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転職で年収を上げたければこれだけはやってはいけない…敏腕エンジニアが「800万円→500万円」大幅ダウンのワケ

  • 2023.7.27

転職で年収を大幅に上げたい場合、どうすればよいのでしょうか。10回転職したキャリアコンサルタントの森田昇さんは「私たちサラリーマンの年収は、基本的に『業界×職種』で大枠が決まっていますので、年収をアップさせるには『年収の高い業界』や『年収の高い職種』へ転職する必要があります。ただ、何事もやりすぎは禁物です」と言います――。

※本稿は、森田昇『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

年収300万円から年収1000万円までの道筋

転職活動における事前準備のうち、①転職の目的、②自己分析、③会社選びの判断軸が固まったら、いよいよ最後の④応募先の選定です。すぐに応募できるよう準備するまでが事前準備。どの業界の、どの職種の、どのポジションの会社に応募すれば年収アップするのかを一緒に考えていきます。そのための考え方でもある「転職の技法」を身につければ、年収300万円から年収1000万円までの道筋も見えてきます。

年収1000万円。憧れの響きです。ですがサラリーマンでは到達困難な数字です。年収1000万円以上の人は、日本の給料所得者のうちわずか4.6%となっています(国税庁「令和2年分 民間給料実態統計調査」より)。スーパーサラリーマンの証である年収1000万円には、せめて年収700万円前後ある状態でないと、1回の転職では到達できません。年収300万円から一気にジャンプアップは残念ながら夢物語です。

ビジネスコンセプト、給与アップ
※写真はイメージです
年収をアップさせる「軸ずらし転職」

否定ばかりでは面白くないでしょうから、ここで年収1000万円までの道のりをお伝えします。いわゆる「軸ずらし転職」を繰り返すことです。私たちサラリーマンの年収は、基本的に「業界×職種」で大枠が決まっていますので、年収アップさせるにはどちらか、もしくは両方を「年収の高い業界」や「年収の高い職種」へ転職する必要があります。それが「軸ずらし転職」です。

パターンとしては、3つあります。

1.業界を変える、職種は変えない
2.業界は変えない、職種を変える
3.業界も職種も変える

1.であれば、同じような仕事で業界を変えるだけなので、経験者扱いでの転職が可能です。年収アップには業界が重要な意味を持つので、職種という軸は固定して業界だけ軸ずらしするのが年収アップの近道です。これは意外と簡単で効果が高い方法です。ただ、まったくの未経験業界だと内定を得る難易度が上がります。

例)IT業界でアプリケーションエンジニアをしていたのですが、転職後は環境・エネルギー業界の社内エンジニアをやっています。

2.であれば、業界内で職種を変えているだけなので、年収アップとともに業務内容が変化します。やりたくてできる仕事への転職を目的とするなら効果的です。ポイントは、現職の知識や経験を活かせて、かつ今の仕事でやってることと2~3割は重なる職種を選ぶことです。ただ、あまりに職種を変えすぎると未経験者扱いになり年収アップしません。

例)保険業界で営業事務をしていたのですが、転職後は同じ保険業界で営業をしています。

3.であれば、軸をずらす角度が大きいため大幅な年収アップが可能です。年収100万円アップどころか、300万円超のアップも見込めます。私もIT業界でのITコンサルタント⇒建設資材を取り扱う商社の企画営業へと、業界と職種のどちらも軸ずらしすることで年収300万円アップに成功した経験があります(6社目⇒7社目)。ただ、どちらも変えすぎると入社後の適応に苦労します。

例)「IT企業でアプリ開発エンジニアをしていたのですが、転職後は人材業界で新プロジェクトのマネジャーをしています」

この「軸ずらし転職」を2、3回繰り返せば、年収300万円スタートでも10年かからずに年収1000万円へ到達できます。「軸ずらし転職」、素敵ですよね?

軸をずらせていないと何も変わらない

転職する多くの人がやりがちな「同業界同職種」への転職では、ほとんど変化がありません。今までと同じ仕事で、ただ周りの人間関係と職場を変えただけの転職で終わると、年収もたいして変わりません。環境が大きく変わらないので当然のことですよね。

例)「東京のタクシー会社でドライバーをしていたのですが、今は大阪のタクシー会社でドライバーをしています」

業界も変えず、職種も変えない。どちらも経験しているので転職しやすいですし、その後の適応と活躍もたやすいでしょう。ただ、メリットはそれだけです。今後、再び転職を考えても今までの業界や職種に縛られ続けます。

もし経済状況の変化で業界が衰退し、技術革新で職種自体がなくなってしまったとしたら。例にあげたタクシー会社とドライバー、どちらも当てはまりそうで恐ろしいですよね。自動運転の進展はドライバーという職種を駆逐し、タクシー業界という概念すら消し去りかねません。たとえば昔、馬車が自動車に置き換わるまでの期間は20年足らずでした。

業界と職種、どちらでもいいので少しでも軸をずらしておくか、せめて役職だけでも上げないと、今後の変化に対応できなくなっていきます。

ビジネスマンと変化のない給与グラフを考えて
※写真はイメージです
誰もやらないからこそ年収はアップする

そもそも未経験で他業界や他職種を目指す人自体、いまだ少数です。転職する多くの人が「同業界同職種」に限ってしまい、選択の幅を狭め、若干の年収アップと待遇の改善、そして変わらない仕事を選びます。これでは年収は100万円もアップしませんし、成長もしません。誰もやらないからこそ、「軸ずらし転職」で年収がアップするのです。

