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“ありふれた”ラブコメの『キング・ザ・ランド』が世界的ヒットの理由、従来の作品と何が違うのか

  • 2023.7.23

最近、Netflixの非英語作品でグローバル1位に返り咲き、世界的な人気を証明した『キング・ザ・ランド』。

正統派ラブコメ、クリシェ(常套句)にあふれた作品と呼ばれているが、よく見ると従来のラブコメドラマとは一風異なる点も見受けられる。

そこで今回、これまでの韓国ラブコメにあって『キング・ザ・ランド』にないものを調べてみた。

邪魔者がいない!?
(画像提供=JTBC)『キング・ザ・ランド』

従来の韓国ラブコメには、主人公カップルを妨害するサブキャラの存在がお約束だった。主人公たちを引き離そうと計略を巡らせ、視聴者をやきもきさせてきた。

だが『キング・ザ・ランド』では、このようなもどかしい展開は見られない。チョン・サラン(演者イム・ユナ)に惚れたク・ウォン(演者イ・ジュノ)は“猪突猛進”し、すっきりした展開を見せた。

一方で、チョン・サランの元カレやク・ウォンの婚約者なども登場したが、2人は惑わされなかった。チョン・サランは元恋人のコン・ユナム(演者アン・ウヨン)に「言葉で言ってダメなら通報しないと。あなたのこういう姿を見ると別れてよかった。もっと早く終わらせなければならなかったのに、また現れたら死ぬと思う」と怒り、ク・ウォンは婚約者のユリに「ユリ、私じゃなくて良い男に出会って。私は出会ったよ、好きな人に」とハッキリ伝えている。

またク・ウォンは、チョン・サランに「ユリの彼氏じゃない。これからは絶対に紛らわしいことがないよう頑張るよ。それで気を揉むな」と“妨害者”たちを事前に遮断したのだ。

貧困ヒロインの妨害する“悪”の一家

『キング・ザ・ランド』は、韓国ラブコメの定石である財閥本部長とホテリエが出会い、愛を育むという設定を持っている。経済力をはじめ、ホテル内における2人の身分差は大きい。チョン・サランは貧困というわけではないが、作品をより劇的にするためには2人の身分差をいくらでも利用することもできた。

しかし『キング・ザ・ランド』には、お金がなく、後ろ盾のいないヒロインをより一層悲惨に見せる敵役の家族が一切出てこない。加えて、堂々と生きたい主人公を挫折させる設定も見当たらない。

むしろチョン・サランは韓国語、英語、日本語、中国語を扱うマルチリンガルで、完全無欠ホテルウーマンだ。自身の能力だけで末端職員から昇進した能動的なキャラクターとして描かれている。

このように、邪魔者などが間引かれたことで強引な展開が減り、「気楽に観られる」という視聴者の評価が増えているわけだ。

高圧的男性主人公/トラブルメーカーヒロイン
(写真提供=OSEN)ユナ(左)とジュノ

従来のラブコメドラマは“素敵な男性主人公”という枠に収められ、ふとした瞬間に出てくる高圧的で暴力的な姿もカリスマ性として美しく描かれてきた。また、富豪の男性主人公に出会ったヒロインが、ある瞬間から受動的に変わり、終始助けだけを受けながらトラブルメーカーとして描かれたことも少なくない。

ただ『キング・ザ・ランド』はどちらも薄味だ。職場でのク・ウォンとチョン・サランは上司・部下の関係だが、男性主人公は決して高圧的ではない。そしてチョン・サランと恋人関係になったあとも、ホテル業務に誰よりも情熱を傾けている。

イ・ジュノは最近、メイキング映像を通じてク・ウォンのキャラクター解釈を明かし、注目を集めた。チョン・サランが拗ねたク・ウォンをなだめるシーンについて、「私はこの場面について2つある。暴力的であってはならない。声を上げすぎてはいけない」と説明すると、イム・ユナも「そうそう」と共感。その後、2人は数回のリハーサルを経て、皆が満足する結果を完成させた。

王子様ビジュアルのイ・ジュノ、幅広い世代を虜にするイム・ユナを主演に据えたことで、一見すると王道ラブコメのように見えがちな『キング・ザ・ランド』。だが、その中身はこれまでの作品とは一線を画す仕組みが散りばめられていた。また近年の韓国ドラマはどんどん過激化している傾向にあるため、気楽に楽しめるという点が視聴者から愛される理由ではないだろうか。

(記事提供=OSEN)

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