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訪ねておくべき名店の味。ホテル雅叙園東京の中国料理「旬遊紀」で美術と美食を満喫

  • 2023.7.4

東京目黒にあるスモールラグジュアリーホテル「ホテル雅叙園東京」。館内には日本料理やイタリアン、カジュアルダイニングを用意するほか、ひときわ異彩を放つのが中国料理「旬遊紀(しゅんゆうき)」です。現存する最も古い回転テーブルがあるお店としてメディアで紹介されるなど、仕事の接待や大切なお客様のおもてなしにも使われる名店となっています。

90年の歴史がある中国料理の名店

ホテル雅叙園東京の玄関を入り、広々とした優雅な廊下を100m以上歩いた先にあるのが中国料理「旬遊紀」。昭和6年(1931年)、創業者の細川力蔵が、実業家だった岩永省一邸と、そのまわりの広大な土地を入手し、造改築を経て料亭「目黒雅叙園」を開業。日本料理や本格的な北京料理を提供したのが「ホテル雅叙園東京」の始まりです。

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▲ホテル内にある中国料理「旬遊紀」の重厚な入口

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▲入口の天井に飾られた木彫版

日光東照宮の鳴龍を描いた日本画家、堅山南風の原図を元にした立体木彫板で、口を開けた龍と口を閉じた龍が阿吽(あうん)になっています。

贅を尽くした特別個室

中国料理「旬遊紀」には4部屋の特別個室を用意します。そのうち2部屋は大正元年(1912年)に建てられた旧岩永邸の部屋を移築したもので、鹿鳴館(1883年竣工)や東京駿河台のニコライ堂(1891年)を手がけ、多くの日本人建築家を育成したイギリス人建築家ジョサイア・コンドルの設計です。昭和6年に料亭として開業して以降、絢爛豪華な内装に造りかえられました。1991年にホテル雅叙園東京を改築した際移築して現在に至ります。

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▲当初は畳敷きだった個室に合わせ、ひざまづいて扉の開け閉めができるよう、ノブが低い位置に造られています

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▲「南風」

旧岩永邸の部屋は出窓が曲面になっていて、当時カーブを描いた建築物は珍しく、職人泣かせだったと伝わります。目黒雅叙園となった当初は社長室として使われ、のちに金箔が張られ堅山南風(かたやまなんぷう)の絵が施され、天井には夏の花を描いた9点の丸い立体木彫板を取り付けました。漆塗りの回転テーブルは、螺鈿で鳳凰の姿がほどこされた豪華な作りです。

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▲こちらも旧岩永邸の部屋だった特別個室の「玉城」

画家の益田玉城(ますだぎょくじょう)の美人画が描かれます。新橋芸者の “東をどり”がモチーフになっていて、女性がすべて似た顔をしているのは、愛妻家だった玉城が夫人をモデルにしたからと言われます。

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▲玉城が描いた花笠を被った女性たち

当時は珍しい腕時計や指輪をした女性が描かれています。昭和初期は懐中時計が主流で、着物姿で腕時計をするのも珍しく、玉城があえて見せたかったのではないかと言われています。

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開業当初は着物で食事をすることが一般的で、中国料理の流れを組んで無数の皿を並べる長崎の卓袱(しっぽく)料理で、遠くの料理を取りやすいよう回転テーブルが考案されたと言われます。中でもこの「玉城」にあるものが、現存する最古の回転テーブルです。今でも会食に使われていて、滑らかな動きに驚かされます。

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▲草花の絵がほどこされた回転テーブルの螺鈿細工。一部タバコの焦げ跡を修復せずに残しているのも、歴史を伝える試みです

「南風」と「玉城」は個室利用できるほか、毎週月、火、木(祝日をのぞく)に開催される宿泊者限定の「雅叙園アートツアー」で見られます。

美味しいシャンパンと前菜を満喫

中国料理「旬遊紀」には個室やテーブル席があって、コース料理やアラカルトをいただけます。総料理長は2023年春に黄綬褒章を授与された近藤紳二シェフ。今回はコース料理を紹介します。

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▲一般フロアも回転テーブルになっています

乾杯はシャンパーニュで。「ジャカール モザイク ブリュット」は、キリっとしたドライな味わいで、食事の始まりを華やかに彩ってくれました。

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▲乾杯酒にはシャンパンをチョイス

はじめに運ばれる冷前菜の盛り付けは、紹興酒漬けの蟹味噌、クラゲの冷菜のトリュフ風、カラートマトの酢漬、蒸し海老、穴子の煮凝り、ネギソースのかかった牛タンの冷菜です。

