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「出産2カ月前まで妻が他の男性の子を身ごもっていることに気づかなかった」離婚後に発覚した衝撃の事実

  • 2023.7.15

出産2カ月前まで一緒に暮らしていたのに、妻が妊娠していることに気づかなかった夫。離婚後に妻から届いた申立書の衝撃の内容とは。家庭裁判所の家事調停委員として活躍した鮎川潤さんが多様な離婚の在り方を紹介する――。

※本稿は、鮎川潤『幸福な離婚 家庭裁判所の調停現場から』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

母親に叱られた少年
※写真はイメージです
単身赴任から離婚へ

本稿では、離婚の前後で妻が自分とは違う男性の子を出産するに至った2つのケースを検討していきます。

ケース1
〈年齢〉元夫:40歳代後半 元妻:30歳代後半
〈職業〉元夫:会社員 元妻:主婦
〈子ども〉長男:10歳 長女:4歳
〈経緯〉元夫から長女と自分との間の「親子関係不存在確認」の申立

この(元)夫婦は11年前に結婚しました。結婚して1年後に長男が生まれます。その1年後に夫が単身赴任になります。妻は、まだ子どもが小さいため、自分の知らない遠方の土地に同行して一人で子育てすることに不安を感じ、結婚したのと同じ故郷の小さな町に留まり、実家の援助を受けて子育てすることを希望します。

夫はときおり妻のもとへ帰っていましたが、仕事が忙しくなり、たまにしか帰宅しなくなりました。やがてお盆や正月の長期休暇のときにしか帰宅しなくなり、さらにその時期は混雑するというので、ほとんど帰ることがなくなります。妻としても、夫に帰宅を促すようなことはなくなります。

妻が帰宅を促さなくなった理由

給与は妻が管理し、夫は残業手当などで自分の小遣いを賄って暮らしていました。

妻が、夫に帰宅するように言わなくなった最大の理由は、実は夫が単身赴任して2年後から夫以外の男性と交際するようになったためです。しかし、そのことに夫は気がつきません。単身赴任して3年後に夫婦の間で、一度、妻の側から離婚の話が持ち出されます。

これは自分が単身赴任しており、家に帰る頻度も少なくなり、夫婦と言えるような状態ではないこと、また長男出生時以来、子育てを手伝うことがなくきていることに対する不満の表明だろうと夫は考えました。しかし、妻のいる町へ戻るという転勤の話もないため、そのままになってしまっていました。

地位が上がるにつれてますます忙しくなり、単身ということで、子どもが病気になった、学校行事で会社を休みたいといった社員の代わりを務めるようになり、さらに妻の住んでいる場所へ行くには不便な地域へ転勤したりして、ますます自宅への足は遠のいていきました。帰宅しても、滞在は短期間で、妻とは意思疎通が円滑に行かず、ギクシャクしており、妻、長男と3人で過ごすことはあっても、夫婦2人で過ごす時間はなく、過去5年間は夫婦間に性交渉もありませんでした。

妻が勝手に離婚届を提出

そうしていたところ、半年前に妻は在住する地方自治体へ離婚届を出しました。

地方自治体は届を受理したのちに、離婚届を受理したとの通知を単身赴任している夫へ送ってきました。

男性としては、自分は離婚届に署名捺印をしておらず、妻から離婚届を出すことについての相談は受けておらず、提出するといった連絡もいっさい受けていないため、突然の知らせに驚きました。

男性は、まさか妻が勝手に離婚届を出すとは想定していませんでした。そのため、妻と息子が在住する地方自治体へ、万が一離婚届が提出されてもそれを受理しないようにという「離婚届不受理申出」を提出していませんでした。

しかし、近年夫婦としての体をなしていないこと、また過去に離婚の話が出て、二人の関係も疎遠になっていることから、妻がそうした考えであれば致し方ないかもしれないと考え、仕事の忙しさに紛れてそれ以上、妻を追及することは避けていました。

戸籍に知らない「自分の子」が…

長男の子育てはいっさい妻に任せているため、離婚にあたって、親権者が妻になるのは致し方ないことと考えました。離婚後も、給料が振り込まれる預金通帳と銀行カードも妻が持ったままでした。また、養育費などの話もしていませんでした。

最近、会社から海外出張を命じられたため、パスポートを作成する必要から戸籍謄本を取り寄せました。すると、男性は戸籍に自分の子として、会ったことも名前を聞いたこともない長女の名前が記載されていることに驚愕しました。今まで、妻が長男以外に子どもを身ごもって出産して子育てしているとは想像したこともなく、気がつかなかったためです。珍しく帰宅したおりにも、妻はそのようなそぶりを見せず、長男から妹の話題が出ることもありませんでした。

文書を読んでいる間に驚いた男
※写真はイメージです

戸籍には、長女の出生時に自分が父として届けられていました。妻が離婚すると同時に、二人の子どもが親権者を母として除籍されていました。除籍された二人の子どもの記録は戸籍に残っています。

