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「この会社は化ける」四季報の達人が"10倍株"を見つけるために株主総会の質疑で注目する社長の言動

  • 2023.6.29
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株を保有している人でも株主総会に参加したことのある人は少ないだろう。渡部清二さんは「株主総会に参加することで投資がもっと楽しくなりますし、テンバガー(10倍株)も見つけやすくなります」という――。

※本稿は、渡部清二、複眼経済塾『株主総会を楽しみ、日本株ブームに乗る方法』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。

会議室
※写真はイメージです
株主総会は新規上場会社のデビュー戦に行くのが面白い

株式投資は、株主総会に参加することで10倍楽しめます。私が参加するのは、時価総額500億円以下の中小型株の会社が中心で、会社が上場して最初に行う株主総会のデビュー戦には積極的に参加しています。

上場したばかりの会社ならどこでもやる気に満ち溢れているかというと、そうとは限りません。だからこそデビュー戦に行くことが大事で、デビュー戦で本人に会って話を聞けば必ずわかります。

とくに社長の思いが純粋かどうか、話が整理されてわかりやすいかといったことは、ライブで聞かないとわかりません。その意味で少し残念に思うのが、近年、事業報告を社長が行わない会社が増えていることです。

「事業報告については音声にてお伝えします」などと言って、スライドを使って事前に録音した女性の音声だけを流す。こうした演出を、私はまったく評価しません。実際、ある株主総会で社長に言ったことがあります。

「今日せっかく株主総会に来たのに、社長は杓子定規なことしか言わず、自分の言葉で説明しない。我々としてはライブ会場に来たのに、いきなり録音されたテープを聞かされたわけです。しかも本人の声じゃない。これって印象悪いですよね」。

このような演出になったのは、おそらく株主総会の本当の意味をわかっていないIRコンサルのアドバイスに従ったからでしょう。「間違ってはいけない」といった観点から、録音テープを使うことにしたのだと思います。

事業に対する社長の熱意がわかる質問とは

しかし株主としては、やはり社長が直接話す言葉を聞きたい気持ちがあります。とくに初めての総会なら自分の声で伝えるべきで、実際そうしている会社もたくさんあります。逆に言えば録音テープを使う会社は、「その程度の熱量」と判断することにもなるわけです。

またデビュー戦で社長が必ずしも思いを語るとは限りません。体感的には半分から3分の1程度で、こちらから質問をぶつけることも大事になります。

アパレル会社のTOKYO BASE(東京ベース)では「御社の関わっているマーケットは、将来どれぐらいの規模が見込めますか。そのとき御社の位置づけは、どのぐらいになりますか」と質問しました。あるいは「役員の方々は、どのような思いでそれに取り組んでいるのですか」などと聞くこともあります。

こうした話は、上場したばかりの社長なら本来、一番話したいことです。だから水を向ければ、どんどん話してくれます。ここから、その事業に対する熱意がわかるのです。

これが社歴の長い会社なら、社歴のある会社ほど、「わざわざ言わなくても知っていますよね」となります。そもそも株主総会では、ふつう社長から経営理念やビジョンを語ることはありません。招集通知にも、そうした議題や議案は書かれていません。

だからこそデビュー戦は楽しく、また質問の考えどころでもあるのです。

株価が低迷している企業に「経営努力」について聞いてみると

デビュー戦や社歴の浅い会社の株主総会でも、社長の発言にがっかりするケースはあります。なかでも強烈だったのが、ネットオークションを展開する会社の株主総会に出席したときです。

会社四季報を見る限り、業績はすごく伸びているのですが、株価がいっこうに上がりません。理由を探ろうと、株主総会に参加することにしたのです。

社長は某国立トップ大学出身で、非常に優秀な方です。問題は質疑応答の時間に、誰かが株価の話に言及したときです。

株主総会で株価について株主が質問するのは、私は基本的にマナー違反だと思っています。業績は経営努力の結果であり、経営者の責任ですから、株主として社長に質問するのは問題ありません。

