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普通のモノは作らない「DOD」ブランドマネージャーが語るそのこだわりとは?

  • 2023.7.11

「DOD」ブランドマネージャー 寺田英志さん

「クレイジーな商品企画 兼 ブランドマネージャー」という肩書きのとおり、目新しくおもしろい商品を数々世に送り出している。愛称は「TERA」。宮城県仙台市出身で、アパレル系商社での企画営業を経て、2010年、「DOD」を運営するビーズ株式会社に入社。趣味はキャンプ、サウナ、ジョギングと、アクティブな毎日を過ごす、3児の父。

とにかく、おもしろくてワクワクするようなギアを作りたい。

――DODはどんなふうに始まったのでしょうか?

寺田英志さん(以下「寺田」):もともと弊社の中心は「ドッペルギャンガー」という自転車のブランドでした。その延長線上でアウトドア用品もやってみようと2008年に「ドッペルギャンガーアウトドア」というブランドが始まったんです。その2年後に私が入社しまして、商品を増やしたり、今のウサギのロゴに変えたり…。オリジナリティーを重視した商品ラインナップに変えていったのが2010年ぐらいからですね。

――ブランドのコンセプトを教えてください。

寺田:コンセプトは「Stay Crazy」。自分たちが作っていておもしろいもの、使っていてワクワクするようなものを中心に扱うという方向性です。

――アイデアは自由に通るのでしょうか?

寺田:そうですね。私が責任者なんですけど、一番変なものを作っているのが自分でして(笑)。なので、「変だから」という理由で通らなかったものはないと思います。でも、やっぱり売れないものもあるんですよね。おもしろいと分かっていても売れないだろうなっていうものも正直あります。ただ、これを出したらおもしろいと思ってもらえるだろうなという思いがブレないようにやっています。

「このロケットサブマリンフットバスは、そんなに売れないだろうと思いながらも、かなり試作をした思い入れがあります。利益にならないのに、たくさんのメンバーが集まって設計して、何回も温度を測りにいって…。夏だと気温的にテストにならないので、わざわざかなり標高の高いキャンプ場まで行ってテストしたりしましたね」

――おもしろい商品を作るにあたって、どんな決め方をしていますか?

寺田:商品の企画をやっているメンバーが数人いるんですけど、そのメンバーが欲しいと思ったものを作っていくという感じで。コンペみたいなことをやったりもするんですけどレアケースですね。たとえばですけど、他の企画のメンバーがいいな、やりたいって言って進めていくもので、私は欲しくないし、良いとも思わないっていうものもあります。でも、「本当にそれが欲しいか」と再確認して、欲しいのであれば進めます。

本当にそのギアが欲しいかどうかが開発の決め手。

――売れそうだからこれを作る、ではなくて、自分が本当にそれが欲しいかどうかが大切ということですね。

寺田:以前はマーケティングの本など、100冊以上を読んで勉強して、ペルソナマーケティングなんかもやっていたんですけど、それはどこまでいっても予測でしかなくて。こういう人がいて、今市場がこうなっているから、多分こういうものをこういう価格で出したら売れるだろうって、意外と当たらないんですよね。それより、自分が欲しいものを作れば、絶対に何人かは自分と同じ思考の人がいる。そのほうが当たるなって気付いたんです。

――そういう考えに変わるきっかけは何だったのでしょうか?

寺田:最初は「カマボコテント」で、おそらく初めて本当に欲しいものだったと思います。当時のDODとしては価格帯が高めのテントになったんですけど、それがとても売れたので、欲しいものを作ったら売れるんだなと気付きました。

「本当に欲しいものを作ったのがこのカマボコテントです。これぐらいの大きさで、ここにスカートがついてて、ポールの長さは全部一緒で、全部メッシュになってて…、みたいな欲しい機能を詰め込んで作りました」

――他にも寺田さんの「欲しい」から生まれた商品はありますか?

