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会社員orフリーランス、どっちがお得? 税理士が教える「働き方のメリット&デメリット」

  • 2023.7.31

会社員として働きながら副業をすることが多くなりました。将来、副業の収入が増えたり、フリーランスとして独立したりすることも考えられます。けれど、税負担や会計処理が増えそうで不安を感じませんか? 今回は税理士が会社員と副業やフリーランスにまつわる税金の素朴な疑問に答えます!

税理士が会社員と副業・フリーランスにまつわる税金の違いを解説!

最近では、会社員として働きながらインフルエンサーやブロガーなどとして副収入を得る人が増えています。

「副業で稼ぎすぎると税金が増えると聞いた。それなら会社員の収入だけのほうが税負担は少なくて済む?」

「インフルエンサーとしての収入が大きくなってきたから独立しようかな? でも会計処理とか大変そう…」

このように会社員として働きながら、副業をしたり、フリーランスとして独立することを考えていたりするものの、将来、税負担や会計処理はどう変化するのか気になっている人もいるかもしれません。

そこで今回は税理士の久保佑紀さんに、会社員が副業をしたり、フリーランスとして独立したりした場合の税負担や会計処理の変化についてお話をうかがいました。

会社員という働き方は税負担としては大きい? 小さい?

ーー会社員として働くことは、フリーランスと比べて税負担は大きいのですか? 小さいのですか?

久保さん 所得税や住民税などの税金は、売上から経費を引いた利益に基づいて課されるという考え方になります。それは会社員でもフリーランスでも変わりません。フリーランスにとっての売上は会社員にとっての給与収入にあたり、フリーランスにとっての経費は会社員にとっての給与所得控除です。

給与所得控除とは、会社員の経費に相当するものです。税金計算のもととなる利益を計算する過程で、給与収入の額に応じた一定額を差し引くことができる制度です。会社員であってもフリーランスであっても、利益に応じて所得税の税率は決まり、住民税は一律です。よって同じ利益であれば税金も同じということになり、会社員とフリーランスはどちらが税金に関して得や損ということはありません。

強いていえば、先ほどお伝えした給与所得控除は会社員のみが使える制度です。例えば、年収500万円であれば144万円を給与収入から概算経費として差し引くことができます。会社員として使う経費には、例えばスーツ代がありますが、1年を通してみればそれほど多い額にはなりません。交通費は会社がもってくれますし、ほとんど経費はかからないと考えて良いでしょう。その経費よりも大きい額が給与所得控除として差し引かれるのはメリットだと思います。

会社員が副業して収入を得たら会計処理は必要?

ーー会社員が副業として収入を得るなら、どのような会計処理をする必要がありますか?

久保さん 会社員として副業し、所得を得た場合は20万円を超えたときに確定申告をする必要があります。確定申告とは、1年ごとに納める税金の額を計算して国(税務署)に報告する一連の手続きをいいます。

ここで2つ注意点があります。1つめは20万円の判定は所得を基準にしていることです。所得とは、売上から経費を差し引いた残りです。売上が20万円ではありません。2つめは、所得が20万円以下で確定申告が不要なのはあくまで所得税の話ということです。住民税に申告不要の基準はありませんので、20万円以下であっても申告は必要です。

住民税の申告は、所得税の確定申告書を提出された方は、同時に住民税の申告をしたものとみなされますので、改めて申告をする必要はありません。所得税の確定申告書を提出しない場合には、住民税申告書のみを提出する必要があります。提出先はその年の1月1日にお住まいの市町村となります。申告書の入手方法は、市町村のHPからダウンロードできる場合もありますが、窓口で入手が必要な場合もあります。お住まいの市町村に確認してみると良いでしょう。

ーー確定申告のために帳簿付けや仕訳などは必要なのでしょうか?

久保さん 確定申告には所得区分が10種類定められており、会社員を本業として副業を行った場合の収入は基本的に「雑所得」の区分になります。本業と副業の規模感などによりますが、少額の収入なら雑所得になります。

雑所得の場合、事業所得と違って取引の帳簿付けをする必要がないため、仕訳は不要です。ただし副業の収入が上がったり、本業になってきたりした場合には事業所得に変わるので、取引の帳簿付けをして申告しなければなりません。

むずかしく感じるかもしれませんが、最近ではフリーランス向けに手軽にスマートフォンアプリで会計処理ができる方法もあるので、それほど負担に感じる必要はないですよ。

ママ税理士直伝! 会計処理テクニック

ーー久保さんは先日、スマホ会計アプリ「FinFin」を手掛ける会計バンクが子育て中のフリーランス向けに開催したイベントへ登壇。子育てママとして限られたスキマ時間を有効活用した経理処理や確定申告、インボイス対策などのテクニックを解説しました。

例えば「記録に時間をかけない」ことが一つのポイントで、そもそも支払・入金手段をネットバンクやクレジットカード、電子マネーなどに限定し、会計ソフトに連携して会計処理を自動化してしまう方法がおすすめだと話しました。

副業の収入が増えたら独立したほうが良い?

ーー会社員が副業をして収入が上がったら、会社を辞めて独立したほうが良いなどはありますか?

久保さん 先ほどもお伝えしたように、会社員とフリーランス、どちらも税負担の観点から損や得はありません。

ただしフリーランスになれば、健康保険や年金などの社会保険料は個人で払わなければならなくなります。会社員は健康保険料と厚生年金保険料に関しては、会社と50%ずつ負担する折半の制度となっていますが、フリーランスはそれがなくなる点は押さえておきましょう。

税負担という観点からは、会社員がそれほど悪いわけではないと思います。ですから節税をねらって独立するというよりも、独立されたいなら、ご自身の事業の状況、そして何より自分の気持ちに応じて判断するのが良いと思います。

ーー会社員として働きながら、今後、副業の額が増えたり、フリーランスとして独立したいと考え始めたりしたときには、参考になりそうですね。

Information

<教えてくれた人>

久保 佑紀(くぼ・ゆき)さん

久保佑紀税理士事務所代表。2人の娘を育てるママ税理士。会計バンクが主催する会計セミナーなどで活躍中。

<筆者情報>

椎原茜
ライター。ライフスタイル、エコ、美容・健康、マネーなどのジャンルで執筆中。専門家取材の記事を通して、女性の読者の方々に正しい知識を知ってもらい、生活に役立ててもらうことを目指している。

(C)AmnajKhetsamtip/Getty Images

文・椎原茜

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