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「近年稀に見る傑作」 桐野夏生が絶賛した鈴木涼美『浮き身』

  • 2023.7.8

2023年6月29日、鈴木涼美さんの新作小説『浮き身』(新潮社)が発売された。文芸誌「新潮」2023年4月号に発表されたもので、発売に際して、作家・桐野夏生さんが書評で「近年稀に見る傑作」と激賞。島本理生さんも「19歳の居場所なんて 、無意味なほど良かった。本書を読み、思い出した。」と推薦コメントを寄せている。

鈴木さんは、修士論文を書籍化した『AV女優の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)でデビューし、2022年には小説「ギフテッド」で芥川賞候補となるなど、マルチに活躍する作家。第二作『グレイスレス』も芥川賞候補となり、今作は3作目となる。

デリヘルで手っ取り早く金儲けを企む男たちや、デリヘルで働きたい女たちが通う「部屋」。大学生の「私」はそこで働くわけでもなく、経営に加わるわけでもなく、「この部屋にいる限り、少なくともしばらくは何者にもならずに済む」と、苦いモラトリアムを過ごしていた。

桐野さんは新潮社のPR誌「波」で、本作を「怖ろしく空疎な『性』の物語」と表現。「昨今、これほど凄みのある作品を読んだことはない」「近年稀に見る傑作」と、性に伴うはずの精神を排除した「性」を描くことに成功した点を賞賛している。

■鈴木涼美さんプロフィール
すずき・すずみ/1983年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒。東京大学大学院修士課程修了。小説第一作『ギフテッド』が第167回芥川賞候補、第二作『グレイスレス』が第168回芥川賞候補。著書に『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『愛と子宮に花束を 夜のオネエサンの母娘論』『おじさんメモリアル』『ニッポンのおじさん』『往復書簡 限界から始まる』(共著)『娼婦の本棚』『8cmヒールのニュースショー』『「AV女優」の社会学 増補新版』などがある。

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