猟採集時代の祖先を危険から守れるように発達してきましたが、それが現代人の役に立つとは限りません。

一例として、現状維持バイアスは誰もが持つ認知バイアスで、脳はすべてを同じ状態に保ちたがることを意味します。変化が心地悪いのは、この現状維持バイアスのせいですね。私たちの祖先は、現状維持バイアスのおかげで危険な場所を回避できていましたが、多くの現代人が新しいことを始める前に諦めてしまうのもまた、この現状維持バイアスのせいなのです。

同様に、コンコルド効果は、時間と労力を注ぎ込んだこと(タスク、人間関係、仕事など)を続けてしまう心理状態を意味する言葉。コンコルド効果のもとでは、現状が自分を不幸にしていると分かっていても、変化に抵抗してしまいます。

1時間半も費やしたからという理由で嫌いな映画を最後まで観たり、2年も費やしたからという理由で惨めな交際や仕事を続けたりするのはコンコルド効果のいい例です。

習慣とは関係なさそうな例ですが、実は関係しています。認知バイアスは「あなたが人生を変えたいと“思っている”のは知っている。でも、本当に変えたいの? 変化は心地が悪いでしょう? 変えれば絶対人生がよくなるという保証もない。やっぱり、このままでいるべきなのかも」というようなことを言いながら、私たちの思考に忍び込んできますから。

WH:『(Un)stuck』のなかでソフ博士は、私たちが自ら修羅場を作り出し、馴染みのある役割を演じたがるという話をされていますが、これが人生の停滞を招く理由と、その状態から抜け出す方法を教えてください。

SM:自分で修羅場を作ってしまうことは誰にでもあります。よく考える前に反応したり、自己防衛で人に責任転嫁したりして、ただでさえピリピリした状況を自分でエスカレートさせてしまうのです。

1960年代に精神科医のスティーブン・カープマン博士は“ドラマ・トライアングル”という概念を生み出しました。ドラマ・トライアングルは、被害者(なにも私のせいじゃない)、迫害者(全部お前のせいだ)、救済者(あなたには私が必要)という3者で成り立つ三角関係です。

意見の衝突や不一致には、ほぼ必ず、この三角関係が付いて回ります。例えば、とあるカップルがケンカしている場合。そのカップルの2人は迫害者と被害者の役割を交互に演じており、その2人を慰める心やさしい友人は救済者の役割を演じています。そして、このカップルが第三者の友人に頼りきりになり、自分たちだけで機能できなくなると、大きな問題に発展します。

このドラマ・トライアングルおよび人間関係の心理ゲームは、参加者が少なくとも2人いれば成り立ちますが、本格化すると役割がコロコロと入れ替わり、全員が被害者のように感じるという特徴を持っています。

例えば、あなたが片づけを怠ってパートナーに文句を言われたとします。突然のことで「そうだよね、ごめん」とか「そうだけど、次からはもう少しやんわり言って」と言えなかったあなたは、パートナーを迫害者、自分を被害者として捉えます。そのうえで「本当に意地悪だね」などと言い返し、この状況とはなんの関係もないパートナーの嫌なところを並べ立てると、今度はあなたが迫害者になり、登場人物全員が被害者のように感じるというわけです。

カープマン博士によると、私たちはすべての役割を演じながらも、無意識のうちに特定の役割に引き寄せられています。一例として、自分から手を差し伸べないと愛情と関心を向けてもらえない幼少期を過ごした人は、救済者の役割に引き寄せらるかもしれません。

3つのなかでは救済者が一番よさそうに見えますが、この役割には、自分が利用されているように感じたり、エネルギーとアドバイスを(あげる必要がないことに気付かず)あげすぎて疲れたり、といった落とし穴があります。

自分の演じる役割が自尊心に直結することもあります。愛されないのが怖いから救済者の役割を演じる人は、人助けをすることで自分の存在意義を確かめているのかもしれません。その一方で、迫害者の役割を演じる人は、人を非難できるほど高い位につくことで安心したり、自分の価値を実感したりするのかもしれません。