ところが株価はマーケットが決めるものです。会社が決めるのではなく、それについて文句を言うのは筋違いです。どうしても尋ねたいとしても、言い方があります。

最初に「業績は経営の結果、株価はマーケットが決めるものだということはよく理解しています」などとひと言断ったうえで、「とはいえ、株価で低迷しているのは事実です。それに対して改善するための経営努力は何かしていますか」などと尋ねるなら、わきまえた発言になります。

「株価が低迷して一番痛いのは私」と答えた社長

このような質問に対し、「IRを一生懸命やっています」「業績を上げていきます」などと答えるなら、とくに問題はありません。ところがこの株主総会では、社長の発言にも問題がありました。

「お気持ちはわかりますが、弊社の大株主は私です。株価が低迷して一番痛いのは、私なんです」。そんな回答をしたのです。

プレゼン
※写真はイメージです

こんなことを言われては、個人株主としては返す言葉がありません。相手は過半数以上持っている大株主で、自分は100株しか持っていない雑魚となります。これでは「株主をやっていても無駄」となり、その会社に対する熱が冷めてしまいます。

これも一事が万事で、社長がそういう感覚でいる限り、株価が低迷しても対策を取ろうとはならないでしょう。こういうのは空気でわかります。

この社長は経営者として空気が読めず、同じことを社員にもやっている可能性があります。さらには顧客にもやっている可能性があるわけです。株価低迷の理由も、理解できる気がしました。

株価が上がりやすいオーナー企業の社長の発想とは

この社長のように中小型株の会社の社長は、自らが自社の株式を大量に保有しながら、社長として経営に携わる「オーナー企業」というケースが少なくありません。「オーナー企業」は、創業者もしくはその一族が経営の実権を握っている企業を指しますが、オーナー企業の強みは、①会社の所有(株主)と、②会社の経営(経営者)の両方で影響力を発揮できることにあります。

たとえばソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、全株式の4分の1程度を保有していますのでオーナー社長であり、同社はオーナー企業ともいえます。

オーナー社長ゆえのメリットは、最大株主だからこそ、「自分の力で大きくできる」という自負を持っている人も多いでしょう。大胆な判断や素早い転換ができるのも、オーナー社長ならではの強みです。

孫氏の場合、「時価総額を拡大して資金調達し、さらに事業を拡大する」といったビジネスモデルを早い段階から意識していたように思います。銀行からの借り入れと違い、株で調達した資金は返済する必要がありません。それをいかに多く集めるか考えたとき、当然、時価総額を大きくしたほうがいいという発想になります。

この発想を持っているオーナー社長の会社の株は、上がりやすい傾向にあります。直接金融をうまく活用し、株で資金調達をしながら成長していこうと考えるからです。

最近の新規上場企業には上場をゴールと考えている社長も多い

ところが最近は、上場することをゴールと考える人も増えています。株式公開して100億円ぐらいの時価総額になれば、株を売ってそれで終わりにするといった人たちです。株主総会を欠席する社長が、その典型です。できるだけ早く逃げたいと考えていて、実際、欠席した株主総会のあとすぐに辞任し、別の人が社長になった企業もあります。

おそらく彼は持っていた株のかなりを売却したのでしょう。彼の退任に伴い、会社の株価は大きく下がりました。彼としては自分の懐にはお金が入ったから、それでいいわけです。

その意味では株価についての質問は、株式市場を活用し会社を大きくしたいのか、もしくは単に個人としてお金が欲しかっただけなのかを知ることにもなるのです。もちろんこの会社の場合、株主総会のあと、私はすぐに株を売却しました。

「この会社は化ける」と確信した、元キーエンス社長のひと言

株主総会での発言が重要なのは社長だけではありません。たとえばソフトウェアテスト会社のSHIFT(シフト)の株主総会では、こんなことがありました。

ソフトウェア開発では、必ずバグが生じます。ソフトウェア開発において、バグをなくすためのテストは不可欠な作業ですが、これにかかる時間やコストは膨大なものです。

従来この作業はアウトソーシングできず、みな社内でやるしかありませんでした。そこへバグを調べる作業を行う会社として、初めて立ち上げたのがシフトです。

この会社も1回目の株主総会から参加しましたが、このときは成長性に少し疑問を感じました。とはいえマーケットは膨大なので、そのまま持ち続けることにして、2回目の株主総会にも参加しました。

