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世界を音楽で一つに!ジョン・バティステが語る国境のないワールド・ミュージック【独占インタビュー】

  • 2023.6.29

2021年度の第64回グラミー賞で5部門を受賞して同年の最多受賞アーティストとなったジョン・バティステが、待望のニューアルバム『ワールド・ミュージック・レディオ』を8月18日にリリースすることを発表。フロントロウ編集部ではジョンにインタビューを実施し、アルバムのタイトルに相応しく、NewJeansやリトル・ミックスのリー・アン・ピノック、ラナ・デル・レイ、リル・ウェインら世界各地から豪華アーティストたちもゲスト参加している同作についてや、グラミー賞を受賞したディズニー&ピクサーの『ソウルフル・ワールド』のサウンドトラックなどについて語ってもらった。(フロントロウ編集部)

ニューアルバム『ワールド・ミュージック・レディオ』リリースを発表

ジョン・バティステが、第64回グラミー賞で主要部門の1つである年間最優秀アルバム賞を受賞した『ウィー・アー』以来となるニューアルバム『ワールド・ミュージック・レディオ』を8月18日にリリースすることを発表。同作からのシングル「Calling Your Name」が併せて公開された。

画像: ニューアルバム『ワールド・ミュージック・レディオ』リリースを発表

フロントロウ編集部では、同作に収録される、K-POPグループのNewJeansやコロンビアのシンガーであるカミーロ、米イースト・アトランタ州出身のラッパーであるJ.I.D、イギリス出身のシンガーソングライターであるキャット・バーンズが参加した「Be Who You Are (Real Magic)」についてジョンにインタビューを行なったのだが、その際に『ワールド・ミュージック・レディオ』を全編聴かせてもらう機会があった。

来たるニューアルバムは、これまでにもジャンルレスに様々な音楽をミックスさせてきたジョンらしく、アルバムのタイトルにもなっているようにラジオ番組のような形式を用いながら、ジョンの言葉を借りれば「ワールド・ミュージックを用いながらポピュラーミュージックを拡張していく」という、壮大な内容になっている。

アルバムの参加者たちも豪華で、「Be Who You Are」に参加したアーティストたちに加えて、リル・ウェインやリトル・ミックスのリー・アン・ピノック、ラナ・デル・レイ、グラミー賞ノミネート経験のあるプロデューサーのジョン・べリオン、ナイジェリア発のポップスターであるファイヤーボーイDMLなど、世界中の多様なアーティストたちと見事な化学反応を起こしている。

今回のインタビューでは、ジョンにアルバムのコンセプトについて話してもらいながら、グラミー賞を獲得したディズニー&ピクサーの『ソウルフル・ワールド』のサウンドトラックなどについても訊いた。

ジョン・バティステにインタビュー!

ニューアルバム『ワールド・ミュージック・レディオ』のコンセプトについて教えてください。先立ってリリースされたシングル「Be Who You Are(Real Magic)」でNewJeansなど世界各地のアーティストとコラボレーションしたことが、アルバムの方向性を決めたのでしょうか?

「Be Who You Are」に取り掛かる前に既に何曲か完成させていました。なので、「Be Who You Are 」はアルバムのトーンを構成する1曲に過ぎません。コンセプトの土台になっている曲の1つという感じですね。

この作品はポピュラー・ミュージックについてのコンセプトアルバムで、ビリー・ボブ・ボバー(Billy Bob Bobber)という僕のオルターエゴ(別人格)が登場します。(ジャンル名として欧米以外の音楽を指すことが多い)ワールド・ミュージックを用いながらポピュラーミュージックを拡張していくというコンセプトをリスナーに紹介するための物語を創るというのが、このアルバムの目的でした。ワールド・ミュージックというのは、すべてを表現しているように見えながらも、何も表現していないとも言えると思っていて、僕としては、それは問題だと考えています。なぜなら、ここに含まれないものはすべて分離されてしまうからです。その他の世界の一員ではないということなんです。それって笑えますよね。だって、ワールド・ミュージックと呼ばれているのに、実際はエキゾチックで、他の世界の一員ではないのですから。僕はそれをひっくり返したかった。この物語の中では、ビリー・ボブ・ボバーが何千年もかけてそのことに取り組んでいます。天地創造の時から、彼は宇宙を股にかけて、音楽だけでなくあらゆるクリエイティブなものに対して取り組んでいるのです。

