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光と陰影で表現された『一枚の絵』 紙上に存在する“不穏な空間”に ネット上で多くの反響

  • 2023.8.30
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絵画は、描き手の心の奥深くに秘められた感情や想いを形にします。その線の一本一本が見る人の心を打ち、時には深い感動や共感をもたらすことも。

田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さんが、ある1枚の絵をX(旧Twitter)上に投稿すると、5.9万件のいいね(2023/08/28時点)を集め、大きな話題となっています。

その話題の絵がこちらです。

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出典:田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん

※下記の日付のリンクをクリックするとX(Twitter)に移動します

田崎蟻 (ari tazaki)@ari_ta_zaki 2023年8月21日
藝大の試験で通った絵。高3のときのです

こちらは東京藝術大学の入試で描かれた絵とのこと。東京藝術大学は、日本で唯一の国立総合芸術大学として、創設以来、世界水準の教育研究活動を展開し、数多の傑出した芸術家を育成・輩出しています。

現在、田崎蟻(ari tazaki)さんは東京藝術大学 油画科の1年生で、ご自身のInstagram(@ari_ta_zaki)にも数多くの作品を投稿されています。

今回投稿された絵について、タイトルや描かれた意図などが気になっている人が多く見られました。

人の心の奥深くを描いた作品

素晴らしい作品について田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さんにお話をお伺いしました。

---作品について詳しく教えてください。

田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん「この作品は、木炭紙に木炭と鉛筆を使って描きました。私が高校3年生の時に受けた東京藝術大学の油画科の一次試験(木炭デッサン)の再現作品です。制作時間は4時間でした。かなり自由に描かせてくれる課題内容だったので、束縛感なく純粋に好きな絵を描けた印象です」

---高校3年生でこの作品を…!

田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん「『人の二面性・多面性』に興味があり、この絵を描きました。SNSで何個もの自分を同時多発的に常に運営できる感覚や、集団心理、人がつく『嘘』などにとても興味があります。満員電車という赤の他人と密着し続ける異様な空間で、さまざまな人が何かしらのことを思っているのに、何一つそれらは可視化はされず、みな一文字口で沈黙している不穏な空間に魅力を感じていました。私の個人的な体験談なのですが、人の流れで生まれる力によって、2駅分ほど足が電車の地面に付かず、浮いていたこともありました」

---満員電車をこのように表現できる発想力が素晴らしいです。

田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん「X(旧Twitter)のリプライでは、この絵の第一印象と、そこから見えてくる情景に対するさまざまな感想をいただきました。そのパッと見では何もわからず、目を凝らしていくにつれて紐解ける感覚を共有してもらえたと思うと、とても嬉しく思います」

---何度も見返したという人もいたようです。陰影のこだわりについても教えてください。

田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん「光や影は、美術史やイラスト、アニメなどでも、私たちのさまざまな想像を掻き立てます。私たちはモノを認識するとき、光を用いて可視化させています。モノの“存在感・現実感”をより強く感じるために光を当て続けていくと、モノは白飛びして見えなくなり、影は真っ黒く巨大に伸びていき周囲を飲み込みます

---確かにそうですね。

田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん「モノの“存在感・現実感”をより強めるために行った行為のはずが、過度に行った結果、現実感を失い一気に嘘くさくなるのです。そのようなリアリティの曖昧さ、嘘の輪郭の強さなどを脳裏によぎらせながら空間演出を考えています。また、それらを画面上にビジュアル化させた時に、第一印象の『分からなさ』『なにかが渦巻き蠢いている感じ』に繋がりつつ、意味もなくかっこいいと思ってもらえたり、印象に残るように色の面積比や形などを計算しています」

---光と影の使い方がもつ影響力と、それを巧みに操る深い洞察力を垣間見ることができました。

素晴らしい作品の数々

ご自身で特に気に入っている作品を田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さんにお伺いしたところ、以下の3点の作品を紹介してくださいました。

●木炭画

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出典:田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん

田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん「この作品は、19歳(1浪)の時に藝大の試験で描き、一次試験を通過した木炭画です。無地のトランプと、柄付きのトランプが配布され『表・裏』という課題でした。トランプの柄や素材など、さまざまな切り口で特徴を分析した上で、集団心理といったテーマを抱えながら描きました。今でもお気に入りの1枚です」

●油絵

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出典:田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん

田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん「この作品は油絵です。第一印象では平面的、数秒見ていくと空間が広がっていく鑑賞の段階を探求していました。彼らは飛んで、どこへ行くのか。物語性を含みつつ、現実感の脆さや曖昧さをテーマに描きました。靴の落とし主が誰なのか、私もずっと気になっています」

●木炭画

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出典:田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん

田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん「この作品は木炭画です。周囲の彼らは、本当に存在しているのか嘘なのか、私にも見極められません。現実感を強く持った嘘、つまり幻覚は常に私たちに襲いかかると思いながら描いた1枚です。周囲の彼らの太ももに、下着の跡が残っているのが個人的にお気に入りポイントです。こういう遊び方が大好きです」

どの作品にも人の心理が描かれているのですね。じっと目を凝らして見ていたい作品ばかりです。

絶賛の声が多数!

この投稿を見た人たちからは、次のようなコメントが寄せられました。

「これ、最初はただ『わ、わたしの好きな感じのアートだ』と思ったのだけど、よくよく見たら、満員電車の絵で、みんなマスクを着けている……」
「光の陰影だけでここまで表現出来るんだ…」
「題名が気になる 棺桶とか馬運車とかかな」
「光が当たってる様子だって一目見てわかるし本当に表現力がすごいし心動かされる、今日何回もこのツイート見に来てる」
「亡者の行進にも見えたり、霧の川にも見えたり…本当にスゴイ」
「ぎゅうぎゅうで暑そうなのにもの凄く冷たさを感じる。 欲しくなる絵だ」
「高校生でこんなの描けるのすごい。実物を近くでじっくり見てみたい」

見る人によってさまざまな見方があるようです。

これから描かれる作品も楽しみですね。



文/構成:TRILLニュース

提供:田崎蟻 (ari tazaki)(@ari_ta_zaki)さん