この時の株主総会は、社外取締役3名を選任する決議が行われた年で、この中の1人にキーマンがいたのです。2000年からキーエンスの社長を務めた佐々木道夫氏です。佐々木氏の挨拶を聞いて、私は「この会社は化ける」と確信しました。

約20年で株価は20倍、時価総額は150倍に

ご存じの方も多いでしょうが、キーエンスはFAセンサーをはじめとする検出・計測制御機器メーカーで、営業利益率50%という驚異的な数字を誇ります。社員の平均年収が2182万円(22年3月)で、日本の製造業の上場企業で最も年収が高い会社としても知られます。

株価も、20年ほどで20倍になりました。上場した1987年時点で1000億円だった時価総額は最大時で約15兆円になり、150倍ぐらいに成長したことになります。なかでも急拡大する時期に、立役者となったのが佐々木氏です。

新役員として挨拶した佐々木氏の発言で、とくに成長を確信したのが最後のセリフです。

「私はキーエンスが急拡大する時期に社長を務めていました。当時キーエンスは伸びると思っていましたが、同じ感覚をこのシフトに感じています」。つまり佐々木氏はシフトをキーエンスに例えたのです。

キーエンスは、我々の世界では超優良企業です。キーエンスがそこまでの会社にした佐々木氏なら絶対にやってくれると思ったのです。

役員が誰も株を持っていない会社の株主総会で見えたこと

一方で役員の態度から、その会社に失望するケースもありました。IT部品が祖業で様々な事業を展開してきたR社の株主総会に参加したときです。

この会社はある意味、投資ファンドが支配する格好になっていて、何をしているのか不透明な会社になっていました。実態を知ろうと株主総会に行ったところ、動画を使って「こんな会社になります」と伝える大々的なプレゼンが行われました。

そのプレゼンを見る限り、確かにワクワクするのです。「この会社、とんでもなく成長するんじゃないか?」と、そんな期待を感じさせます。

ところが招集通知に書かれた株主の名前を見ると、役員の名前が1人も載っていません。役員が投資ファンド会社から来ていることがあるとしても、やはり違和感があります。疑念が湧いたので、こんな質問をしました。

「先ほど動画を見せてもらい、将来的に非常に期待が持てそうでワクワクしました。ところが招集通知を見ると、それを実現する役員の持ち株がゼロになっています。これはどういうことですか?」

すると全員が答えに窮し、オロオロしながら「いま弊社に赴任したばかりなので、まだ自社の株を買っていませんが、これから買います」などと言いました。おそらく本心は、会社の内情をよくわかっているから買わないのです。

動画にしても、実際にはやっていない事業を、さもやっているかのように説明しているかもしれません。要は、株主の目をそらすための動画です。

株主総会の議事録に残らないやりとりにこそ価値がある

こうしたことは質問して初めて気づいたことで、株主総会では社長のみならず役員の言動も、その会社を知るうえで重要なことを物語っています。

こうしたやりとりは、おそらく議事録には残りません。先のシフトの佐々木氏の最後のセリフもそうで、このような感想めいたセリフは、総じて議事録には残りません。

渡部清二、複眼経済塾『株主総会を楽しみ、日本株ブームに乗る方法』(ビジネス社)
渡部清二、複眼経済塾『株主総会を楽しみ、日本株ブームに乗る方法』(ビジネス社)

そもそも株主総会では、議事録の作成が義務づけられていても、公開する義務はありません。つまり株主であっても、見る権利はないのです。会社によっては動画を残すところもありますが、極めて稀なケースです。しかも議事録同様、まず見ることはできません。

株主総会でのやりとりを逐一知ろうと思ったら、実際に参加するしかないのです。よく「ヤフー掲示板」で「今日の株主総会で何を話していた?」などとやりとりしている人を見かけますが、私に言わせれば気になるなら自分で行けばいいのです。

行って初めて佐々木氏のような発言を聞くこともできれば、役員らの無責任体質に触れることもでき、投資するうえで大きな判断材料にできるのです。

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