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広い畑がなくても鉢でも育つ! スイカの育て方と注意点を解説

  • 2023.7.24

「スイカを自宅でも育てられる? どうせ小難しいんでしょう?」と最初から決めつけてはいませんか? スイカは暑さに強くて、放任してもよく育つ強健さも備えた夏野菜の一つ。庭でも育てることはできますし、なんならプランターでも栽培ができるんです! 育て方のコツをつかんでしまえば、誰でもチャレンジできますよ。ぐんぐん育つ頼もしい姿に感動し、そして甘くて美味しい果実の恵みを味わえば、きっとスイカのファンになって、毎年育てたくなることでしょう!

スイカってどんな植物?

スイカ
Menna/Shutterstock.com

スイカは、ウリ科スイカ属の果菜類で、熱帯アフリカが原産地。高温で日当たりがよく、乾燥した場所を好みます。生育適温は28〜30℃。つるを伸ばして生育する植物で、つるは2m以上にも達します。可愛らしい黄色い花を咲かせ、雄花と雌花がつくのも特徴です。ウリ科の植物を同じ場所に植え続けると障害が起きやすく、つる割れ病を発症しやすくなるので、栽培の際には、前作にウリ科の植物を育てていない場所を選び、輪作をするようにしましょう。

スイカの種類

スイカの種類
Pawel Beres/Shutterstock.com

スイカは、アメリカや中国で品種改良が進んだこともあり、さまざまな品種が揃っています。最もポピュラーなのは、果重が5〜7kgの大玉スイカ。甘みが強く、ジューシーでシャキシャキとした歯ごたえが楽しめます。果皮の色はよく知られる縦縞模様のほか、緑色、黒色、黄色もあります。果肉の色は赤、桃色、黄色など。中には重さ15〜20kgになる、俵形の黒部スイカもあります。

また、果重が2kg前後の小玉スイカは家庭菜園向き。球形やラグビーボール形があり、果肉は赤、黄色など。一昔前は、小玉スイカは大玉に比べて甘みや食感が落ちると評されがちでしたが、品種改良によって現在では糖度が高くジューシーな小玉スイカが出回るようになっています。

家庭菜園で育てやすいおすすめの小玉スイカの品種は、裂果が少なくシャリシャリとした食感が楽しめる‘紅しずく’、舌触りがよく甘み、風味ともによい‘紅こだま’、果肉が濃い黄色で上品な甘さが楽しめる‘ニュー小玉’。大玉に挑戦するなら、日もちがよく高糖度の‘秀山’、ユニークな楕円形で糖度12〜13度を誇る‘カメハメハ’、黒皮で肉質がよく甘みも強い‘タヒチ’などです。

プランターでも育てられる! スイカを育てる場所について

スイカの育て方
daphnusia/Shutterstock.com

スイカはつるを大きく広げて生育する植物なので、広めの畑でのびのびと育てるのが一般的ですが、なんとプランター栽培もできます! 大型の長方形プランターに1株を目安に植え付け、支柱を4本設置して、あんどん状につるを仕立てる「立体栽培」にするのです。広めのフェンスがあれば、フェンスに仕立ててつるを広げてもOK。ただし、プランター栽培は小玉スイカに限ります。実がついたら、重さに耐えられるようにネットに吊す工夫などが必要ですが、スイカ自体は放任してもよく育つので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

スイカの時期

スイカの育て方
Antonio Gravante/Shutterstock.com

スイカのライフサイクルは、次のような流れです。4月頃にポットにタネを播いて育苗し、5月中旬頃に苗を畑に定植します。順調に生育すれば、6月下旬には黄色い花が開花。受粉後、7月下旬〜8月が収穫期です。1株につき、1〜3個の収穫を目指します。収穫後は枯死する一年草なので、収穫が終わったら、茎葉や土中の根を処分して整地しましょう。

スイカの種まきは加温器を使った管理が必要なので、家庭菜園では、花苗店で苗を入手してスタートするのが一般的です。地植えにする場合は、苗の植え付けの1カ月前に土づくりをして、準備をしておきましょう。

スイカを育てる前に! 土の準備

土作り
Jurga Jot/Shutterstock.com

【地植え】

連作を避けるため、前作にウリ科の植物を栽培していない場所を選びましょう。

苗の植え付けの2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり約100g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。さらに、植え付けの1〜2週間前に畝幅を約100cm取り、その中央に深さ約15〜20cmの溝を掘り、1㎡当たり堆肥2kg、化成肥料(N-P-K=8-8-8)30〜40gを均一にまき、埋め戻して平らにならしておきましょう。土づくりは植え付け直前ではなく、数週間前に行うことで、分解が進んで土が熟成します。