ただし、このような心理ゲームをなにも考えずに続けていると、自分が慣れている役割しか演じられなくなってしまうので気を付けましょう。

WH:「思いやりと責任感を持つことが変化を起こす秘訣」とも書かれていますが、この点を具体的に教えてください。

SM:自分の行いが完璧じゃないからといって自分を責める人がいますが、自己批判をしても自分がうろたえたり悲しくなったりするだけで、モチベーションは上がりません。思いやりを持つというのは「ミスをした/上手くいかなかったけれど大丈夫。そんなときもある。間違えることは誰にでもあるから大丈夫」という声を自分にかけること。そして、責任を持つというのは「じゃあ、どうすれば上手くいくか」を自発的に考えることです。

いつ何時も自分を大目に見ることが思いやりと言う人がいますが、そのような考え方も自分のためにはなりません。自分に対して思いやりと責任を持つということは、モチベーションを自ら高めて行動を起こすということ。奇跡が起こるのは、まさにそのときです。

新しい習慣を築くための4つのステップ

Women's Health

ソフ博士によると、あなたが望む人生につながる変化は以下のステップを踏むことで起こせるそう。

ステップ1:“なぜ”を明確にする

あなたが新しい習慣を築くのはなんのため? メンタルヘルスのため? それとも体を柔らかくするため?

明確な理由があると、意志が試されるようなシーンでもモチベーションを保ちやすくなり、内的報酬(タスクを完了した際の達成感や喜び)が得られる可能性も高くなる。内的報酬は外的報酬(お金など)よりも習慣の構築につながりやすい。

明確な理由があれば、自分で自分をダメにすることも減る。内心「そんな習慣どうでもいい」と思っていると、脳は必ず、その気持ちを使って邪魔をしてくる。その習慣を築きたい理由を書いて、目に入る場所に置いておこう(例:付箋に書いてパソコンや冷蔵庫に貼る)。

その行動を取る前に、その理由を頭のなかで繰り返し言うのも大事。「私がXをするのは、それが私をYな気分にさせて、ゆくゆくはZに導いてくれるから」

ステップ2:計画を立てる

「もっと瞑想がしたい」とか「毎日ストレッチがしたい」と言うだけでは不十分。大事なのは、具体的で無理のない目標を立てること。築きたい習慣を毎日無理なくリピートできる小さな行動に分解しよう。

瞑想も「毎朝10分日記を書く」、ストレッチも「身支度をする前に毎日5分ストレッチをする」なら十分に具体的。

新しい習慣に紐づくものを身の回りに置いておくと、行動を起こしやすい。前述の例で言えば、紙とペンかスポーツウェアを枕元に置き、朝一で目に入るようにするといい。

また、新しい習慣は、決まった時間にそれだけをしようとするより、既存の習慣とくっつけたほうがいい。そうすれば、既存の行動が新しい行動のトリガーになる。先ほどの例で言えば、起きたらすぐに日記を開く。もしくは、ベッドから出たらスポーツウェアを着て、歯を磨く前にストレッチをする。

ステップ3:ご褒美を用意する

新しい習慣は、外的報酬と内的報酬を活用すると築きやすい。途切れ途切れの報酬はさらに有効。メッセージを速攻で返してこない人が好まれるのも、SNSのいいねやプッシュ通知がランダムに来るのもこれが理由。

自分に与える報酬をあらかじめ決めて用意しておき、取るべき行動を取ったらすぐにコイントス(行動から報酬までの間隔が短ければ短いほど、行動と報酬が早く紐づくため)。表が出たら報酬がもらえて、裏が出たら報酬は持ち越しとする。

ステップ4:繰り返す

あとは、ひたすら繰り返すのみ!

新しい習慣が身に付くまでには時間がかかるし、途中で何度か挫折するのも至って普通。1日サボってしまったくらいであまり自分に辛く当たらず、全体的な進み具合に目を向けよう。 ※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。Text: Claudia CanavanTr anslation: Ai Igamoto

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