『ワールド・ミュージック・レディオ』というタイトルの通り、アルバムは通して聴くとラジオ番組のような作りになっています。

神秘的なインスピレーションを受けたことがきっかけでした。このアルバムでエグゼクティブ・プロデューサーを務めている僕と、コラボレーターのライアン・リンとで、リタ・パイエスとの楽曲「My Heart」について話をしていたときに、ライアンが「この曲をラジオだと仮定したらどうなるだろう?」ということを提案してくれたんです。「この曲を聴いているとまるでラジオを聴いているようだ」って。それで、僕も改めて聴いてみて、アルバムや、楽曲たちについて考え直してみることにしました。その後、自宅のベッドで眠っていたときに午前2時に目を覚まして、妻にこう言ったんです。「閃いたよ! ビジョンが見えたんだ。物語が降りてきた。ビリー・ボブ・ボバーが“ワールド・ミュージック・レディオ”をやっていて、電波塔を使って番組を放送しながら、歴史や時間、空間という広がりと繋がっているんだ」と。そういう物語が降りてきたんです。

画像: ジョン・バティステと妻で作家のスレイカ・ジャワード。
ジョン・バティステと妻で作家のスレイカ・ジャワード。

ラジオのような1曲ではなく、これは全体の物語であり、全体としてのビジョンだということが見えたのです。そうして僕はストーリー作りに取り掛かり始めて、ライアンやコラボレーターたちに送ったところ、「これはすごいな」ということをみんな言ってくれました。何日もかけて音楽に取り掛かり、点と点をどう結び付けようか考えていたのですが、一晩にしてこのアイディアが降りてきたのです。

シングル「Calling Your Name」について教えてください。何がこの楽曲のインスピレーションになったのでしょう?

(歌って聴かせてくれた後で)童謡のような楽曲ですよね? そう、子守唄のような。耳にした誰もが歌えて、覚えることができて、繋がりを持つことができるようなメロディーになっています。チームと一緒に最初に創りたいと思ったのがこのような曲でした。それから僕は、ハーモニカとピアノが合わさった鍵盤ハーモニカを使って、フックになる音を作りたいとも思いました。ポップソングにおいて鍵盤ハーモニカでフックを弾いている曲なんて聴いたことがないですよね? 一度も聴いたことがなかったからこそ、僕はそういうものを創りたいと思いました。世界にそれを存在させたかったのです。

画像: シングル「Calling Your Name」について教えてください。何がこの楽曲のインスピレーションになったのでしょう?

NewJeansらが参加した「Be Who You Are」を筆頭に、アルバムにはリル・ウェインやリトル・ミックスのリー・アン・ピノックなど多くのアーティストが参加しています。コラボレーターを決めるときにはどのようなところを重視していますか?

正真正銘の場所から楽曲に語りかけているようなアーティストがいいですね。楽曲に語りかけながら、その楽曲の最高を引き出してくれるようなアーティストです。僕が選んだアーティスト全員に共通しているのはそういう部分ですね。ところで、このアルバムでは、多くのアーティストが普段の彼らとは違う音楽に聴こえるかもしれない。例えば、リル・ウェインがこのアルバムではジャズのコードに乗せてギターを弾いているようにね。でも、僕にはそれが音としてイメージできて、僕ならアーティストからそういう部分を引き出すことができるって思えるんです。自分がコラボレーターとして誰かの曲に参加するときも同じです。“この人は僕の何を引き出してくれるのだろう?”って考えます。僕が望むのはそういうことです。なので、アーティストたちが正真正銘の形で楽曲に何をもたらしてくれるだろうという部分も考えますが、同時に、これまでの彼らとは違う彼らのどんな部分を自分なら紹介できるだろうということも考えていますね。

ちなみに「Running Away」でのリー・アンとのコラボはどのような経緯で実現したのでしょうか?

彼女の歌声を聴いたというのと、彼女が(リトル・ミックスとしての)グループ活動を休止してソロ活動に乗り出す経緯について読んだんです。それから電話で初めて彼女と話をしたときに、僕が人生で経験したことの多くを、違う形で彼女も経験していたということが分かって。それで、「Running Away」で一緒に歌うのが相応しいんじゃないかと思いました。この曲が最後に完成させた曲でした。アルバムを完成させるまでに取り組んだ最後の作業が、この曲だったんです。

画像: 2022年5月にリトル・ミックスとしての活動を休止後、2023年6月にリー・アン名義でソロデビューシングルとなる「Don't Say Love」をリリースしたリー・アン・ピノック。
2022年5月にリトル・ミックスとしての活動を休止後、2023年6月にリー・アン名義でソロデビューシングルとなる「Don't Say Love」をリリースしたリー・アン・ピノック。

グラミー賞で最優秀ミュージックビデオ賞を受賞した「Freedom」も、『ワールド・ミュージック・レディオ』やシングル「Be Who You Are (Real Magic)」で歌われるような、“自分らしさ”というメッセージが強調されている1曲だと思います。この楽曲やビデオに込めた思いと、このビデオがグラミー賞を受賞したことのご自身にとっての意義を振り返っていただけますか?

