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タワマンに住んで後悔してる:憧れの生活が、まさか。揺らぐ家族3組の物語

  • 2023.7.28

本当に大切なものがなんなのか、私にはわからなかった――。

低層階と高層階、専業主婦とバリキャリ、子どもの学力、夫の職業。さまざまな軸で見えない競争意識に駆り立てられていく大人たち。憧れのタワマン生活を手に入れた、その先にあるものとは?

本書『タワマンに住んで後悔してる』(KADOKAWA)は、同じタワマンの低・中・高層階に住む家族3組の虚栄と内情を描いたセミフィクションだ。6階の渕上(ふちがみ)家。26階の瀧本(たきもと)家。42階の堀(ほり)家。彼らは一見華やかで幸せそうだが、他人にはうかがい知ることのできない悩みや葛藤を抱えていた。

本書は、「タワマン文学」の先駆者・窓際三等兵さんの完全描き下ろし原作を『親に整形させられた私が母になる エリカの場合』などの話題作があるグラハム子さんが漫画化したもの。ままならない人生を描く「シリーズ立ち行かないわたしたち」の第4弾だ。

劣等感が止まらない

九州から東京に引っ越し、タワマン低層階の部屋を購入した渕上家。専業主婦の妻・舞、会社員の夫・大輔、小学5年生の息子・悠真(ゆうま)の3人家族だ。

悠真が地域の野球チームに入ると、親同士のつながりで、舞はバリキャリの瀧本香織(中層階在住)やボスママの堀恵(高層階在住)らと知り合う。なかなか東京に馴染めない舞はママ友と出会えて少しホッとしていたが、悠真がチームのエースになったことで徐々に不協和音が生まれる。

恵は息子がエースの座を奪われたことに苛立ち、舞にいちいちマウントをとってくるようになった。商社勤務の夫の駐在でニューヨークに暮らしていた恵のエリート自慢に、舞は自分の身の程を思い知らされて落ち込む。

香織は舞の悩みを聞いて励ましてくれるが、そんな彼女の存在も、舞のコンプレックスを刺激した。香織は美人でオシャレで、会社員としてバリバリ働いて、育児に協力的でイケメンの夫と、優秀な息子がいる。

それに比べて大輔はただの冴えないオジサンで、育児は舞に任せきり。悠真は野球のことしか頭にない。「......羨ましいな......」。舞は経験したことがないほどの強烈な劣等感を抱く。

「東京にはいくらでも『上』がいるんだな......」

家族が壊れていく

渕上家が住むタワマンでは、小学5年生の親はみんな受験の話をしていた。香織の息子は小学2年生から塾に通っているという。出遅れていることに焦りを感じた舞は、それまで野球漬けだった悠真を塾に入れ、本格的な受験対策をはじめる。

しかし、大輔も悠真も乗り気ではなく、舞との間にかなりの温度差が。「俺の頃は公立からでも早稲田入れたけどなぁ」とぼやく大輔は、必死さを増していく舞から距離を置くようになる。

同じ頃、舞が憧れる香織のところも夫婦関係が壊れつつあった。広告営業マンの夫は深夜に帰宅するのが当たり前で、家事の負担はすべて香織にのしかかっていた。自分で立ち上げた企画のための海外出張もできず、周囲のママ友とは悩みを共有することもできない。

そんなある日、息子が塾でカンニングしていたことが発覚。さらに、帰りが遅い夫に嫌気がさして探偵事務所に浮気調査を依頼したところ、結果は黒だった。

「......私 なんでこんなに頑張ってるんだっけ......」

家族への信頼を失い、途方に暮れる香織。ちょうどその頃、帰りの電車で大輔と遭遇した。そこからふたりは距離を縮めていって――。

タワマンに蔓延し、人々を駆り立てる見えない競争意識。虚栄心、劣等感、孤独感が、彼女たちを追いつめていく。なぜタワマンに住んで後悔しているのか。本当に大切なものは何なのか。この家族3組が向かうのは、没落か、崩壊か、それとも――?

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