【プランター】

野菜用にブレンドされた市販の培養土を使うと便利です。それぞれの野菜に適した土壌酸度などが異なるので、製品の用途に「スイカ」の項目が入っているか、確認しておきましょう。

スイカを育てるポイント

スイカの種まきは加温器で管理する必要があるなど、ビギナーさんにとってはハードルが高い作業です。でも、5月頃から花苗店やホームセンターで苗が出回り始めるので、苗の植え付けからスタートするとよいでしょう。ここでは、管理のしやすい小玉スイカの育て方をご紹介します。菜園などで地植えにする場合は、つるをそのまま地面に這わせる地這栽培、プランターで栽培する場合は、支柱につるを這わせる立体栽培を。菜園でも敷地に余裕がない場合は、立体栽培にしてもOKです。

植え付け
スイカの植え付け
PRASANNAPIX/Shutterstock.com

本葉が4〜5枚ついた頃が植え付けの適期です。茎が太く、節間が短くがっしり締まって勢いのある苗を選びましょう。値段は少し高くなりますが、接木苗を使うと病気に強く、管理がしやすいでしょう。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、幅100cm、高さ5〜10cmの畝をつくり、表土を平らにならします。畝ができたら、表面に黒マルチ(ポリフィルム製の被覆資材)を張り、風で飛ばないように四方に土を盛って固定します。黒マルチはできるだけピンと張っておきましょう。黒マルチを張ることで、地温を上げるとともに乾燥や雑草を防ぐことができます。また、泥はね防止になるため、病気の蔓延を防ぐ効果もあります。

畝の中央で黒マルチに穴をあけ(カッターでバツ印に切ってもOK)苗より一回り大きな植え穴を掘り、根鉢を崩さずそのまま苗を植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。苗を複数植える場合は、株の間隔を100cm以上離します。植える株数によって、畝の長さを調整します。

【プランター】

土が25〜30ℓ入る、大型の長方形プランターに1株を目安に栽培します。鉢底網、鉢底石、培養土、苗、支柱、ひもを用意します。

プランターの底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に市販の野菜用培養土を入れます。水やりの際に水があふれ出ないように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。苗より一回り大きな植え穴を掘り、根鉢を崩さず、そのまま苗を植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。

プランターの四隅に支柱を立てます。支柱の下から10cmと20cmのところ、2カ所をひもで囲ってあんどん状にしておき、つるが伸びてきたら適宜誘引していきましょう。苗の成長とともに、あんどん状のひも囲いの数を増やし、つるを誘引していきます。

水やり
水やり
wavebreakmedia/Shutterstock.com

【地植え】

地植えの場合は、下から水が上がってくるので、天候に任せてもよく育ちます。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補いましょう。

【プランター】

土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えます。特に梅雨明け後の高温期は乾燥しやすいので、朝夕2回の水やりを忘れずに行いましょう。高温の真昼に水やりをすると、すぐにお湯状になって地温が上がり、かえって株が弱ってしまうので、必ず涼しい時間帯に与えることが大切です。

摘芯

本葉が6〜8枚ついたら、親づるの先端を切り取って、摘芯します。

整枝

親づるから脇芽が出て、子づるが伸びてきます。4本以上出てきたら、元気のいい子づるを2〜3本残し、ほかの子づるはすべて切り取りましょう。子づる1本につき1つの果実の収穫を目指すわけです。子づるからさらに孫づるが出たら、すべて切り取ります。

人工授粉
スイカの人工授粉
Naisakorn/Shutterstock.com

6月下旬頃から花が咲き始めます。放任しても自然に受粉しますが、確実に実をつけさせるために、人工授粉をしましょう。スイカの花には、雄花と雌花があります。見分け方は簡単で、花の下に膨らみがないのが雄花で、膨らみがあるのが雌花です。一番花はまだ不安定なので、二番花、三番花に授粉します。

人工授粉は花が新鮮なうちの朝、午前9時までに行います。雄花を摘んで、花粉が出ているのを確認して花弁を取り除き、雌花の雌しべに花粉をこすりつけましょう。品種にもよりますが、小玉スイカでは授粉から約40日後が収穫の目安なので、人工授粉をした日付を書き入れたラベルをつけておくと便利です。

追肥
スイカの肥料
Vitalii Petrushenko/Shutterstock.com

【地植え】

果実がピンポン玉くらいの大きさになったら、黒マルチをはがして1㎡につき化成肥料40〜50gを株の周囲にまいて軽く耕し、土になじませます。黒マルチは元に戻しておきましょう。また、3週間後を目安に、同様に追肥します。

