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【ドイツ】“世界一美しい”と称される炭鉱がある街「エッセン」とサッカーの名所巡り

  • 2023.7.26

“世界一美しい炭鉱”と称され、世界遺産に登録されている「ツォルフェライン炭鉱業遺産群」がある、ドイツ西部の都市「エッセン」。近郊都市には、サッカーの名門クラブチーム「シャルケ04」や「ボルシア・ドルトムント」のホームスタジアムが点在しています。日本ではまだあまり知られていない「エッセン」の街の魅力とともに、周辺地区で楽しめる旅スポットもあわせてご紹介します!

ヨーロッパ工業の発展の舞台となった街「エッセン」

「ルール工業地帯」と聞くと、中学の地理の授業で習ったような・・・と記憶が蘇る人もいるのではないでしょうか。オランダの一大港湾地区「ユーロポート」へと続くライン川を中心とする水運に恵まれた炭鉱の産地で、ヨーロッパ最大の工業地帯として栄えました。その中心部に位置するのが「エッセン」です。

街には炭鉱で働く人たちのオブジェも

観光の目玉は、なんといっても世界遺産に登録されている「ツォルフェライン炭鉱業遺産群」なのですが、炭鉱の街としてのイメージを覆すような別の魅力にも出合いましたよ。

“世界一美しい”と称される「ツォルフェライン炭鉱業遺産群」

広大な敷地内に博物館や緑地公園、イベント会場などさまざまな施設が点在

まずは、有名な「ツォルフェライン炭鉱業遺跡群」をご紹介しましょう。19世紀半ばからドイツで起こった、急速な第二次産業革命の舞台となった場所です。1851年から1986年まで、実に135年もの期間ここで採掘が行われ、ヨーロッパの工業発展に貢献してきました。

炭鉱としての役割を終えてからは産業遺産として建物が残り、博物館や緑地公園、イベント会場などさまざまな用途で使われています。

100ヘクタールもの広大な敷地に点在する数多くの採掘坑のなかでも、特に目を引くのが「第12採掘坑」。2本の支柱を櫓型に組んだその美しい姿は、敷地の外からでもすぐ認識できるほどの圧倒的な存在感を放ちます。

20世紀前半に革新的な建築様式としてドイツから広まった、“バウハウス様式”が採用され、1932年に建てられました。鉄骨や赤レンガ、ガラスを取り入れたデザインは、“世界一美しい炭鉱”と称されるほどに。炭鉱という概念が覆されるような明るく機能的な造りは、当時どれだけのモダンだったのかと想像が膨らみます。

現在はデザインセンターとなっており、この建物のとなりに博物館の入り口があります。

ワクワク感が詰まった工場内部

建物内でも、当時の面影を呼び起こす工場の姿を見ることができ、迫力満点!ガイドツアーはドイツ語と英語のみですが、一般では入れない場所にも案内してくれますよ。

【ツォルフェライン炭鉱業遺産群(Zollverein UNESCO World Heritage Site)】

所在地:Gelsenkirchener Str. 181, 45309 Essen

入場無料!名画から現代アートまで多彩な展示が楽しめる「フォルクヴァンク美術館」

緑を感じる中庭を囲うように配された展示スペース

上流階級だけでなく、工業地帯に暮らす人にも芸術作品に触れて心の豊かさを養ってほしいというコンセプトのもと、1902年に設立した「フォルクヴァング美術館」。もともとはハーゲンという近郊の街にあったものが、後にエッセンに引っ越してきました。

“誰でも自由にアートを鑑賞してほしい”という設立当時の想いを引き継ぎ、現在も特別展示以外の常設展示は全て無料で見ることができます。

歴史的な名画から最新アートまでさまざまなジャンルの作品を展示

モネやルノワールといった印象派を代表する画家たちや、ゴッホやセザンヌ、ゴーギャンといったポスト印象派、ピカソやマティス、ダリなど名だたるアーティストたちの絵画や彫刻作品が多く所蔵されています。さらにグラフィックアートや写真など、時代や国境を越えた多彩なアートを感じることができるのも印象的でした。

館内には、緑あふれる中庭やおしゃれなレストランもあるので、食事やお茶などの機会にもよさそう。「カリーヴルスト」や「シュニッツェル」といった、ドイツならではのメニューもありますよ。

【フォルクヴァンク美術館(Museum Folkwang)】

所在地:Museumsplatz 1, 45128, Essen

貴重な“七枝燭台”や“黄金の聖母子像”は必見!「エッセン大聖堂」

街の喧騒にどっしりと佇むエッセン大聖堂

街の中心部にある「エッセン大聖堂」は、9世紀頃から1800年頃まで修道院の教会として機能していたというこの街の歴史を刻んできた場所。教会ならではの清閑な雰囲気も素敵なのですが、かなり貴重なお宝を見ることもできるんです。

大聖堂の中に入ってまず目に飛び込んでくるのは、 先端が7枝に分かれた半円状の燭台。見上げるほどの大きさに目を見張ります。このような形の燭台はユダヤ教で“メノーラー”と呼ばれていますが、キリスト教でも古くから使われていたのだそう。エッセン大聖堂にあるこの七枝燭台は、キリスト教で現存するなかでは最も古く、1000年頃につくられたと伝わっています。

大聖堂の左側通路の奥には、「黄金の聖母子象」がひっそりと佇んでいます。彫刻した木に金箔が貼られているというこの像は980年頃の作で、聖母子像としては最古なのだとか。神秘的なマリア様の表情や神々しく輝く存在感に引き込まれました。