自分の出身地であるニュー・オーリンズのレプリゼンテーション(表象)を表現することが好きなんです。あのビデオには、アラン・ファーガソンやジェメル・マクウィリアムスという僕のチームのミュージシャンをはじめ、多くのミュージシャンたちにも出演してもらっていますが、僕らは全員で、“自由(freedom)”という表現に加えて、ニュー・オーリンズのレプリゼンテーションも表現しました。

一方で「Be Who You Are 」というのは、全員がありのままの自分を受け入れ、自分のなかにいるインナー・チャイルドを抱きしめることについての曲です。「Be Who You Are 」の最後のパートには、僕の7歳の甥っ子の声が収録されていますが、インナー・チャイルドとはピュアな方法で繋がっている必要があるのです。「Freedom」は僕にとっての自己表現であり、体を動かすことの自由を歌っていますが、「Be Who You Are 」は、“オーケー。僕は自分に満足できた。次はみんなに語りかけよう”という曲になっています。この2つの曲は、語りかけている視点という点で異なるものになっています。

画像: グラミー賞で最優秀ミュージックビデオ賞を受賞した「Freedom」も、『ワールド・ミュージック・レディオ』やシングル「Be Who You Are (Real Magic)」で歌われるような、“自分らしさ”というメッセージが強調されている1曲だと思います。この楽曲やビデオに込めた思いと、このビデオがグラミー賞を受賞したことのご自身にとっての意義を振り返っていただけますか?

アルバムについても同様です。『ウィー・アー』はジョン・バティステという僕自身の視点から伝えていますが、『ワールド・ミュージック・レディオ』はビリー・ボブ・ボバーや全世界、全宇宙の視点で、空間や時間を押し拡げながらそうした要素を一つにするというものになっています。

このときのグラミー賞ではディズニー&ピクサーの『ソウルフル・ワールド』のサウンドトラックでも受賞しました。振り返ってみて、この作品のサントラを手がけたことはご自身のキャリアにどのような影響を与えたと感じていますか?

ピクサーをトップに、素晴らしいテクノロジストやアニメーター、デザイナー、ライターが集結した特別なチームが、ジャズ・コミュニティとシネマ・コミュニティ、そして子どもたちのエンターテイメントに携わる人々のコミュニティを繋げてくれました。美しくてオープンなコラボレーションでしたし、僕は自分なりのやり方で取り組むことができました。おかげで、僕は最大級のステージで、ジャズの文脈を通した自分らしさを表現することができたのですが、それは通常、ジャズにおいては実現しないような機会でした。

あのような機会をいただいたおかげで、僕は大きなリスクを取って、典型的なスコアとは違う形で表現しました。(共にサウンドトラックを手がけた)トレント・レズナーやアティカス・ロスとの作業もそうです。僕らは共に独自のものを創り上げました。そしてそれは僕が常に望んでいることでもあります。僕は自分が何に取り組むにあたっても、境界線を拡げたいと思っていますし、易しい道は選びたくないと思っています。そういうわけで、あのような形でそれが報われたことを嬉しく思っています。

画像: ジョン・バティステとトレント・レズナー(中央)、アティカス・ロス(右)が手がけた『ソウルフル・ワールド』のサウンドトラックは第93回アカデミー賞で作曲賞も受賞した。
ジョン・バティステとトレント・レズナー(中央)、アティカス・ロス(右)が手がけた『ソウルフル・ワールド』のサウンドトラックは第93回アカデミー賞で作曲賞も受賞した。

グラミー賞の年間最優秀アルバム賞を受賞した『ウィー・アー』以来となるジョン・バティステのニューアルバム『ワールド・ミュージック・レディオ』は8月18日にリリースされる。

<リリース情報>
ジョン・バティステ
『ワールド・ミュージック・レディオ』
2023年8月18日(金)リリース
SHM-CD:UCCV-1197 2,860円(税込)

画像: このときのグラミー賞ではディズニー&ピクサーの『ソウルフル・ワールド』のサウンドトラックでも受賞しました。振り返ってみて、この作品のサントラを手がけたことはご自身のキャリアにどのような影響を与えたと感じていますか?

収録曲目:
1. ハロー、ビリー・ボブ
2. レインダンス (ft. ネイティブ・ソウル)
3. ビー・フー・ユー・アー (ft. J.I.D、NewJeans、カミーロ)
4. ワーシップ
5. マイ・ハート (ft. リタ・パイエス)
6. ドリンク・ウォーター (ft. ジョン・べリオン、ファイヤーボーイDML)
7. コーリング・ユア・ネーム
8. クレア・ドゥ・ルーン (ft. ケニー・G)
9. バタフライ
10. セブンティーンス・ワード・プレリュード
11. アンイージー (ft. リル・ウェイン)
12. コール・ナウ (ft. マイケル・バティステ)
13. シャソル
14. ブーム・フォー・リアル
15. ムーヴメント・エイティーン (ヒーローズ)
16. マスター・パワー
17. ランニング・アウェイ (ft. リー・アン)
18. グッバイ、ビリー・ボブ
19. ホワイト・スペース
20. ホエアエヴァ―・ユー・アー
21. ライフ・レッスン (ft. ラナ・デル・レイ)

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