長女は出生時に出生届が出されて、自分の子どもとして届けられていたわけです。そこで元夫はこの娘と自分との間には親子関係が存在しないということを確認してもらいたいということで「親子関係不存在確認」の申立を家庭裁判所へ行いました。

勝手に結婚届や離婚届が出されるケース

妻が出産した子どもが夫とは別の男性の間にできた子どもである場合、そのことを夫に知られないために、しばしば出生届を地方自治体の役場へ提出しないことが起こります。無戸籍の子どもの問題として注目を集めています。しかし、逆に、夫にとって自分の子どもでもないのに自分の子どもとして戸籍に登録されることも起きています。

日本の婚姻制度では、勝手に婚姻届が出されて結婚したことにされたり、このケースのように勝手に離婚届が地方自治体の役場に出されて、離婚したことにされてしまうことが起きています。これを防ぐ方法として「婚姻届不受理」や「離婚届不受理」の申出がありますが、十分に機能しているとは言いがたいように思われます。

先進国では数少ない、離婚届を行政機関に提出しさえすれば離婚が成立するという「協議離婚」の制度を持ち、これを用いて離婚する人が圧倒的に多いのが日本の特徴です。協議離婚による離婚届について言えば、自分の知らないうちに勝手に離婚したことにされてしまう可能性があり、実際にそのようにされてしまった人もいます。

このケースでは、あえて言えば勝手に離婚届を偽造されて提出されてしまったわけですが、男性は実質的に自分たちの婚姻関係は破綻してしまっていると認識し、それを追認することにしたようです。

離婚登録とボールペン
※写真はイメージです
妻は再婚し、子ども2人を新しい夫と養子縁組

妻は離婚すれば妻ではなくなりますが、子どもはそのようなわけにはいきません。妻は離婚届を出したのち、自分との婚姻中に実質的に同棲していた男性でもあり、長女の実の父親である男性と再婚しました。その際に2人の子どもとその男性との間で養子縁組をしました。

自分が単身赴任して以来、十数年にわたって子どもと会った回数はほんの数えるほどしかなかったため、妻が子どもの親権者となるのは順当なことと思われました。妻が長男の親権者となれば、離婚後の単独親権制度のもとでは、実子である長男が妻の再婚相手と養子縁組するのを阻止したり、異議を申し立てる手立てはありません。

しかし、自分に長女がいるとされていることだけは訂正したいと考え、「親子関係不存在確認」の届を出しました。ほんのたまに帰宅することがあっても、妻とほとんど会う機会はなく、寝室をともにしたこともなかったからです。自分の実子ではない子どもは、もう自分の戸籍からいなくなったからそれでいいのだというわけにはいきません。

養子縁組されても実子としての関係は続く

通常の養子縁組の場合は、養子縁組されても、実子としての関係は続きます。このケースでは、もしこの男性が死亡した場合、離婚した妻は遺産相続とは関係ありませんが、子ども2人との関係は維持されたままになります。

すなわち2人の子どもが自分の遺産を2分の1ずつ分け合うことになります。

将来予定される遺産分割だけにこだわっているわけではありませんが、長女のことはあまりにも事実に反することですので、親子関係がないことを確定しようとしたわけです。養子縁組にからんだ遺産相続についてもご存じではない方が多くいらっしゃると思いますので付言させていただけば、2人の子どもは妻の再婚相手と養子縁組したことによって、相続権が発生します。すなわち、元夫の実子である長男については、養子縁組されたことによって、実親と養親との2人の父親から遺産相続する権利を得ました。

この男性は離婚については、虚偽に提出されはしましたが、離婚を認めることにしました。しかし、もしこの男性が妻との離婚を望んでいない場合には、離婚無効の調停を家庭裁判所へ申し立てる必要があります。調停で相手が合意すれば、審判で離婚無効となります。しかし、もし調停で合意が成立しなければ、家庭裁判所に訴訟を提起する必要があります。

同居していても気づかれなかった妊娠

もう一つ不思議なケースを見ておくことにしましょう。

前述のケースは実質的には別居していたと言ってもいい単身赴任期間中に、妻が別の男性の子どもを出産し、結婚している夫婦の子どもとして出生届を出していた例でした。男性は、帰宅の頻度が極端に少なく、妻の生活についてきちんと把握できなかったため、妻が妊娠したり、出産したりということにまったく気がつかなかったというケースです。

部屋の中で腹を吸って妊娠中の女性
※写真はイメージです

これも確かに不思議なことですが、実は一緒に暮らしていても妻が別の男性の子どもを妊娠しているということに、出産間近でも気がつかないというケースがあります。

ケース2
〈年齢〉元夫:30歳代後半 元妻(母親):30歳代前半
〈職業〉元夫:会社員 元妻(母親):アルバイト
〈子ども〉長女:0歳
〈背景〉離婚して2カ月後に出産
子どもはまだ出生届が出されていない
〈経緯〉子どもの法定代理人親権者の母親から「親子関係不存在確認」の申立