寺田:「タケノコテント」ですかね。その当時、子どもが2人いるときで、2番目の子がまだ小さくて、ハイハイしているような状態だったんです。その状態でキャンプすると、僕か妻のどちらかが抱っこしているか、子どもをインナーテントの中に閉じ込める感じになっちゃうんですよね。少し檻みたいな感じがして嫌だなと思って。だったら、寝るところも食べるところも一緒みたいな大きいワンルームで、常にみんな一緒に過ごせるテントがあったらおもしろいかなって作ったのが、タケノコテントですね。

「アツイッスという商品で言うと、焚き火にも座ってもらったらおもしろいんじゃないかなっていうところから始まっていて。この構造だったら、薪を置く所あるし、反射熱的にもすごく効果があるんですよ」

「数年前からハンモックキャンプが流行っていて、自分でもハンモックでキャンプしたいなと思って何回かやったんですけど、ハンモックのキャンプって結構場所を選ぶんですよね。ちょうどいい2本の木がないとできないですし。で、作ったのが完全自立するもの。これだったらどんな場所でもハンモックが使える。トゥリー(木)がいらないのでトゥリーイラヘンと名付けました」

「これはおもひでしゅらしゅらっていう寝袋で、もともとは封筒型の、わがやのシュラフっていうのがあるんですよ。でも上が開いているので寒いんですよね。じゃあ、顔だけ開けたら寒くないよねって。無地のバージョンを作ったんですけど、同じ企画のメンバーが「これ、顔はめパネルみたいにしたらおもしろいんじゃないか」って提案してくれまして、結果的にすごく面白い製品になりました。横から自撮り棒を出せるんですけど、全体撮るためにはかなり長い自撮り棒が必要なんですよ。シャッターは向こうの人の押してもらうわなきゃいけないとか、構図がどうだとか、寝袋に入って写真撮るだけで、ワイワイできて、こんなにエンターテインメントになるものないなと思っています」

テントは「家」を試すことができるもの

――数あるDODの商品の中で個人的なキャンパーとして買いたいものをあえて選ぶならどれになりますか?

寺田:自分が欲しいものを作っているので、全部欲しいものですが…。実際、めちゃくちゃ使っているのは「エイテント」ですね。家型のテントでセット使いにオススメなタープも販売しています。派手さはないんですけど、立てやすさ、使いやすさ、拡張性、収納性、どれを取ってもバランスがとても良いなと思います。

あとは「ツクツクベース」っていう5×5m弱のくらいの大きめテントがあるんですけど、1家族だけではなくて2家族同時にキャンプすることができるんですよ。しかも大きさのわりに立てるのが簡単。というところで、ツクツクベースは個人的にもかなり使っているテントです。

それともう1つ、これもテントになんですけど「レンコンテント」です。手前みそで恐縮なんですけど(笑)、革命的なテントだなと思っています。あんなにテントに穴を開けるってあまりしないと思うんですよ。冬にあのテントの中で焚き火をすると、熱が逃げないような高さを設計しているので暖かいですし、でも、煙は上に逃げてくから、冬キャンプの醍醐味感を感じられるかなと思っています。

――全部テントでしたね。

寺田:テントって、言ってみれば、家じゃないですか。自分の家を何個も作るわけにはいかないですけど、テントだといろいろな種類を試せて、それによってキャンプの仕方が変わるんですよね。家を試せると言いますか…。カマボコテントとタケノコテントでは全然違うキャンプスタイルと雰囲気になりますし、それが面白いなと思っています。テーブルとかチェアを作るのも楽しいんですけど、それが違っても、劇的には変わらない。テントが変わるとスタイルがガラッと変わるので。

多様化することでキャンプシーンの裾野が広がってほしい

――キャンプに目覚めたきっかけを教えてください。

寺田:子どものときはキャンプをほとんどしたことがなかったんですけど、大学生のときにバックパッカーをしてまして、そのときに安く泊まるための手段として、テント泊をしていた時期がありました。そのときはまさかアウトドア業界で仕事をするとは思ってなかったですね。でもそれで目覚めたわけでもなかったかな(笑)。おもしろいなって思い出したのは仕事を始めてからですかね。

――キャンプの醍醐味は何だと思いますか?