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▲それぞれ異なる味わいや食感を楽しめる「特製冷菜懐石飾り」

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▲グラスには紹興酒に漬けた蟹味噌がたっぷり入り、レモンを絞ってさっぱりといただきます

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▲色鮮やかな小鉢には夏が旬の穴子の煮凝りが盛りつけられ、金箔を散らしてきらびやか

「大海老の雲丹ソース」は、濃厚で旨味タップリの雲丹の味を堪能。プリっとした大きな海老と、そら豆やゆり根などのホクホクの野菜が美味しかったです。

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▲「大海老の雲丹ソース」

北京ダック、魚、メインの肉料理

中国料理の王道ともいえる北京ダックや、手の込んだ魚料理、さらにメインディッシュは、甘味や辛味、酸味などの複雑な味が口に広がる肉料理が続きます。

肉料理にあわせて「鉄観音茶」をいただきました。常に適温に保たれるように、器の下にはロウソクが灯ります。差し湯も可能で、何度かお湯を補充して飲むことができます。

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▲口の中がさっぱりする「鉄観音茶」

北京ダックは切り分ける前に各テーブルを巡って、間近で鑑賞。その後店内の一画で、手慣れたスタッフが切り分ける様子を見られます。

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▲「特製窯焼き窯出し北京ダック」

北京ダックは、セットの付け合わせも印象的な味ぞろい。薄餅の上に北京ダックをはじめキュウリや葱をお好みで加え、ガーリックチップや杏子のジャムでいただきます。味付けや盛り付けはお好みですが、さっぱりいただけるキュウリやネギをたっぷり盛るのがおすすめ。梅ソースの酸味も楽しめます。

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▲北京ダックの2種類のソースは、濃い味を楽しめる烤鴨醬(甘味噌)と、さっぱりとした梅生姜

魚料理は、赤唐辛子と青唐辛子、細切りネギを、蒸したクエの上にトッピングして、一度油をかけた後、パクチーをのせた一皿。クエの身が柔らかく、葱油を使ったソースに合わせながらいただきました。

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▲「クエの蒸し物」はトッピングした野菜がアクセント

肉料理は「和牛肉のマンゴー巻き」。驚くほど甘いマンゴーの果汁がジュワっと広がり、香辛料の効いた和牛の旨味や、お皿に敷いた「朝天ソース」の酸味や辛味など、様々な味や風味を楽しめます。付け合わせの野菜や揚げた唐辛子、カシューナッツは、食感と味のアクセント。多彩な味つけの妙味が余韻に残る一皿です。

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▲「和牛肉のマンゴー巻き 朝天ソース」

締めの食事とデザート

締めの料理は3種類のご飯と3種類のそばから好きなものを1点選びます。この日は「麻婆かけご飯」「豆乳担々麺」「春菊ワンタン入りつゆそば」「高菜と細切り豚肉のつゆそば」「野菜のあんかけ焼きそば」「スーラータン麺」から選べて、そのうち2皿を紹介します。

「豆乳担々麺」は、二度挽きした炒り胡麻と豆乳の、ドロリと濃厚なスープが細麺によく絡みます。胡麻の滑らかさはもちろん辛味もあって、濃厚な風味を存分に楽しめる美味さです。

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▲本日のお食事のひとつ「豆乳担々麺」

「麻婆かけご飯」は、旨味タップリの中に山椒の痺れなど、本場の美味しさを味わえる一品。ひき肉もたっぷりはいったスパイシーな味わいです。もちろん、ここに紹介した2品以外も気になって迷いました。通ってみたくなるお店です。

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▲「麻婆かけご飯」も本日のお食事のひとつ

デザートは、異なる2つの味を楽しめます。「杏仁アイス」には岩塩とエクストラバージンオイルがかかり、甘さ控えめで、アクセントの塩味がさっぱりとした後味を残します。飲茶はカスタード饅頭でした。※コースによりデザートは異なります。

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▲デザートは「杏仁アイスと本日の飲茶」

「ホテル雅叙園東京」の中国料理【旬遊紀】は、アートに彩られた個室はもちろん、上質なホスピタリティを受けられるほか、長い歴史を感じながら、趣向を凝らした料理をいただける名店です。ランチやディナーの食事利用ももちろんですが、ぜひ一度宿泊をかねて満喫してみてくださいね。<text&photo:湯川カオル子 予約・問:ホテル雅叙園東京 https://www.hotelgajoen-tokyo.com/>

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