【プランター】

果実がピンポン玉くらいの大きさになったら、化成肥料(N-P-K=8-8-8)約20gを均一にまいて、土になじませます。また、3週間後を目安に、同様に追肥します。

摘果
スイカの摘果
Arif Budi C/Shutterstock.com

果実がついて2週間くらいまでに、形が整って傷のないものを、つる1本につき1個残しましょう。残す果実以外はすべて摘み取り、養分を集中させます。

敷きわら・吊り玉づくり

【地植え】

スイカの育て方
fon.tepsoda/Shutterstock.com

果実の下に敷きわらをして保護します。

【プランター】

スイカの育て方
Zulashai/Shutterstock.com

果実が大きくなってきたら、ネットを利用してハンモック状にし、果実を載せて支柱にしっかりと固定します。ネットがなければ、ひもで編んでハンモック状に吊してもOK。

玉まわし
スイカの育て方
Princess_Anmitsu/Shutterstock.com

日光が当たるとグリーンに色づくので、色むらができないように時々果実を回して、裏側もまんべんなく日光に当てましょう。

病害虫と対策方法
スイカの病害虫
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スイカに生じやすい病気は、炭疽病やべと病、疫病、うどんこ病、つる割れ病などです。植え付けの項目でご紹介したように、畝に黒マルチを張っておくと、雨などで泥が跳ね返って茎葉に付着するのを防ぎ、病気の発生を抑えることができます。被害が出た葉は早めに摘み取って処分し、全体に蔓延するのを防ぎましょう。茎葉が茂り過ぎないように、不要な脇芽は取り除いて風通しよく管理することも予防になります。

また、スイカに発生しやすい害虫は、アブラムシ類、ウリハムシ、ハダニなどです。葉に虫食い痕があれば、葉裏までしっかりチェックして早期の発見に努め、見つけ次第捕殺しましょう。アブラムシは、キラキラと光るものを嫌う性質があるため、シルバーマルチを敷いて対処する方法もあります。周囲の雑草はまめに抜き取り、株に虫が飛来しづらい環境に整えておくことも大切です。

スイカの収穫

スイカの収穫
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スイカは、見た目からは熟したかどうか判断しづらいので、花が咲いてから小玉スイカで約40日、大玉スイカで40〜50日を目安に収穫するとよいでしょう。授粉後の毎日の平均気温を足していき、「積算温度」が900〜1,000℃になる頃が収穫のタイミングという判定方法もあります。晴れた暑い日が長く続くと早く収穫できるということです。

収穫の際は、ヘタの上をハサミで切り取ります。収穫後は直射日光の当たらない、涼しい場所に置きましょう。採れたてのジューシーさと甘みは絶品ですよ!

すべて収穫し終えたら、あとは枯死してしまうので、黒マルチや支柱などをして株や土中の根を処分しておきます。

スイカの栄養価

スイカの栄養価
Elena Veselova/Shutterstock.com

スイカは「ウォーターメロン」という英名を持っていますが、その名の通り、90%以上が水分です。ジューシーで甘い果肉に含まれる糖分はエネルギーに変換されやすく、疲労回復に役立ちます。ビタミンB1、B2、ビタミンC、ミネラル類やアレルギニンなどを含んでおり、栄養補給にもなります。体を冷やす効果もあるので、夏の熱中症対策などにも。また、利尿作用のあるカリウムも多く、体内の水分調整やむくみの解消などにも役立ちます。

自宅でおいしいスイカを育てよう!

スイカの育て方
06photo/Shutterstock.com

「スイカはスーパーや青果店で買うもの」というイメージを取り払って、ぜひ家庭で栽培してみませんか? 日に日に大きく育っていく成長ぶりを観察していると、その旺盛な生命力に驚くとともに、きっと元気をもらえるはず。手塩にかけて育てたスイカは、何倍も美味しく感じることでしょう。「果菜類の王様」ともいえる、スイカの栽培に、ぜひチャレンジしてみてください。

参考文献:
『やさしい家庭菜園』 監修者/藤田智、加藤義松 発行/家の光協会 2006年3月1日第1刷
『はじめての野菜づくり コンテナ菜園を楽しもう』著者/藤田智 発行/日本放送出版協会 2007年5月25日発行
『わが家の片隅でおいしい野菜をつくる』監修/藤田智 発行/日本放送出版協会 2008年2月10日第5刷発行
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
『甘やかさない栽培法で野菜の力を引き出す 加藤流絶品野菜づくり』著者/加藤正明 発行/万来舎 発売/エイブル 2015年5月25日発行第2刷

Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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