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「悠仁さまと結婚しようとする女性は現れるのか」皇室を存続の危機に陥らせている皇室典範の欠陥

  • 2023.7.28
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皇室典範では、皇位の継承資格を男系の男子に限定している。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは「皇室典範は構造的な欠陥を抱えている。ここで定められている皇位継承のルールは、正妻以外の女性が生んだお子様などにも皇位継承を認める選択肢があった、古い時代の前提で成り立っている。本来は、そうした選択肢が消えた時点で、直ちに見直すべきだった」という――。

英国へ出発する秋篠宮ご夫妻を見送られる次女佳子さまと長男悠仁さま=2023年5月4日、東京都港区[代表撮影]
英国へ出発する秋篠宮ご夫妻を見送られる次女佳子さまと長男悠仁さま=2023年5月4日、東京都港区[代表撮影]
皇室典範が抱える欠陥

はたしてどれだけの人が気づいているだろうか。現在の皇室典範が構造的な欠陥を抱えているということを。

皇室はとっくに側室制度を廃止して、「一夫一婦制」に移っている。にもかかわらず、皇位の継承資格を「男系男子」だけに限定するという、明治の皇室典範が初めて採用した、歴史上かつてない窮屈なルールをそのまま維持している。

正妻にあたる方から代々、必ずお一人以上の男子が生まれるなんてことはありえない以上、正妻以外の女性(側室)が生んだお子様などにも皇位継承を認める選択肢がもう一方にあった古い時代でなければ、こんな窮屈なルールは維持できるはずがない。だからその選択肢が消えた時点で、直ちに見直すべきだった。

20年近く前の「常識的な提言」

このような旧時代的なルールにいつまでも固執していれば、やがて天皇として即位される皇族が誰もいなくなってしまう、という危機感は以前からあった。

今から20年近く前の平成17年(2005年)に、当時設けられていた「皇室典範に関する有識者会議」が報告書をまとめた。その結論は、「皇位の安定的な継承を維持するためには、女性天皇・女系天皇への途みちを開くことが不可欠」というもの。一夫一婦制なのに「男系男子」限定のままという、ミスマッチなルールは必ず皇室の危機を招く。だからそれを是正しよう、というごく常識的な提言だった。

悠仁さまの誕生で生まれた「錯覚」

ところが、報告書が提出された直後、秋篠宮家にご長男、悠仁親王殿下がお生まれになった。この41年ぶりの男子のご誕生によって、皇室の危機がすっかり消え去ったかのような錯覚が生じた。

そのせいで、今から振り返るとまったく奇妙な展開なのだが、皇室典範の改正をめざす気運が一気にしぼんでしまった。

先の提言は「今後、皇室に男子がご誕生になることも含め」周到に検討した結論だったのに、政府・国会の討議では「お蔵入り」になってしまう。

皇位継承の危機は、先に触れた皇室典範の構造的欠陥、つまりミスマッチな旧時代的ルールそのものが原因だ。なので、男子お一人のご誕生ぐらいで、雲散霧消するはすがなかった。

しかしその後は、野田佳彦内閣の時に「女性宮家」の可能性がわずかに探られた程度で、しばらく何の進展もなかった。

のんきな前提をもとに公然と先延ばし

皇位継承の問題が、再び政治の場で取り上げられるようになるのは、上皇陛下がビデオメッセージでご譲位への希望をにじませられて以降だ。「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が平成29年(2017年)6月に成立した際、国会の全会一致による附帯決議の中に「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」について、政府が“速やかに”検討することを求める文言が、はっきりと盛り込まれた。この間、10年以上の空白の歳月が流れた。

政府が重い腰を上げて、この附帯決議に応えたのは令和4年(2022年)1月。すでに提出されていた「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議」の報告書を、丁寧に吟味・検討することもなく、そのまま国会に回した。

しかし驚いたことに、この報告書では附帯決議で求められていた「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」について、真正面からの検討が一切なされていなかった。まったくの「白紙回答」だった。

先の附帯決議では、「先延ばしすることはできない重要な課題」とわざわざ釘を刺していた。にもかかわらず、公然と“先延ばし”されていた。

「悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承については、将来において悠仁親王殿下の御年齢や御結婚等をめぐる状況を踏まえた上で議論を深めていくべきではないか」と。

のんきなことに、悠仁殿下がご無事に成長され、めでたくご結婚なさることを、自明の前提にしている。

それが望ましいことは言うまでもない。しかし畏おそれ多いが、これまで悠仁殿下が乗られたワゴン車が高速道路で前の車両に追突した事故(平成28年[2016年]11月)や、以前に通われていたお茶の水女子大学付属中学校に刃物を持った人物が侵入した事件(同31年[2019年]4月)などが、現に起きている。

近頃は、安倍晋三元首相銃撃事件(令和4年[2022年]7月)や岸田文雄首相襲撃事件(令和5年[2023年]4月)などのテロ事件も、相次いでいる。

次の世代の皇位継承資格者がたったお一人しかおられないという現実に対して、危機感が薄すぎるのではないか。

政治の無責任が悠仁さまのご結婚を難しくする

さらに、後に触れるように報告書のプランでは、敬宮としのみや(愛子内親王)殿下をはじめ未婚の女性皇族がご結婚されても、そのお子様は皇族の身分も皇位継承資格も認められない。

そのようなルールなら、やがて皇族は悠仁殿下のお子様しかいなくなってしまう。言い換えると、悠仁殿下のご結婚相手が必ずお一人以上の男子を生まなければ、皇室そのものを断絶させる結果になる。これはご結婚相手の女性にとって、想像を絶する重圧だろう。