軸をずらし過ぎた私の転職

ただ、闇雲に軸をずらせばいいわけではありません。軸ずらしの角度が大きい、3.業界も職種も変える、といった転職だと様々な壁に直面します。まったくの畑違いの業界だと内定獲得の難易度が高まりますし、職場環境も激変します。私の例だと、

例)「IT業界でITコンサルタントをシステムエンジニアとして行っていたのですが、今は建設資材を取り扱う商社の企画営業部門で支店長をしています」

IT業界から商社への軸ずらしと、ITコンサルタントから企画営業部門への軸ずらし。この組み合わせだとまったく関連性のない軸ずらし×2となっているので、育成に時間がかかる人材とみなされ、書類選考の時点で落とされる可能性が非常に高くなります。IT業界にいたときに、少なくともたとえば商社と取引があった等の接点は欲しいですが、そもそもシステムエンジニアから支店長が遠すぎます。職種の共通点もありません。一介の技術職から資材管理や売上管理のみならず、社員の管理監督といった支店全体を統括する支店長では、あまりに担う役割が違うからです。

これでは、運良く入社できても新しい職場環境に適応するまで相応の時間とストレスがかかります。会社から求められる水準も高くなりますし、結果を出せないと容赦なく年収ダウンする、厳しい世界への転職となってしまいます。

上向きと下向きのチャートを示すビジネスマン
※写真はイメージです
軸をずらし過ぎると年収ダウンになる可能性が…

この壁を乗り越えないと、短期間で元の業界や職種に戻ってしまう、悲しい転職を再度してしまうことにもなりかねません。実際、私は4年持たずにリストラされた挙句、その後の転職もうまくいかずにIT業界の派遣エンジニアへと、年収300万円下げてまで昔経験した業界へ戻ってしまいました(7社目⇒8社目⇒9社目)。それだけ軸をずらしすぎるのは危険なのです。

仮に年収1000万円まで到達したいのであれば、「軸ずらし転職」で細かいステップを踏むことが必須です。このように、1回の転職ですべてを達成しようとする、遠くへ飛び過ぎる「軸ずらし転職」は危険極まりないのです。

そうは言っても、なるべく1回の転職で可能な限り年収アップさせたいのが本音だと思います。そこで、最もリスクなく年収アップが可能で、ストレスもかからずに新しい職場環境にも適応できる「転職の技法」として、あなたの今いる「業界」と関わりがあり、共通項もある「職種」、そして役職と会社の「ポジション」を“ちょっとだけ”スライドして転職する、「軸ずらし転職」の細分化版「ちょいスラ転職」をこれから紹介します。

「ちょいスラ転職」は3方向で検討する

「ちょいスラ転職」では、まず3つの方向を検討します。

3方向とは「業界」と「職種」、そして役職と会社の「ポジション」です。この3つをあなたの今の業界、今の職種、今のポジションから“ちょっとだけ”スライドして転職します。それが「ちょいスラ転職」の極意です。あまり飛び過ぎると適応するまでの壁が高すぎて今後のキャリアにも影響するため、コツは“ちょっとだけ”です。

ここでは「ポジション」について取り扱います。

数字の3
※写真はイメージです
転職を機に役職を1つ上げる

まず役職から。役職とは、会社内におけるポジションを明確にするものです。皆さんもご存知の通り、役職が上がるほど年収は高くなり、会社内での責任も大きくなります。役職を細かく分類すると、「プレイヤー」と「管理職」の2つに分かれます。

例)プレイヤー…一般社員、主任、係長、プログラマー、システムエンジニア、プロフェッショナル、スペシャリスト等

管理職…課長、部長、本部長、社長、リーダー、マネジャー、ディレクター、CEO等

森田昇『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)
森田昇『年収300万円から脱出する「転職の技法」』(日本能率協会マネジメントセンター)

この「役職のポジションを“ちょっとだけ”スライドする」とは、転職を機に役職を1つ上げることです。役職は「業界×職種」で決定される年収の大枠内での位置を決めてくれる「能力」の証明ですから、これをスライドすれば「同業界同職種」への転職でも年収はアップします。私は「同業界同職種」で親会社を経由してプログラマー⇒システムエンジニアへと転籍後、年収が100万円アップしました(4社目⇒5社目⇒6社目)。2つ以上は飛び過ぎるので1つでいいです。業界も変わらず、エンジニアという大枠の職種も変わらないのに年収アップ、いいですよね。

ただ、前述の3つの軸ずらしと比較すると年収アップはそれほどでもないですし、もしプレイヤーだったあなたが、新しい職場環境の中で未経験のうちに管理職になってしまったなら、想像以上に大変です。管理職1年目でマネジメントの右も左もわからない状態なのに、これまで一緒に働いたことがない人たちを率いるのはハードルが高いからです。

役職はプレイヤーと管理職で分かれていますから、プレイヤーの中で役職を上げるか、管理職として役職を上げるかなら、そこまで差異はないので負担は少ないでしょう。このように、年収アップの度合いで役職のポジションを1つ、“ちょっとだけ”スライドするのを考慮してみてください。

森田 昇(もりた・のぼる)
キャリアコンサルタント、中小企業診断士
一般社団法人リベラルコンサルティング協議会代表理事、あさみコンサルティングファーム代表取締役、ProsWork取締役、S取締役。1998年、大学卒業後、IT企業に入社。サラリーマン生活20年間で10回の転職を経験し年収300万円からの脱出を果たす。この転職法を紹介した再就職支援セミナーをハローワークで100回以上開催、2000人の転職と再就職の支援をする。著書に『売れる!スモールビジネスの成功戦略』(明日香出版社)がある。

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