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日経新聞"マジ読み"で見えた「遅くとも1年後に日経平均3万8915円」、その後「5万2000円」も夢ではない

  • 2023.7.5

日本経済新聞はビジネスパーソンに欠かせない存在だ。読み方によっては投資のヒントを得ることができる。複眼経済塾の渡部清二さんは「最近の新聞記事からジャポニスムの再来を確信している。その結果、日経平均株価は5万2000円に到達する可能性もあるだろう」という――。

株価チャートをノートパソコンとスマホで見る男性
※写真はイメージです
「投資の三種の神器」で投資すべき企業を見つける

私が主宰する複眼経済塾では、「身近な気づき」から投資すべき企業やテーマを見つけることを教えています。そのために活用しているのが「投資の三種の神器」です。これは、私が証券会社で働いているときに先輩から授けられたものです。

投資の三種の神器とは次の3つです。

1 『四季報』読破
2 日経新聞の切り抜き
3 指標ノート

『四季報』の読破や指標ノートについては別の機会に紹介したいと思いますが、いずれも「誰でもいつでも始められる」という特徴があります。とくに日経新聞の切り抜きは日々、さまざまな投資のヒントを与えてくれます。

この記事では、私が最近、日経新聞から切り抜いた記事から見えてきた、新たな動きについて紹介します。キーワードはジャポニスムの再来です。

注目すべきテーマは「ジャポニスムの再来」

ジャポニスムの再来とは日本回帰のことですが、当塾では2015年ごろから「ジャポニスムの再来」を大きなテーマとして掲げてきました。それがいよいよ本格化しつつあることが最近の新聞記事から読み取れます。これは日本の株価を大きく押し上げることにつながります。

その結果、日経平均株価は早ければ、今年12月に、遅くとも来年の7月までには、1989年12月の最高値である3万8915円を超える可能性があると考えています。同時にニューヨークダウは本格的な下落に転じ、20年程度は復活しないことも起こりうると見ています。ジャポニスムの再来によって日本への資金シフトが始まっているからです。

具体的に見ていきましょう。

たとえば、6月14日の日本経済新聞に「ゼンショーHD、米英すしチェーン買収 M&A 最高額874億円」という記事が掲載されました。ゼンショー(7550)が買収したのは北米や英国で、すしチェーンを手掛けるスノーフォックス・トップコで約3000店の持ち帰り寿司店を展開しています。また、食品スーパー向けのすし卸し売り事業も手掛けています。

ゼンショーは海外の日本食事業を拡大

このM&Aによってゼンショーはアフターコロナで回復が期待される海外の外食事業を拡大します。寿司をはじめとする日本食は外国人の間でブームになっていますし、日本へ旅行に来る目的の一つにもなっています。外国人が絶対に食べたいと思う日本の珍味は「ウニ」「うなぎ」「ふぐ」だといいます。

それに対応するためかどうかはわかりませんが、とらふぐ料理専門店の「玄品ふぐ」などを展開する関門海(3372)は、うなぎの提供を開始するそうです。さらにウニを提供すれば、インバウンド向けに最強の店になると私は思います。

こうした日本ブームと同時に、日本企業の躍進を想像させる記事も多くみられるようになっています。

トヨタが本気を出せばテスラなど敵ではない

たとえば、6月13日の日本経済新聞に「トヨタ、27年にも全固体電池EV投入 充電10分で1200キロ 量産技術の開発急ぐ」との記事が掲載されました。現在、EV(電気自動車)に利用されている電池は、液体リチウムイオン電池が主流ですが、製造がしやすい反面、充電するのに時間がかかる、航続距離が短いなどの難点があります。

これに対して、全固体電池は、小型で充電時間が短く、航続距離が長いというメリットがあります。全固体電池の研究開発で先行するトヨタ自動車は、すでに1000以上の関連特許を持っています。

その成果として2027年にも全固体電池を搭載したEVを市場に投入するというのです。それが実現すれば、10分以下の充電で1200キロメートルを走行できるというのですから驚異的です。トヨタが本気を出せば、テスラをEV市場から追い出す破壊力を持っているのではないでしょうか。

トヨタ北米本社
※写真はイメージです
世界首位のヘッジファンドが15年ぶりに日本拠点設置

実は日本の自動車産業に期待している運用会社は少なくありません。運用成績で世界首位のヘッジファンド、米シタデルもその一つです。6月14日の日本経済新聞には「日本株 消費・車に照準 米シタデル、15年ぶり日本再進出 『次なるソニー』期待」との記事が掲載されました。

同社は2008年まで東京にオフィスを構えていましたが、リーマンショックで大きな損失を出し、リストラの一環として東京拠点を閉鎖しました。その後は、日本国外に運用担当者を置き、日本株への投資を続けてきました。

そして今回、15年ぶりに日本再進出を決めたのです。運用において日本株の重要性がそれだけ増してきているということでしょう。

記事によると、同社の創業者で共同最高投資責任者のケン・グリフィン氏は急激な電気自動車(EV)シフトが進む自動車業界で日本メーカーの動向に関心を示しているといいます。また、「適度なインフレ率に向けて正常化する兆しがみえる」とも指摘しています。

私自身も6月中旬から世界の投資マネーがいよいよ日本に入り始めたと感じています。

もはや英語の勉強は不要になった

お金だけではなく、人も日本に集まってきます。

6月6日の日本経済新聞に「生成AIの衝撃と教育(下) 英語学習の見直し不可避 金丸敏幸・京都大学准教授」という記事が掲載されました。

ニューヨーク大学経営大学院の研究によると、生成AIの影響を受ける職業のトップ3は、1位はテレマーケター、2位が国語教師(米国なので英語、英文学の教師)、3位は外国語教師だそうです。