そのような未来があらかじめ見えている場合、果たして悠仁殿下と結婚しようとする国民女性が現れるか、どうか。

報告書は、とりあえず悠仁殿下のご結婚までは様子見を決め込む、無責任な姿勢だ。しかし、そのような責任回避、問題解決の先延ばしこそが、悠仁殿下のご結婚そのものを至難にするのではないか。

国会議事堂
※写真はイメージです
政府が国会に検討を委ている3つのプラン

では現在、国会の検討に委ねられている方策は、具体的にどのような内容なのか。そっけなく言えば、目先だけの皇族数を確保して、現状を糊塗ことしようとするプランというしかない。

① 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持する。
② 皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする。
③ 皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする。

これらのうち、③は論外だろう。昨日まで国民だった人物が、皇室との婚姻関係も養子縁組もなく、法的な措置だけで明日から皇族になるという乱暴なプランだ。国民にはとても受け入れられないのではないか。

たとえば、皇居で行われる新年一般参賀の際に、宮殿のベランダに並ぶ他の皇室の方々とは少し離れて、見慣れない人物が端っこにポツンと一人だけ立って、参賀に来た国民に向かって手を振っている、という光景はにわかに想像しがたいだろう。

報告書自体も「国民の理解と支持の観点からは、②の方策に比べ、より困難な面があるのではないか」と述べている。

選挙への出馬も可能になってしまう

しかし、①②も③に劣らず、制度として整合性もリアリティーも欠けている。

①の場合、内親王・女王の配偶者とお子様について、「皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続ける」という。何とも呆れたプランというほかない。

社会通念上、内親王・女王と一体と見られがちな配偶者やお子様に対して、憲法(第3章)が国民に保障する自由や権利が全面的に認められるならば、たとえば政治活動の自由はどうか。当然、その自由は最大限尊重されるはずだ。

特定の政党を全力で応援する。その政党から国政選挙に打って出る。政党の幹部や国会議員になる。すべて法的に可能だ。その政党が与党なら、閣僚や首相になる可能性だって排除できない。

相手が「一般国民」ならば、皇室というブランドを利用しようとして政党の側から積極的にアプローチするケースも、普通に予想できる。

それで果たして、憲法が国政権能を否定し(第4条)、「国民統合の象徴」にふさわしく振る舞われること(第1条)を要請している天皇(皇室)のお立場と齟齬そごしないのか、どうか。常識的に考えて、両立は不可能ではないか。

宗教活動参加の可能性も

他に宗教活動や経済活動の自由はどうか。この場合も、宗教団体や企業側からのアプローチも、もちろん想定しておく必要がある。

過去には、旧宮家の当主だった東久邇ひがしくに稔彦なるひこ氏が「ひがしくに教」という新宗教を開こうとして、頓挫した経緯もあった(昭和25年[1950年])。

一言でいうと、憲法第1章(天皇)が優先的に適用される皇族と同第3章(国民の権利及び義務)が全面的に適用される国民が“一つの世帯”を営むという、歴史上まったく前例を見ないだけでなく、憲法の仕組みそのものを根底から揺るがしかねないプランになっている。

「養子縁組」プランは憲法違反の可能性

②については、憲法が禁止する「門地(家柄・血筋)による差別」に当たるという根本的な疑念が示されている(東京大学教授の宍戸常寿氏、元内閣法制局長官の阪田雅裕氏など)。

養子縁組の対象は、憲法自体が「国民平等」原則の例外と位置づけている、つまり憲法第1章が優先的に適用される天皇・皇族ではなく(!)、同第3章が全面的に適用される一般国民だ。にもかかわらず、“旧宮家”系という家柄・血筋つまり「門地」を根拠に、皇室典範で禁止されている養子縁組(第9条)を、“例外的・特権的”に認めよう、というプランだ。どう考えてもアウトだろう。

憲法が要請する「皇位の世襲」(第2条)は、天皇の血統(皇統)につながる方だけが皇位を継承することを意味していて、男系・女系、男性・女性のすべてを包含した概念だ。「男系男子」という狭い限定は、憲法の附属法(下位法)である皇室典範の規定にすぎない、というのが政府見解であり、憲法学界の通説だ(内閣法制局執務資料『憲法関係答弁例集(2)』など)。

だから、皇室典範の「男系男子」限定という旧時代的でミスマッチなルールを維持したまま、憲法の「世襲」規定を根拠として持ち出して特定の「門地」の国民だけを“例外扱い”しようとすることは筋違いであり、憲法違反なので認められない。

「皇室典範に関する有識者会議」提言に立ち返るべき

以上によって、政府が現在、国会に検討を委ねている①②③の方策は、いずれも欠陥プランであることが明らかになっただろう。

この問題について、今のところ国会で目立つ動きはない。しかし、国会が附帯決議で求めた「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」という原点に立ち返れば、上記の3プランが事実上の白紙回答にすぎなかった以上、それは国会での討議の基礎にはなりえないはずだ。

むしろ不当に放置されている、先の「皇室典範に関する有識者会議」の提言にこそ、再び目を向けるべきではないか。

皇室の将来を不安定にしている原因は、「男系男子」限定という皇室典範の旧時代的なミスマッチのルールだ。それをきちんと見直せば、どうなるか。

天皇・皇后両陛下には、誰よりも両陛下のお気持ちをまっすぐに受け継いでおられるお子様、敬宮殿下がおられる。にもかかわらず、単に「女性だから」というだけの理由で、皇位の継承資格を認められず、「皇太子」にもなれない。そのような、国民の気持ちからもかけ離れた不自然な状態が、たちまち解消される。皇室の未来も大きく開ける。

政府・国会は責任感を持って問題解決に立ち向かってほしい。政治が未来に向けて果たさなければならない役割を自ら担うか、どうか。国民はそれを注視すべきだろう。

高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者
1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録」

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