これらは大聖堂内で見ることができますが、大聖堂の隣には「エッセン大聖堂 宝物庫(Domschatz Essen」という博物館があり、教会に伝わる数々の像や十字架、王冠、箱など、多彩な展示を見ることができますよ。

【エッセン大聖堂(DOM ESSEN)】

所在地:Burgplatz 2, 45127 Essen

ドイツサッカーの魅力に触れる旅

エッセン近郊にはドイツのサッカーリーグ「ブンデスリーガ」に名を連ねるクラブチームの本拠地が点在しています。今回はその中の2つの有名チーム、「シャルケ04」と「ドルトムント」のスタジアムに潜入しました。

「シャルケ04」のホームスタジアム「フェルティンス・アレーナ」

ルール地方を代表するクラブチーム「シャルケ04」

内田篤人選手や吉田麻也選手が所属していたことで、日本でもその名が知られている名門チーム「シャルケ04(FC Schalke 04)」。本拠地は「ゲルゼンキルヒェン(Gelsenkirchen)」という街にあります。炭鉱夫たちが集まってサッカーを楽しんでいたのが、段々と規模が大きくなり、1904年にサッカーのクラブチームとして設立。このルール地方の歴史を物語るチームです。

屋外で太陽光を当てて天然芝を養生

ホームスタジアムの「フェルティンス・アレーナ(Veltins-Arena)」は、2006年のFIFAワールドカップをはじめとする多くの国際試合でも使用されており、欧州サッカー連盟(UEFA)のランキングでは最上級の「カテゴリー4」に分類されているそう。サッカー用の天然芝は屋外で丁寧に管理され、試合がある時はスタジオ内に移動できるよう稼働システムが採用されています。

用途に応じて屋根を開閉できる全天候に対応したスタジアム

屋根は開閉式で、全天候に対応。コンサートやオペラを開催するときは近所への騒音問題に配慮して屋根を閉じて使用され、サッカーの試合はオープンにするのだとか。「サッカーの試合も歓声がすごいのでは?」という問いに、「それは別の話よ。」と答えた案内の人の笑顔に、地域のサッカー愛を感じました。

こちらのスタジアムでは、一般の人向けのアリーナツアーを実施。試合では見られない、スタジアムの裏側を案内してくれますよ。

【フェルティンス・アレーナ(Veltins-Arena)】

所在地:Rudi-Assauer-Platz 1, 45891 Gelsenkirchen

「ボルシア・ドルトムント」のホームスタジアム「ジグナル・イドゥナ・パルク」

ルール工業地帯にある都市「ドルトムント」を拠点とする「ボルシア・ドルトムント(Borussia Dortmund)」は、1909年に設立された強豪クラブチーム。2010年以降に香川真司選手が長年所属していたチームです。“バルシュピール・フェライン・ボルシア(ボルシアの球技クラブ)”という意味の頭文字と設立年を組み合わせた、「BVB09」がアイコン。

ホームとして使われているのは、サッカー専用のスタジアム「ジグナル・イドゥナ・パルク(Signal Iduna Park)」。収容数8万以上というドイツ最大規模を誇ります。ここでは、ピッチからバックヤードまで案内していただきましたよ。ベンチと観客席の距離が近さや、芝生の美しさを間近に感じることができて、驚きや発見に溢れるツアーでした。

バックヤードでは、ロッカールームやシャワールームも公開。ハンガーひとつずつに各選手の写真が飾られいて、実際にここを使っているのかと思うとワクワクします。このようなスタジアム見学ツアーは、ネットから申し込み可能。ピッチへ向かう廊下を歩いたりベンチに座りながら選手気分を味わえば、サッカー愛がさらに深まりそうです。

【ジグナル・イドゥナ・パルク(Signal Iduna Park)】

所在地:Strobelallee 50, 44139 Dortmund,

幅広い層が楽しめる演出がお見事!「ドイツ・サッカー博物館」

サッカー強豪チームの本拠地である「ドルトムント」では、「ドイツ・サッカー博物館(Deutsches Fussball Museum)」も見逃せません。2015年にオープンした比較的新しい施設で、ドルトムント駅の目の前にありアクセスも良好です。

地上3階建ての大きな建物には、140年に及ぶドイツサッカーの歴史を物語る展示がずらり。これまで活躍してきた名選手の写真や着用していたユニフォームやスパイク、有名な試合で使用されていたボール、ワールドカップやUEFAヨーロッパリーグなど国際試合のトロフィーなど、サッカーファンにはたまらない数々のお宝を見ることができます。

サッカーの知識があまりない人でも楽しめるような、インタラクティブな体験もありますよ。3D映像でドイツのサッカー史を紹介したり、ドイツリーグの歴史に名を刻んだ試合を360度の角度から見られたりなど、デジタルテクノロジーを駆使したセッティングも。館内にはフットサル用のコートが設けられていたり、子どもが気軽に遊べるゲームも設置されています。

さまざまな視点からサッカーを身近に感じられる演出が盛りだくさんで、サッカー大国の貫録が感じられる施設でした。

【ドイツ・サッカー博物館(Deutsches Fussball Museum)】

所在地:Platz der Deutschen Einheit 1, 44137 Dortmund

[all photos by minacono]

Please do not use the photos without permission.

取材協力:ドイツ観光局

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