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五木寛之90歳が語る「講演」と「対話」の違い

  • 2023.7.13
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ふだんのおしゃべりが、あなたの脳を活性化する。

2023年7月10日、作家・五木寛之さんが「ラジオ深夜便」で話したことを本にする「人生のレシピ」シリーズ最新刊『人生のレシピ 幸せになる聞き方・話し方』(NHK出版)が発売された。今回のテーマは「対話」について。今回はその中から、五木さんにとっての講演と対話の違いについて紹介しよう。

「違った意見を交わす」問答を大切に

本書では、90歳になった五木さんが「生き方の先輩」として、人の話を聞くこと・語ることの大切さを説いている。五木さんによると、ブッダも孔子もソクラテスもイエス・キリストもみな肉声で語りかけ、人々はその言葉を聞いて覚えたのであり、文字は二次的なもの、つまり、人の口から語られた言葉を記録するための道具にすぎないという。

五木さんはさらに、同じ「語ること」でも、講演と対話には質的な違いがあるとする。講演が「人に向かって自分の考えを話す」ことであるのに対して、対話は「自分とは違った人と、違った意見を交わす」問答であり、これは空手で言えば演舞と試合の違いに相当するとされる。

仏教では歴史的に、このような問答がとても重視されてきた。かつて比叡山などの寺院で定期的に開かれていた討論は、敗れた側は山を下りなければいけないこともある苛烈なもので、決死の覚悟を持って行われていた。また、インドのナーランダ僧院にも古くは「問答場」があり、そこで言葉による真剣勝負があったという。

五木さんは、このような歴史から「問答というのがいかに大事なことか」がわかるとして、「違った意見の交換をするということが、ものすごく大切」であることを改めて説いている。

【目次】
第1章 対話の中に発見がある
第2章 面授の歓びを求めて
第3章 会話とはアートのようなもの
第4章 忘れがたい人々との思い出
第5章 真剣勝負こそが対談の魅力

■五木寛之さんプロフィール
いつき・ひろゆき/1932年、福岡県生まれ。朝鮮半島で幼少期を送り、引き揚げ後、52年に上京して早稲田大学文学部露文科に入学。57年に中退後、編集者、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門 筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞など受賞多数。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『下山の思想』『百寺巡礼』『生きるヒント』『孤独のすすめ』など。

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