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連載エッセイ|#ijichimanのぼやき「煙草と酒と美味いメシ」

  • 2023.7.7
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筒井康隆の「最後の喫煙者」という短編小説をご存じだろうか。“健康ファシズム”が暴走・拡大し、煙草屋は村八分に、喫煙者は差別・脅迫・私刑され、メディアや警察や自衛隊までもが喫煙者を排斥しようと国家的に弾圧し、世の中が魔女狩りのごとくヒステリックになっていく様を、地球最後の喫煙者となる主人公の視点で描いた作品。1995年には人気TV番組「世にも奇妙な物語」でもドラマ化されているが、発表されたのは今から35年以上も前、1987年。

連載エッセイ|#ijichimanのぼやき

第49回「煙草と酒と美味いメシ」

筒井康隆の「最後の喫煙者」という短編小説をご存じだろうか。“健康ファシズム”が暴走・拡大し、煙草屋は村八分に、喫煙者は差別・脅迫・私刑され、メディアや警察や自衛隊までもが喫煙者を排斥しようと国家的に弾圧し、世の中が魔女狩りのごとくヒステリックになっていく様を、地球最後の喫煙者となる主人公の視点で描いた作品。1995年には人気TV番組「世にも奇妙な物語」でもドラマ化されているが、発表されたのは今から35年以上も前、1987年。

Photographs and Text by IJICHI Yasutake

連載エッセイ|#ijichimanのぼやき「煙草と酒と...
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三好苑:川崎

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作品が発表された当時、どこまで未来(現在)のことを想像していたかはわからないけど、“国家的弾圧”とまでは言わないまでも令和になって喫煙者の肩身が相当狭くなったのは間違いないだろう。街中で喫える場所は減り、飲食店も減った。以前は、街に根付いた昔ながらの純喫茶、町中華、町焼肉、町寿司は喫えたもんだったが、数年前に受動喫煙なんちゃら法が施工されて以降、多くの店が禁煙になった。夜の繁華街で2軒目の店を探して歩いていると、煙草が喫えることを謳い文句に客引きする店は多い。なんだかんだそれだけニーズがあるということだろう。とはいえ、客引きをしているような居酒屋(失礼)、あるいはバーなどはまだそれなりに喫える店はあったとしても、美味いメシと酒を出してしっぽりできるような店で喫えるというのは、ごくわずか。

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あびる食堂:下北沢

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月山:三軒茶屋

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「(酒を)飲むと(煙草が)喫いたくなる」というのはよく聞く話(ちなみにその逆は聞かない)。禁煙して何年も経っているのに酒の席でだけは喫っちゃうという人は案外多い。煙草と酒の相性がなぜ良いのかという科学的・客観的なデータやエビデンスは調べてみたけどなさそう。ただ「酒がすすめば煙草もすすむ」それは多くのサンプル数が示しているように紛れもないファクト。美味いメシを食うと酒がすすむ、酒がすすむと煙草がすすむ。美味いメシはたいがいハイカロリーであり、塩分・糖分・脂分もハイ。はっきり言って肉体的にはよろしくない。さらにそこにアルコールとニコチンが加わるのだから、肉体的な負担はさらに増えてサイアクだ。だが、美味いメシと酒と煙草は、そのひと時がリラックスタイムになるし、イヤなことを忘れられる楽しいひと時にもなりうる。精神的にはサイコーだ。

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すみれ:江戸川橋

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すし徳:神田

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喫煙者の中には、店を選ぶ時、「喫える店ならどこでも良いっしょ」という人も一定数いるけれど、決してそれは最優先すべき指標ではない。研鑽を積んだ料理人が、素材にこだわり、腕をふるって出してくれる食事。店内が明るく賑やかで、来ているお客さんも笑顔があふれていたり、時には酔った勢いであつい議論を交わしていたり。それは喫煙だろうが禁煙だろうが同じでいちばん大切なこと。喫煙OKにすれば集客できるだろうという意図ではなく、喫煙客にも美味しい食事をゆっくりと楽しんでもらおうという想いがゆえに、喫煙OKにしている店に行きたい。美味い肉をキンキンに冷えたビールで流し込んで一服。美味い魚をぬる燗で流して一服。美味いメシと美味い酒の後に、極上の紫煙をくゆらせる。そんなスタイルで楽しみたい。

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■奈加野 東京都渋谷区宇田川町31-3 2F
本連載で以前紹介している渋谷の騒がしさから離れてしっぽり飲める酒場、奈加野。煙草が喫える喫えないに関わらず、渋谷で旨い魚を食べたければここは間違いない。鮮度の高い刺し盛りから、焼き魚、名物鯖の押し寿司まで。魚が有名だけど実は肉も旨くて、チキンの照り焼きなんかは火入れも絶妙。ランチもやっていて海鮮丼や焼き魚定食、生姜焼き定食など各種揃っている。喫煙可能な店に行くと、ここぞとばかりにスパスパ喫いまくる節度のない人もたまに見かけるけど、ここは大人の店だからそういう人もいない。大人が渋谷で飲める店は少ないし、美味しいメシと魚の店もなかなか思い浮かばないけど、ここは嫌煙家には申し訳ないと思うほど、誰を連れていっても間違いない。

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■しんばし和寿 東京都港区新橋3-11-1 イーグル烏森ビル2F
こちらも以前より何度か紹介している新橋の酒場、しんばし和寿。新橋の雑多な雑居ビル群のとあるビルの2F、知らないと気づきにくい店構えだが、新橋・汐留の広告代理店やTV局の古株たちが通う、いかにも新橋の酒場然とした、大衆酒場のようで本当の酒好きが集う店。すっぽんや河豚が人気だけど、普段は魚をつまみに飲むのも良い。老年のオヤジが二人で、落ち着いた妙齢の女性が二人で、なんてシーンにもよく遭遇する。刺し盛りをつつき、煮つけをほぐし、日本酒をグイっと流し込んで、煙をくゆらせながら、くだらない話に華を咲かせたい。

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■焼肉やまだ 東京都台東区上野2-2-8
上野というより御徒町、上野広小路。この界隈には焼肉屋が集結していて、どこも夜遅くというか朝早くまでやっている。この店もオープンは5:00(夕方)、閉店も5:00(朝)という気合の入りよう。ハッピーアワーは夜9:00まで。いつ行っても満席で賑わっている様が物語るように、肉はどれもハズレがなく安定して美味い。センマイ刺しやコブクロ刺しが美味い店は肉も間違いというのが持論だが、それを地でいっている。客の大半は男性。モクモクの店内で肉という肉を焼き、ビールを流し込み、サワーを流し込み、ハイボールを流し込む。これこそ昔ながらの焼肉スタイル。帰ったら、着ていた洋服はすぐ脱ぎ捨てて丸ごと洗濯機にぶち込んで速攻シャワーを浴びる覚悟で、存分に煙を楽しもう。

伊地知泰威|IJICHI Yasutake
1982年東京生まれ。慶應義塾大学在学中から、イベント会社にてビッグメゾンのレセプションやパーティの企画制作に携わる。PR会社に転籍後はプランナーとして従事し、30歳を機に退職。中学から20年来の友人である代表と日本初のコールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース」の立ち上げに参画し、2020年9月まで取締役副社長を務める。現在は、幅広い業界におけるクライアントの企業コミュニケーションやブランディングをサポートしながら、街探訪を続けている。好きな食べ物はふぐ、すっぽん。好きなスポーツは野球、競馬。好きな場所は純喫茶、大衆酒場。
Instagram:ijichiman

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