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恩田陸『鈍色幻視行』と作中作『夜果つるところ』がW重版 どっちから読む?

  • 2023.7.9

2023年5月26日に発売された恩田陸さんの小説『鈍色幻視行』(集英社)と、その作中作として6月26日に発売された『夜果つるところ』(集英社)が、揃って重版される。『夜果つるところ』は7月20日頃から、『鈍色幻視行』は7月31日頃から重版分が店頭に並ぶ。

著者初の「本格的メタフィクション」

『鈍色幻視行』は15年の連載期間を経たミステリ・ロマン大作。そして『夜果つるところ』は、『鈍色幻視行』に登場する作家・飯合梓が遺した"呪われた小説"という位置づけである作中作を単行本化したもの。「本格的にメタフィクションをやってみたい」という著者渾身の挑戦作で、どちらも独立した物語だが、2冊あわせて読むと作品の世界観をより深く堪能できる。

また、『夜果つるところ』は単行本では珍しいリバーシブルカバー仕様で、紙の本ならではの仕掛けが施されている。

「呪われた小説」をめぐるクルーズ旅行

三たび映像化が試みられたが、いずれも不慮の事故で中止となり、作者も失踪してしまった"呪われた小説"『夜果つるところ』。小説家の蕗谷梢(ふきや・こずえ)は、この小説を題材にした作品を書くために、夫の雅春(まさはる)とともにその関係者たちが集まるクルーズ旅行に参加した。

船上では、映画監督、プロデューサー、映画評論家、担当編集者、漫画家など、この小説にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語りだす。作者は死んだのか? 撮影現場での事故は本当に偶然だったのか? 2週間にわたる旅の最後に、梢がたどり着いた「真相」とは...?

読む順番は「刊行順で」

刊行にあわせて公開されたインタビューによると、恩田さんは以前から「密室状態の場所で登場人物が会話をしているだけのシチュエーションで構成された長編」を書きたいと考えていて、それが本作に結実したという。

また、作中作である『夜果つるところ』は『鈍色幻視行』連載開始当時には書いておらず、その連載の中断中、約1年かけて手がけたもの。その後『鈍色幻視行』連載に戻る前に『夜果つるところ』を客観的に読んだことがきっかけで、作品後半は登場人物たちが自分の『夜果つるところ』の読解を話すことが中心になったという。

さらに、2作を読む順番についても回答。「どちらを先に読むべきか」を聞かれた恩田さんは「そこは刊行順で」と答えている。『鈍色』を先に読み、「呪われた原作ってどんなものなんだろう」と想像してから『夜果つるところ』を手に取るのが「いちばん楽しめるのではないかと思います」とのことだ。

■恩田陸さんプロフィール
おんだ・りく/1964年生まれ、宮城県出身。92年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作に選出された『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門、07年『中庭の出来事』で山本周五郎賞、17年『蜜蜂と遠雷』で直木三十五賞と本屋大賞を受賞。ミステリ、ホラー、SFなど、ジャンルを越えて多彩な執筆活動を展開する。他の著書に、『スキマワラシ』『灰の劇場』『薔薇のなかの蛇』『愚かな薔薇』『なんとかしなくちゃ。青雲編』など多数。

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