2人は6年前に結婚し、半年前に市役所に離婚届を出して協議離婚しました。

元夫は、離婚して4カ月後に、家庭裁判所から一通の封書を受け取りました。それを開封して、そのなかの書類を見て驚愕しました。封筒には、確認のための問い合わせの書類が、元妻から家庭裁判所へ提出された「親子関係不存在確認」の申立書の写しとともに入っていました。

元夫は離婚の直前まで元妻と生活をともにしていたのですが、元妻が妊娠していたとはまったく気がつきませんでした。元妻は、離婚して2カ月後に子どもを出産していました。さらに、その子どもは自分の子どもではないとのことです。

妻から届いた申立書に書かれていたこと

元夫はいわゆるサラリーマンで、朝9時から5時までの勤務ですが、通勤時間が長くかかるため朝早くに出勤し、残業がしばしばありました。他方、元妻は夜にアルバイトをしており、2人の生活の時間帯はすれ違いで一致しない傾向がありました。そのため次第に顔を合わせても、簡単な言葉を交わすだけだったりして、意思疎通することが少なくなってきていました。

ウェディングケーキの配偶者は、新たな問題のためにお互いに背を向ける
※写真はイメージです

2人の間に子どもはいませんでした。確かに元妻は、仕事の都合で友人宅に泊まると言って、朝帰りすることはありましたが、自分としては元妻を信じており、通常の夫婦として家庭生活を営んでいると思っていました。ただ、過去数年間、性生活が途絶えていました。ただ、それは妻が夜に仕事をしており、深夜に帰宅したり、仕事で互いに疲れているためだと思っていました。

しかし、元妻の「親子関係不存在確認」の申立書には、申立理由として、婚姻が破綻しており、別居生活が過去数年間続いて、夫と会っていないため、2カ月前に出産した子どもは元の夫の子どもではないと記されていました。

親子関係不存在確認は認められず

そこで元夫は、回答書には、過去数年間性交渉はなかったため、出生した子どもは自分の子どもでないことを認めるが、ただ妻と別居中というわけではなかった、破綻状態だったとは思わないと記して、家庭裁判所へ返送しました。

裁判所としては、「親子関係不存在確認」は、男女の関係が完全に断絶していて会うことがなかったり、たとえ会ったとしても、まったく第三者的な会い方を屋外でしていたりというように、客観的に外形から判断して、男女の間で性行為がなされようがなく、そのことについて男女が合意しているという場合に、確認することができます。元夫の述べるところは元妻の述べるところとは大きく異なっています。元妻は帰宅していて、2人は離婚直前まで生活をともにしていたというのですから、「親子関係不存在確認」の要件を満たしておらず、手続を進めるわけにはいきません。

元夫側から嫡出否認を申立

ただ、元夫は生まれた子どもは自分の子どもではないということは断言しています。

鮎川潤『幸福な離婚 家庭裁判所の調停現場から』(中公新書ラクレ)
鮎川潤『幸福な離婚 家庭裁判所の調停現場から』(中公新書ラクレ)

そこで元妻からの「親子関係不存在確認」の申立を取り下げてもらって、元夫のほうから、この子どもは自分の子どもではないという申立、すなわち「嫡出否認」の申立をしてもらうことが可能であれば、そちらの手続に切り替えるほうが適切に対応できるのではないかということになりました。

幸い元夫は寛容な人で、その申し出にこころよく応じてくれましたので、この子どもについて、法律的に父親と推定される元夫の子どもではないということが確認され、次に実際の父親とされる男性とこの乳児との間でDNA鑑定を行って、父子関係を確認し、認知を行って、この子どもの無戸籍状態が解消されることとなりました。

1例目のケースでは単身赴任中とは言いながら実質的には別居状態に近いときに妻が妊娠し、夫とは別の男性の子どもを出産しています。しかし、同居していても妻が別の男性の子どもを妊娠し出産間近なことに夫はまったく気がつかないというケースもあります。これが2番目のケースです。

読者の方は夫婦関係の不思議さや、協議離婚の落とし穴に気がついていただくことができたのではないかと思います。また、離婚に関して思いもかけない多様なことが起こりうること、そして実際に起きていることについて認識していただけたことと思います。

鮎川 潤(あゆかわ・じゅん)
関西学院大学名誉教授
1952年愛知県生まれ。東京大学文学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科後期博士課程中途退学。博士(人間科学)。専門は、逸脱行動論、社会問題、少年非行、家族問題研究。金城学院大学現代文化学部教授、関西学院大学法学部教授のほか、家庭裁判所家事調停委員などを務めた。現在は、関西学院大学名誉教授。保護司、更生保護施設評議員、学校法人評議員、少年院視察委員会委員なども務める。主な著書に、『犯罪学入門』(講談社現代新書)、『新版 少年非行 社会はどう処遇しているか』(放送大学叢書、左右社)、『新版 少年犯罪――18歳、19歳をどう扱うべきか』(平凡社新書)など。

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