金丸准教授は、AIが普及して自動翻訳の精度が高まると、英語を学ぶ必要性を感じる人は少なくなっていく、といいます。私自身も生成AIが登場するはるか前に語学の勉強は必要なくなると考えて、早々に見切りをつけていましたが、いよいよそれが現実になるのです。

それによって日本はどうなるか。6月10日の日本経済新聞には「特定技能の長期就労、全12分野に拡大 外国人材、製造・外食も 人手不足解消急ぐ」との記事が掲載されました。

入管法改正で日本好きの外国人が押し寄せる

人手不足を解消するために外国人材をどんどん受け入れようというのです。同じ日の日本経済新聞には「改正入管法が成立 紛争地から避難、『準難民』制度創設 不法滞在者の強制送還、より厳格に」という記事も掲載されています。

これは事実上の移民受け入れです。日本に外国人は増えていくわけですが、前述のように生成AIによって英語は必要なくなる。つまり、日本人は英語をしゃべりませんから、外国人材は日本語を学ばなければなりません。

日本語を学ぶのがいやな外国人は日本へ来ないかもしれませんが、日本が大好きな外国人は数多くいます。これまで日本人が海外に合わせて英語を学んできましたが、これからは海外の人が日本に合わせるようになると考えます。

しかもいまの日本の技術は、最先端レベルです。半導体はもちろんですが、生成AIでもトップになる可能性があります。

6月11日の日本経済新聞には「生成AI開発、政府が支援を 松尾豊・AI戦略会議座長 GAFAMとの競争、インフラ整備必須」との記事が掲載されました。政府の「AI戦略会議」で座長を務める松尾豊東大教授は、日本経済新聞のインタビューで、国内での生成AI(人工知能)開発に必要となる設備の整備を「政府がインフラ投資として支援すべきだ」と述べたというのです。

マイクロソフトが日本初の拠点を設ける目的とは

同じ日の日本経済新聞には「Microsoft、神戸に日本初のAI・IoT開発拠点 中小のDX支援」との記事が掲載されました。日本初です。

少し前の6月7日には、政府は「新しい資本主義」の実行計画改定案を公表し、脱炭素やデジタル化を打ち出しました。それを受ける形で松尾准教授の「政府が支援すべきだ」との考えを示し、マイクロソフトが日本の初拠点発表につながるのです。

松尾准教授は、マイクロソフトが日本を狙っていることに対して、警鐘を鳴らしているのはないでしょうか。

日本ブーム、投資マネーの日本へのシフトによって、日本の株価はどうなるでしょうか。1929年の世界大恐慌でニューヨークダウが暴落しましたが、そのときの動きと、1989年12月にピークをつけた日経平均株価のその後の動きが非常に似ています。

ニューヨークダウは暴落前の水準を回復するのに25年2カ月かかりました。1929年9月に381ドルでしたが、1932年7月に41ドルまで下がったのです。下落率は89%です。

日経平均株価は5万2000円も視野に

一方で1989年12月の日経平均株価は3万8915円でしたが、2009年3月に7054円まで下がっています。下落率は約81%でニューヨークダウの下落率と似ています。面白いのは当時のニューヨークダウに100をかけるとおおよそ現在の日経平均株価になります。

ニューヨークダウは暴落前の水準に戻るのに25年2カ月かかっています。不思議なことに、このときのニューヨークダウ381ドルに100をかけると現在の日経平均株価になります。ニューヨークダウはその後の1年強で、さらに大きく上昇しています。

日本の場合は、1989年の高値からすでに33年半経っていますので、少し時間がかかっていますが、遠からず最高値を更新すると考えられます。その後、どのくらいまで上がるかの判断は難しいのですが、ニューヨークダウは521ドルまで上がりました。これを日本に当てはめると5万2000円となります。下落幅の倍返しの水準です。

こんな株価水準を語ることが、決して夢物語ではない時代が、到来しつつあると私は考えています。

今回はジャポニスムの再来をキーワードに新聞記事をチェックしてみましたが、記事の内容を素直にそのまま理解するだけでなく、「こんな展開があるかもしれない」と連想を広げていくことが銘柄選択の幅を広げることになります。

渡部 清二(わたなべ・せいじ)
複眼経済塾 代表取締役・塾長
1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券入社。個人投資家向け資産コンサルティングに10年、機関投資家向け日本株セールスに12年携わる。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読む「四季報読破」を開始。20年以上の継続中で、2022年秋号の会社四季報をもって、計100冊を完全読破。2013年野村證券退社。2014年四季リサーチ株式会社設立、代表取締役就任。2016年複眼経済観測所設立、2018年複眼経済塾に社名変更。2017年3月には、一般社団法人ヒューマノミクス実行委員会代表理事に就任。テレビ・ラジオなどの投資番組に出演多数。「会社四季報オンライン」でコラム「四季報読破邁進中」を連載。『インベスターZ』の作者、三田紀房氏の公式サイトでは「世界一「四季報」を愛する男」と紹介された。著書に、『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SB新書)、『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』(東洋経済新報社)、『「会社四季報」最強のウラ読み術』(フォレスト出版)、『10倍株の転換点を見つける最強の指標ノート』(KADOKAWA)などがある。

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