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「留学なし」で英語を極める 『赤毛のアン』翻訳者に学ぶ

  • 2023.7.20
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新渡戸稲造、夏目漱石、野口英世――。
日本にいながら英語を身につけた偉人に学ぶ!

2023年7月13日、大澤法子さんの新著『吾輩は英語がペラペラである』(Gakken)が発売された。テレビ朝日「マツコ&有吉 かりそめ天国」のイラストを担当していたことで知られる雑賀建郎さん、仲原チトさんが描きおろした100点以上の挿絵とともに、日本にいながら英語を身につけた偉人たちのさまざまな英語学習法を学ぶことができる。

また、監修を担当した早稲田大学名誉教授のジェームス・M・バーダマンさんによるコラムも掲載。長年日本人に英語を教えてきたバーダマンさんならではの視点で、偉人の英語学習法の効果を分析している。

今回はその中から、児童文学者として『赤毛のアン』『ふしぎな国のアリス』などを翻訳し、朝ドラ『花子とアン』のモデルともなった村岡花子の英語勉強法を紹介しよう。

女学校で英語をマスター

花子は10歳のとき、父親と学校創設者とのあいだに信仰上のつながりがあった、キリスト教系の東洋英和女学校(現在の東洋英和女学院)に編入した。東洋英和における英語教育は特筆すべきもので、当時のほかの女学校、たとえば若松賤子や津田梅子、内村鑑三などが教師を務めていた明治女学校と比べて、約2倍の英語の授業がカリキュラムに組み込まれていた。

また、英語以外の授業では、日本学を除く科目はすべて英語で教えられていたという。世界地理の授業では先生の質問に対して英語で答えさせられたという卒業生の証言も残っていて、体操の号令までもが英語だったとされる。

さらに、花子が10歳のころから10年間住んでいた寄宿舎では、The Sixty Sentences(60の文)と呼ばれる厳しい日課があった。これは日常生活を細かく60の英文で表したもので、寄宿生たちは毎朝、これを暗唱させられた。時おり、抜き打ちで主語の人称や時制を変えたり、否定文や疑問文にしたりして唱えさせたので、 寄宿生たちの英語力は相当鍛えられたという。彼女たちが唱えていた英文は、たとえば以下のようなものだ。

The rising bell rings at six o'clock.
6時に起床のベルが鳴ります。
The last bell rings at half past nine.
9時半に最後のベルが鳴ります。
We all sleep quietly until the rising bell rings again.
起床のベルが鳴るまで静かに眠ります。

朝6時に起きて英文を暗唱し、丸1日勉強して夜9時半には就寝というストイックな生活を送っていた花子。さらに当時の東洋英和には「成績が悪ければ即退学」という厳しいしきたりまであったというから、英語力がつくのも納得だ。

◆もくじ◆
Chap.1 みんな知ってるこの人も英語を学んでいた!
勝海舟/福沢諭吉/大隈重信/渋沢栄一/伊藤博文/新島襄/内村鑑三/森鷗外/新渡戸稲造/岡倉天心/津田梅子/夏目漱石/南方熊楠/島崎藤村/野口英世/石川啄木/芥川龍之介/村岡花子/宮沢賢治/太宰治(生年順・計20人)

Chap.2 実はスゴイ! 知られざる英語マスター
森山栄之助/堀達之助/ジョン万次郎/清水卯三郎/前島密/大山巌・捨松/若松賤子/斎藤秀三郎/山田美妙/新美南吉(生年順・計10人)

■大澤法子さんプロフィール
おおざわ・のりこ/1983年、愛媛県生まれ。神戸女子大学文学部文学科英文学専攻卒業、神戸大学大学院文学研究科修士課程修了。文学修士(言語学)。大学院修了後、実務翻訳や技術翻訳に携わるほか、日本文化やテクノロジーをテーマに寄稿を行っている。

■ジェームス・M・バーダマンさんプロフィール
アメリカ合衆国テネシー州生まれ。早稲田大学名誉教授。プリンストン神学校修士、ハワイ大学大学院修士(日本研究)。1976年に来日し、数々の大学で教鞭をとる。著書に『毎日の英文法』シリーズ(朝日新聞出版)、『シンプルな英語で話す日本史』(ジャパン・タイムズ)、『日英対訳 世界に紹介したい日本の100人』(山川出版社)など。

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