寺田:アクシデントがつきものだと思うんです。何かを忘れたとか、火がつかないとか、テントが壊れたとか。何かしらとあると思うんですよ。でもその不便を楽しむために来てると思うんです。アクシデントをみんなで乗り越えていくところがおもしろみですよね。

――実際に起きたアクシデントとは?

寺田:バーベキューしようと思っていたのに炭を持っていくのを忘れて、薪しかない。薪で肉を焼けるのか不安でしたが、やってみたらちゃんと焼くことができたり。去年、春先のまだ寒い時期に家族でキャンプに行ったときには、持っていった灯油ストーブが壊れてたんですよ。煙しか出なくて。しかも2泊3日のキャンプ。1人だったらなんとか寒さを耐え忍んだりするんですけど、子どもたちもいるし、どうしようかなと思って。タープの生地でファイヤーリフレクターのようなものを作って、その前でずっと焚き火をしてその熱を反射させて、ぎりぎりなんとか…。ずっと焚き火をしていることになるので、子どもたちは「けむい」とか文句を言うんですけど(笑)、それなりに寒さをしのげましたね。そういう工夫が楽しんじゃないかなと。

――なぜ今、アウトドア人口増えていると思いますか?

寺田:この2、3年増えたのは、コロナ禍の影響が大きいでしょうね。コロナで他のレジャーができなくなってキャンプするという方がほとんどなので。

あとは、本来の人間さしさを取り戻すと言いますか…。インターネットやSNS、ゲームもそうですけど、とても便利な世の中になってきて、とにかく効率を求めていっていますよね。そうすると、キャンプって、本当は必要ないもののはずなんです。でも始める人が増えているということは、本能が自然を求めているところもあるんじゃないかなと思っています。

2023年2月に新社屋「DOD BASE」が完成。テント設営をできる広大なフロアやカフェテリア、焚き火検証スペースなどを備え、より面白いアイデアが生まれやすい環境に!

――そんなキャンプシーンですが、これからどういうふうになっていってほしいか、考えることはありますか?

寺田:私たちがアウトドアのギアを作り始めたときは、かなり画一的なキャンプのされ方でした。キャンプ場に行っても、ほとんどがコールマンの「タフワイドドーム」とスノーピークの「アメニティドーム」。一部の方が並行輸入とかで手に入れたノルディスクさんのテントを使っているくらいで、使うものにあまり種類がなかったと思うんです。

ただ今は、私たちのDODも含めて、幅が広がっていて。ガレージブランドさんもかなり増えていますし、仕事上、情報は押さえているはずなのに「あれ、見たことないぞ、このテント」ということもあるんです。そうやってもっと多様化していくと、個人的には楽しいなと思いますね。DODにとってそれが良いか悪いかは微妙なところですが(笑)。

――もっと自由に楽しむべきだと。

寺田:そうですね。この何年かの傾向だと、おしゃれに、スマートに、快適に、みたいなところがあったと思います。「キャンパーっておしゃれじゃないといけないんでしょ」みたいな風潮も。でも、そんなおしゃれなキャンプにお腹いっぱいになっている方もいると思うんですよね。かっこいいコップのためにいいお値段を払ったり…。

もちろん、それはそれでいいと思うんですよ。おしゃれにお金かける方がいるのもいいですし、思い思いの楽しみ方をするべきだと。いかに安くキャンプできるかっていうテーマでもいいと思いますし、いかに物を少なくキャンプするかでもいいし、リッチさを極めるようなキャンプでもいいですしね。そんなふうに多様化することで、裾野が広がって、市場も広がっていくと、みんなハッピーなんじゃないかなと思っています。

撮影/鞍留清隆

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